王様! リリィちゃんですよ!
「とりあえず……ストーンマリオンたちとストーンガーゴイルたちは、ウォルグの死体を迷宮に運んでくれ。
……それで、リリィ……さん?」
「…………何?」
迷宮パワーのために、ウォルグの死体を迷宮内に運んでもらう。
防人たちが、よいしょ……よいしょ……と運んで行くのを眺めながら、リリィさんにどうするかを聞こうとしたが……少し不機嫌そうだ。表情は変わっていないため、雰囲気からの判断だが……。
しかし、同じく表情では判断出来ないマオたちで鍛えられ、雰囲気から読み取ることに慣れた僕には、リリィさんが不機嫌……いや、拗ねているのがしっかりと分かってしまう。……呼び捨てじゃないからか?
「一応聞きたいのですが……僕たちの暮らしている迷宮の場所は知っています……よね?」
「……知ってる……昨日帰るところ……見てた」
…………完全にバレているようだ。
さりげなく、迷宮を貴女が知っているのを知っているぞ! と、鎌を掛けて見たが……リリィさんの表情に変化は無い……が、雰囲気はびっくりしているように感じる。
表情と雰囲気が一致していない……ちぐはぐな感じがする……と言うよりも、マオのような感じだろうか? 見た目では分かり難いが、雰囲気では凄く分かりやすい。
「お、お兄さん! ……ウォルグはこのお姉さんが倒してくれたんですよね?」
「ん? あ、あぁ……そうらしい」
ウォルグの死体が運ばれたため、落ち着いたのだろう……僕の後ろに隠れていたシーナがリリィさんを見ながら、僕に聞いてくる……。
「あ、あの……お姉さん! 危ないところを助けていただいて、ありがとうございました!」
「あっ!! ……あの、遅くなりましたが、助けていただいて、ありがとうございました」
そうだった……混乱していたとは言え助けてもらったのだから、お礼を言わなければ失礼だろう。慌ててシーナに倣ってお礼を告げる。
「!!?
べ……別に……良い。危なかったり、困っていたら……助けるのは当然」
口では何でも無いように言っているが、彼女の雰囲気は嬉しいと言う感情を溢れさせ、更に、不変だった表情も、少しだけ嬉しそうにはにかんでいるように見える。
……感謝されるのに慣れていないのだろうか?
「それでも、リリィさんのおかげで僕たちは助かったわけですし……何かお礼が出来たら良いのですが……」
「お礼? ……なら……」
お礼と言う言葉に反応して、喜色を含んだ雰囲気で、リリィさんは何かを伝えようとする……。
くぅ!
「!!!」
「えっ?」
「うん?」
「……?」
リリィさんの言葉を遮るように、小さな……小動物の鳴き声のような音が聞こえた。
何だ? と思ったが、目の前の白いドレスの少女が答えを教えるかのように、顔を薄桃色に染めていったため、直ぐに理解する。
「あの……もうそろそろ昼になりそうですので、宜しければご一緒に昼食でもどうでしょうか?」
「…………お願い……する」
「では、迷宮に向かいましょう……シーナ、昼食は頑張ってくれ」
「ま、任せて下さい! このシーナ! う、腕によりを掛けて料理を作りますよ!」
……お腹を空かせていたらしい白いドレスの少女を連れて、迷宮への帰路を進んだ。
だが……シーナ? フォローが思いつかなかったからとは言え……慌て過ぎだと思うぞ?
〔お帰りなさいですよー! って……王様〕
「ただいま……何だ?」
〔幾ら何でも……攫って来るのは……迷宮はいけないと思うんですよ?〕
「……迷宮の中の僕は、一体どういう奴になってるんだ?」
〔冗談ですよー! 半分は……ですけど〕
「……? 誰かいるの? ……独り言?」
迷宮と話す僕を見て、リリィさんは不思議そうに聞いてくる。
迷宮で暮らす僕たちにしてみたら、当たり前のことだが……やはり知らない人から見ると、突然独り言を話し出したようにしか見えないんだろう。
正直に言っても良いんだろうけど……。
「いえ……何でも有りませんよ。
マオとシーナはリリィさんを連れて、先に寝室に行って料理をしていてくれ」
「……?」
「はい、分かりました……けど、お兄さんは?」
「僕はウォルグの死体を……ちょっとね?」
「はい……? じゃあ、先に寝室に戻って料理していますね?
それじゃあ……マオちゃんとリリィお姉さん、行きましょう?」
「……」
「分かった……あと……リリィで良い」
迷宮の奥に進んで行くマオたちを眺め……表示してもらった地図でマオたちが、2階層に降りて行ったのを確認する。
〔それで……王様? どうしました?〕
「先ずはこのウォルグの情報を表示してくれ……たぶん、普通のウォルグとは違うんだろう?」
〔はい!
では、情報を表示します!
ウォルグガラフ
戦術評価 30
魔術評価 12
技術評価 54
思考評価 26
以上です!〕
「ウォルグ……ガラフ?」
〔ガラフとは、上位進化種を意味しています。
基本種からある程度成長した場合、このような言葉が付与されます〕
「ゴブリンたちのジェネラルとかとは、別物なのか?」
〔迷宮も詳しくは分かりませんが……一部の種は進化の種類が多いので、その分、付与される名も多いのではないでしょうか?
ウォルグは進化すると、ウォルグガラフにしかなりませんが、ゴブリンは戦術評価に秀でるとウォリアー、魔術評価ならマージ、思考評価ならジェネラル……とかに分かれるのではないかと思います〕
「なるほど……なら、基本はガラフが付与されると思えば良いんだな?」
〔はい!〕
「なら、もう良いな……ウォルグガラフの死体を頼む」
〔分かりました!〕
……ウォルグガラフの死体が迷宮の地面に埋まっていき……迷宮パワーが60増えた。多いとは思うが、迷宮内以外では戦いたくは無いな……あんな速さを見せられたらなぁ。
良し……次だな。
「迷宮……あの白いドレスの少女の情報を表示してくれ」
〔はい? えっと……リリィさんでしたっけ?〕
「あぁ……」
〔分かりました! ……どうでも良いことかも知れませんけど、リリィさんぐらいなら少女では無く女性では?〕
「うん? そうか?
リリィさんはシーナと同じぐらいの年齢だと思うが……?」
〔そうなんですか!?
……長身で大人びてそうでしたよ?〕
「雰囲気が幼い気がしたんだけどな。
とりあえず表示を頼む」
〔王様がそう言うのでしたら、リリィさんはリリィちゃんですね!
では、情報を表示しますよ!
リリィ
アル・ワルキューレ
純潔
戦術評価 68+42
魔術評価 102+10
技術評価 124+20
思考評価 92
以上……です〕
「気になる表示が有るが……とりあえず、迷宮……正直に言ってくれないか?迷宮内で防人全員と一緒になって、彼女と戦ったら……勝てるか?」
〔正直に言いますよ?
『絶対』に無理です……〕
「だよな……」
「では、お兄さんが戻って来る前に、シーナスペシャルを完成させますよ!」
「……!」
「……スペシャル?」
さあ! 私の数少ない見せ場です! 頑張りますよー!
あっ……でも……。
「リリィさんは、何か食べられない物とか有りますか?」
お客さんであるリリィさんが食べられなかったら、ダメダメですからね。
「大丈夫……特に……無い。
あと……リリィで良い」
「じゃあ問題無く調理出来ますね! ……私よりもリリィさんは年が上ですから、流石に言い難いです」
ちょっと失礼かも知れませんけど、食材を取りながらのため、背中を向けて話します。
「……? ……私は……だけど……?」
「そうなんですか~? 私と二歳しか違わないじゃないですか~! もう少し離れていると思っていましたよ。
じゃあ、リリィさんと言わせていただきますね……って二歳しか差が無い?」
聞き捨てならないことを聞いた気がします……。
私と二歳しか違わない?
「呼び捨てでも……良いのに……」
衝撃の事実に思わず振り向いてしまいます。その時、食材を落としてしまいますが気にしません……いえ、気にする余裕が有りません。
今の私は、リリィさんのある一点を凝視してしまうだけです……たわわに実った二つの果実を……。
二歳しか違わないのに……どうしてこんなに差が? 神様……理不尽です……神様? そうかギフト何ですね、きっと!
バストトリップとか、バストアドベンチャーとか……そんなギフトは知りませんけど……。
「!!?
大丈夫……?」
うぅ……果実が揺れてます……。
迷宮情報 21日目
迷宮評価 9
迷宮パワー 643 毎日+14
迷宮コスト 39+2
迷宮階層 全3階
迷宮部屋数 全10部屋
住人一覧
シーナ シビリアン
防人一覧
マオ ストーンマリオン
ウッドマリオン 20体
ストーンマリオン 5体
ブロンズマリオン 5体
ストーンゴーレム 2体
ストーンガーゴイル 2体
ブロンズガーゴイル 1体
罠一覧
簡易射槍壁 12個
施設一覧
畑 規模(小) 2反
人物一覧
リリィ アル・ワルキューレ




