王様! 迷宮は家、住人は家族ですよ!
〔おはようございますですよー!
今日も頑張って行きましょうー!〕
「……♪」
「おはよう迷宮、マオもおはよう。
シーナは……眠らせておこう」
すぅすぅと小さな寝息を立てるシーナに、掛け布をしっかりと掛けてやり、鍋箱―――調理に使った宝箱、命名シーナ―――に水を入れるため畑に向かう。
鍋箱を運ぶ僕の後ろを、ちょこちょことマオも付いて来る……。
「畑を見るのか?」
「…………」
畑部屋への扉を開けてくれるマオに聞いてみるが、コクコクと頷くマオを見て、聞くまでも無いことだったなと思う。
何故かは相変わらず謎だが、マオは畑が大好きみたいだ。基本は僕を守るために、僕の傍をちょこちょこと動き回っているが、僕が寝室などで食料や素材を整理したり、のんびりと過ごしている時は畑部屋に向かう。
何度か畑部屋を覗いて見たが、苗の前で膝を抱えて座り込み、じいっと苗を見ていたり、苗に向かって踊っていたりしていた。
マオの雰囲気も楽しそうだから気にしない。
尤も、楽しそうと言うよりは、やり遂げた! と言う感じだが。
良く分からないけど頑張れ……。
その後、起きてきたシーナと一緒に―――むしろ教わりながら―――朝食を作り、昼までゆっくりと過ごす。
侵入者もやって来ないまま昼になり、昼食を食べてから水浴びに向かう。
「シーナ、本当に大丈夫なのか? 無理はしなくて良いんだぞ?」
「大丈夫です!
お兄さんもマオちゃんも、防人さんたちもいますから」
一昨日、シーナは外の川で襲われそうになったため、シーナが安心して水浴び出来るようにと水路を作成しようと思ったが、シーナ本人が勿体無いですと言い、お兄さんとマオちゃんに防人さんたちも一緒なら大丈夫です! と笑顔で返してきたため、外に水浴びに向かうことになった。
だが……やはり心配で外に向かう間、何度も聞いてしまう。
「確かに怖いですよ?
でも、家族が一緒にいてくれるんですから、怖いと思うよりも安心の方がずっと強いんですよ」
笑顔でそんなことを言われてしまったら、もう何も言えないだろう……。
結局、ブロンズガーゴイルとストーンガーゴイル、ブロンズマリオンを連れて水浴びに行くのだった。
〔今日はまったりな日でしたね」
「そうだなぁ……正直、こんな日が毎日でも良いんだが、迷宮コスト分はやはり魔物に来て欲しいな」
夕食も食べ終わり、各自のんびりとしている。
魔物は来て欲しく無いが、来ないと来ないで迷宮パワーが減っていく。
迷宮パワーの安定供給には、迷宮評価が上がれば良いんだが……3階層以降が作成可能になってくれないと、迷宮変化は余り……ほぼ出来ない。
迷宮変化で迷宮評価が上げられないとなると、侵入者しか無いが……長くなりそうだなぁ。
「お兄さん」
「うん? どうした?」
「ふと思ったのですが、フルトホルンの街などからの冒険者や盗賊に、お兄さんの迷宮は発見されていないんですか?」
「うん? ……あぁ、それならまだまだ大丈夫じゃないかな?」
「???
理由を教えていただいても良いですか?」
「迷宮が在るこの場所自体が、この山の中でも分かり難い場所何だよ。
確かにフルトホルンの街へは十二キロトぐらいだけど、獣道とかの道無き道を通った場合の最短距離で、僕はその道無き道を通ってフルトホルンの街へ行き来していたから十二キロトぐらいと言えるんだ」
この山にも山道が有るが、獣道よりも多少見映えのする程度である。
その上、その山道はフルトホルンの街とオルガーンと言う名の町を繋ぐ道で有るため、迷宮とはかなり離れている。
広大な山の奥に在る小さな迷宮に来るような酔狂な人間はいないだろう。
迷宮評価が上がって強力な魔物が多くなり、騒がしくなってしまえば分からないが……。
「そうなんですか……じゃあ戦わないで良さそうですね」
「……シーナは人が来てしまっても戦ったり……いや、殺したりしない方が良いと思う?」
「…………私は戦いの場に出ても防人さんたちの邪魔にしかならないので、戦いに参加は出来ないでしょうし、人を殺したいとも思いません」
「…………」
「でも、もしも戦う力が有って、冒険者や盗賊が来たら……きっと……殺すと思います」
「……どうして?」
「どんな理由で有れ、迷宮に……私たち家族の家に侵入して来たんです。
家族を守るために倒します。
もちろん、一番良いのはそんな侵入者がいないことですけどね」
……良かった、シーナは僕と同じ考えだった。
侵入者にどんな理由が有れ、迷宮にやって来た時点で倒すべき敵でしかない。
考えてみれば当然だが、冒険者や盗賊は迷宮探索として、迷宮内に潜む敵たちを倒し、お宝を手に入れているだけ何だろう……。
だが、迷宮に住むこちら側から考えると、突然、自分たちの家に刃物を持った強盗が侵入し、家財を物色していき家を守ろうとする家族に害をなしていくわけだ。
家を……家族を守るために、侵入者は人であれ魔物であれ、敵意を持ってやって来るなら倒さなければならない。
迷宮を家と、僕や防人を家族と考えてくれているシーナに、感謝を込めて抱きしめて頭を撫でる。
「お兄さん……?」
「シーナ、ありがとう」
「お礼を言われる理由が分かりませんよ?」
そう言っているシーナの顔は、ニコニコと笑っていた。
〔おはようございますー!
朝ですよー! もーにんぐですよー!〕
今日も今日とて迷宮の元気過ぎる声に起こされる。
ちょこちょこと畑部屋に向かって行くマオと、ベッドで頭をゆらゆらと揺らしているシーナを横目に、朝食の支度をする。
今日も一日頑張ろう!
「では、お兄さん。
私はワタタン草を加工して布を作りますね」
「あぁ、無理をしないようにな」
「はい!」
シーナはワタタン草の加工のために畑部屋の水路の近くで作業をするらしい。
水を掛けながら木材などで叩きながら伸ばしていくらしい。畑部屋の隅でちゃぷちゃぷ、ぺちぺちと音がし始める。
僕はどうしようか……?
採取にでも行こうかな? と思いマオを呼ぼうとしたが、畑をじいっと見つめるマオが目に入った。
マオの熱心な姿に、たまには僕も畑を見るかと思い、マオの傍に座る……。
そこで、とある物を見つけてしまった……。
それが激しい戦いの幕開けになるとは思わなかった。
「うわぁ……こりゃひでぇな……」
「気持ち悪いぜ……」
山の中、二人の男が馬車の前にいた。
だが、その馬車と馬車の周りはどす黒い色に染まっており、その黒い世界の中に食い散らかされ、原形を留めていない死体が転がっている。
「ウォルグもすげぇ喰い方をするもんだな……」
「お、おい! イヤッツ!」
「どうしたぁ? イラネー?」
「ウォ、ウォルグの死体も有るぞ? それにあれ……盛り上がってるやつ、土饅頭だよな……?」
イヤッツと呼ばれた男が、イラネーと呼ばれた男の指差す方を見る。
そこには喰われたために原形を維持出来ていないが、確かにウォルグと思われる死体と、その傍には土饅頭―――土を被せて饅頭のようにこんもりと丸みの有る墓―――が幾つか作られていた。
「…………掘ってみるか?」
「お、おう!」
イラネーとイヤッツが落ちている棒切れで、土饅頭を掘り返す……。
掘り返された土饅頭の中には、ゴブリンの死体が埋められていた。
「!!?
お、おい! 埋められたゴブリンってことは……」
「ゴブリンキングが来た……?」
本来、魔物たちは仲間が死んでも放置するのがほとんどである。ゴブリンたちも死んだ仲間は捨て置く。
しかし、この山に住むゴブリンキングは特異な存在で有るらしく、この山の中でゴブリンたちの死体は大抵、今のように土に埋められている。
故に噂では、この山のゴブリンキングは特殊なギフトを持っているのでは? とまで言われている。
「や、やばいぜ! とっとと帰るぞ!」
「おう……馬車の積み荷は動くのに邪魔にならないぐらいだけ持って帰ろうぜ!」
「あぁ! 後の積み荷はヤラレーの頭に報告してから、頭に聞くとするぞ」
「分かった! なら、とっとと帰ろうぜ!」
二人の男は手早く馬車の積み荷を選別し、嵩張らない物だけを持って、逃げるように山道を走って行った。
迷宮情報 13日目
迷宮評価 8
迷宮パワー 702 毎日+13
迷宮コスト 33+2
迷宮階層 全3階
迷宮部屋数 全10部屋
住人一覧
シーナ シビリアン
防人一覧
マオ ストーンマリオン
ウッドマリオン 20体
ストーンマリオン 5体
ブロンズマリオン 4体
ストーンガーゴイル 2体
ブロンズガーゴイル 1体
罠一覧
簡易射槍壁 12個
施設一覧
畑 規模(小) 2反
人物一覧
無し




