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王様! シーナちゃんも家族ですよ!

「…………さん……」


……耳元でボソボソと微かな声が聞こえ、微熱を孕んだ小さな息遣いを感じ、ぼんやりと意識が戻される。


「……お兄さん……」


「うぅ……ん……シーナ? 大丈夫……か?」


「はい……私は大丈夫です……。

ですが、ブロンズマリオンさんが……私を庇って……」


「ブロンズマリオンが……?」


倒されてしまっていた1体のこと……か?


「水浴びの最中に、ウォルグたちが現れたんです! 私は、近付いて来るウォルグたちを見て……馬車を襲われた時の光景を思い出して……怖くて身体が動かなくなって、逃げることも出来なくて震えていたんです。

そんな私を、ブロンズマリオンさんが川から引っ張り出してくれたんです……でも直ぐ近くまでウォルグたちが来ていて……川から出してくれたブロンズマリオンさんは、他のブロンズマリオンさんに私を任せて……自分を囮にするようにウォルグたちに単身向かって行かれて……」


「…………」


「ごめんなさい……私の所為でお兄さんの大切な家族を……ごめんなさい……」


……マリオンたちはマイムマイムが無ければ、攻撃を最優先してしまう。

もしかしたら、ウォルグとの距離から最初はシーナを守る命令を優先して行動していたが、距離が縮まってしまった途中からは攻撃に移っただけかも知れない……。

だが、そんなことじゃなく……ブロンズマリオンはシーナを守ろうとしたんだろう……。

防人たちには心は無いかも知れない……。


「……シーナ?

ブロンズマリオンはシーナを守れて嬉しいと思うよ?」


それでも……。


「短くても、同じ場所で過ごした……仲間を守れたんだ」


仲間をどうとも思っていない何て……思えない!


「もしかしたら家族と思っていたかも知れない」


「家族……? でも、私はまだここに来て……」


「時間は関係有るかい?

同じ場所で住む者なのに?」


「!! ……孤児院では、同じ家で住む者たちは皆家族だ……と院長がおっしゃられていました。

孤児院に新しい子が来る度に、家族が増えたと皆喜んでいました……」


「なら、仲間を……家族を守るのは当たり前」


「はい……」


「だから……ごめんなさいじゃなくて……誇らしい家族に言う言葉は……?」


「…………!!

ごめんなさいじゃないですね……『ありがとう』です!」


「あぁ……誰だって、頑張ったことに謝れるよりも、礼を言われた方がずっと良い」


「はい!

ブロンズマリオンさん……ありがとう……ございます!」


「僕からもありがとう……。

シーナを……大切な家族を守ってくれて」


「……私はお兄さんにとっても家族……何ですよね?」


「あれっ?

お兄さん何て呼んでいるのに、今更そんなことを言うのか?

それとも、家族だとは僕が一人で思ってただけだったのかな?

悲しいねぇ……」


「ふふっ……そうですねぇ。

一緒のベッドで抱かれながら眠っていますし、……キ、キ、キシュも奪われてしまいましたし……ね?」


「……顔を真っ赤にして噛み噛みになるぐらい恥ずかしいんなら、言わなければ良いんじゃないか……?」


「むぅ…………お兄さんは平然としてますね」


「可愛い家族が僕の分まで恥ずかしがっているからな。

ほらっ……もう寝るぞ。

また朝にな?」


「……うぅ~……ふぁ……。

は~い……お兄さん……お休みなさい……」


「あぁ、お休み」

再びマオとシーナを抱きしめて眠りに就く……。

また一人、大切な家族が増えた時だった。







〔おはようですよー!

今日も元気に! れっつはっぴーらいふ!

迷宮のすまいるは、一回迷宮パワー10ですよ!〕


「……ぼったくりだなぁ」


〔きっと適正価格ですよ!

王様! おはようございます!〕


「おはよう……眠い……」


〔……!!!

寝たら死ぬぞ! でいくべきなのか、寝る子は良く育つ! でいくべきか……悩みどころですよー!!〕


「……少なくとも、僕に聞こえた時点で駄目何じゃないか?」


〔何……だと? ……です〕


「…………」


〔…………〕


「今日も元気そうだから良いか……」


〔み、見捨てられましたー!?〕


もはやお約束な迷宮の挨拶を流し、マオとシーナにも挨拶をする。


「……♪」


マオもいつも通り……。


「お兄しゃん……おはにょうごにゃ……まふ」


……シーナはやっぱり朝に弱いみたいだ。


皆起きてから、マオは畑を見に行き、シーナはベッドの上で頭をゆらゆらさせながらぼんやりとし、僕は朝食の支度をする。


〔結局、鍋の代用品に出来そうなのは思い出せました?〕


「……出てこなかった」


〔何なんでしょうね〕


鍋代わり……今の僕でも手に入りそうな物……。

木材? 石材? 素材……ウォルグの牙、リッパーコルトの甲殻、尾針……針は明らかに可笑しいだろう……うん!?

針……リッパーコルトの毒針、簡易毒針……宝箱に仕込……む!!?


「宝箱だ!!」


〔何です!? 何です!?〕


「うにゃぁ!?」


「……!?」


僕のいきなりの大声に、迷宮はびっくりし、シーナは眠気が吹き飛び、マオはすわっ? 敵襲かぁ!? と畑部屋から飛び出して来た!


……ごめん。




その後、マオとシーナと一緒に石材を使ってかまどを作り、ガーゴイルに頼んで木材に火を点け、石製の宝箱を作成する。必要迷宮パワーは1だった。


「宝箱を鍋代わり……前代未聞だろうなぁ」


目の前のかまどの上、ぐつぐつと音を立てる石製の宝箱……自分でやっておきながら何だけど……違和感有り過ぎるだろう。


〔流石王様! 新しきを開拓していく男の中の男! 惚れ直しましたよー!〕


「……♪」


「~♪ ~♪」


まあ……皆喜んでいるみたいだから良いか!

シーナが鼻歌を歌いながら宝箱の中を、木材を加工した手作りの―――形がやや歪んでいる―――杓子で掻き混ぜている。

その間に、これもまた木材を加工して作った、歪んだ器を二つ用意する。


「キノコと野草と木の実の煮込みスープ、シーナスペシャル山の幸スープの出来上がりです~♪」


〔うほっ! 良いスープ!〕


「飲・ま・な・い・か? ……何を言わせるか!」


〔つい、やってしまいました〕


「お兄さんどうしました?

温かい内にどうぞ?」

「そうだな……いただきます!」


「ドキドキ!」


ほかほかと湯気を立てるスープから送られて来る良い匂いは、食欲に刺激を送り続け、腹の虫を活性化させる。

キノコや野草、木の実から溢れ出した出汁に依り、薄い白濁色に染められたスープからは、ぴょこんと具が見え隠れし、食べてー! と言う幻聴まで聞こえる……いや! 幻聴ではなく本当に僕に囁いているんだろう! そうに違いない!


シーナのドキドキと言う声に背を押され、いざ……!


ズズッ! 音を立てながらスープを飲む……。

凝縮された、キノコと木の実の旨味が口一杯に広がる!

肉が一切入っていないのにも関わらず、この濃厚さ……素晴らしい…………うっ! ……何だと!?

口一杯の濃厚さ……だが、言い換えればこってりなのだ……いずれはくどくなってしまう!

しかし! シーナスペシャルは野草が加わっている! 野草から生み出されたさっぱりとした風味は、先駆けて来た奴ら――こってりを口の中に残し続けずに喉を通過させる……!

馬鹿な!? 今までも食べてきた食材なはず……!

なのにこのような……こってりとさっぱりを生み出し、更には背反するはずのこいつらを共存させる……だと!?

…………違う! これは、可能性! この食材たちが持つ全ての可能性! それを彼女は……シーナは十全に引き出しただけ何だ!!

例えるならば……そう! シーナは眠れるシシを呼び起こした……ただそれだけ!

だが、その難しさは長い間、山と共に生きた僕には分かる! 恐ろしいほどの難しさだと……!


くっ……! シーナ、恐ろしい娘!

僕はとんでもない娘を迎え入れてしまったようだ……。

温かいスープを飲んでいるのにも関わらず、僕は背筋が凍ったかのように感じた……。


「お兄さん、どうですか? お口に合いました?」


「…………」


「……お兄さん?」


「シーナ……君に出会えて本当に良かった……」


「!?」

「!?」


〔!!?〕


その後、何か恐ろしいほどの恍惚とした顔をした僕に、皆怖がっていた……。


後から聞くと、スープはこれぐらいの味は普通らしい。

……フルトホルンの街でも外食せずに、自分の料理(煮るだけ、炒めるだけ)や、ただ焼いただけなどばかりだったため、自分の料理を普通と考えていたから、感動し過ぎたみたいだ……。


…………僕の今までの食事って……。






迷宮情報 11日目

迷宮評価 8

迷宮パワー 746 毎日+13

迷宮コスト 33+2

迷宮階層 全3階

迷宮部屋数 全10部屋


住人一覧

シーナ シビリアン


防人一覧

マオ ストーンマリオン

ウッドマリオン 20体

ストーンマリオン 5体

ブロンズマリオン 4体

ストーンガーゴイル 2体

ブロンズガーゴイル 1体


罠一覧

簡易射槍壁 12個


施設一覧

畑 規模(小) 2反


人物一覧

無し

(いらない)補足




獅子ライオンと言う獣は、この世界では太古に絶滅しているとされているため、姿や存在が不鮮明で有り、『シシ』と表記されます。

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