4話「4月24日、遠足①」
ー4月17日(木)ー
深まってきた男子の仲。今日の昼はなぜ明陵を志望したかで盛り上がった。
明陵は県内公立2番手の偏差値を誇るのだが、明陵に受かる生徒は県内公立トップの青葉丘高校にも受かる実力を持っていた人が大半である。ただ明陵の方が世間には低く見られるため、俺も青葉丘受けてたら受かってますけど?とか言ってプライドを維持するのが明陵生の定めなのだ(?)。
ちなみに俺の志望理由は、
「俺はなんか青葉丘は変人多いって聞いたから…」
「待って一緒なんだけど!」
「俺も聞いたことあるそういうの」
共感の嵐。やっぱ明陵しか勝たんわ。
業後には部活の本入部があった。1年生は合計9人入部したのだが、102だけで4人もいた。
俺、海、翔と日比谷 洋平。洋平とは初めて喋ったが仲良くなれそう。
仮入部で出会った東門も入るらしい。明日からの部活が楽しみだ。
帰りの電車に乗るとスマホに通知が来た。102のグループからだ。
開くと西峰が明日の時間割変更を送ってくれていた。3個くらいの感謝のリアクションを得ている。こういう面は悪くはないんだが、ほぼ毎日グループに何かしらを送っているのでやはり浮き始めている。
今日のHRでは遠足のバス座席を決めたのだが、俺はいつもの4人で固まった反面、西峰は男子19人の弊害(2人席で座ると必ず1人余るからね)を受けて見事ぼっちとなり1番前に1人で座ることとなった。
周りの男子から西峰を救ってやれよ~、と茶化されたが、まあ俺が知ったことではない。
金曜日も乗り切って2回目の週末。土曜日は午前に部活。夜は2時間塾に行った。偉い。
言い忘れていたが一応塾に通っている。中学の頃通っていたところと同じで、高校もそのまま通えば割引が受けられるなどの誘い文句に見事乗っかってしまった。
あと自分で言うのもなんだが、俺は地元の校舎(駒木校)では断トツのトップを張っていたので授業を他の人より増やす代わりに奨学金を出してくれるらしい。つまりどうなったか。週3日2時間ずつ塾に通う地獄の生活の完成である。あーあ。
ー4月21日(月)ー
最近の朝は陽也と、同じ市内の中学に通っていた高森敦季と一緒に3人で登校するようになった。
敦季とは共通の友達がおり、そいつの紹介で春休み中に知り合っていた。
本当は初日から一緒に行く約束をしていたのだが、駅が違うことと、上手くタイミングが嚙み合わなかったことにより中々一緒に行けなかった。
結局、乗るドアの位置を決めて待ち合わせることとなった。
最初からそうすればよかったのにって?思いつかなかったんだよ。
あと、乗換駅の手前で乗ってくる明陵の女子をよく見かけるようになった。
体操服の色が一緒だったので1年と判明。ちなみに緑色でめちゃださい。
3人とも面識がなかったのもあり、声かけてみろよ~、と毎回敦季が言い、俺と陽也がお前が行って来いよ、と言うまでがお約束となっている。朝の登校時間も一段と楽しくなってきた。
クラスでは、学校生活に大半が順応し始め、授業中に爆睡をかます強者たちが現れだした。
確かに週の初めが7限なのはだいぶ憂鬱である。何よりも体育がない。
今週のメインは木曜の遠足だからな…。危ない。寝るところだった。
昼を一緒に食べるメンツも固定されてきた。後ろに固まってはいるが、さすがに全員が同じ話題を共有することは少なく、最近は、叶多と玲といつもの4人の6人で話すことが多くなっている。
ー新たな生活に慣れだすと、月日は急速に早く流れ始める。今週はその実感が強い。
気づけば、遠足の当日を迎えていた。
ー4月24日(木)ー
天気は快晴。学校から少し離れたバスの駐車場に陽也と敦季と向かう。
駐車場にはバスは全部で8台停まっており、クラス順に並んでいるかと思ったら全く違っていた。分かりにくすぎる。
3人でお互いのクラスを見つけ合い、1番に102のバスを発見。
2人と別れバスに乗り込むと、俺の座席の周りに一成と柊弥がもう座っていた。
「早いな、2人とも」
「バスが早い時間しかなかったんだよねー」
「あーそっか、一成バスだもんね」
一成の住む町には電車が通っていないためバス通学らしい。
「1時間に1本しかないのよ」
「まじで!?それはつらいなー」
なんて喋っていると、息を切らした昌也が登場。
「駅から駐車場遠くね!?」
「時間に余裕持てってことやろ」
「集合3分前じゃん、危ないねー」
「3分前なら全然セーフ」
担任が出欠を取り始める。すると。
「誰か、山田を見たやついる?」
室長、まさかの遅刻か。すぐに電話をかけてみる。
「もしもし?海、聞こえる?」
「おう聞こえる」
「今どこ?」
「チャリ高校に置いて走ってる、あと2分くらいで着くわ」
「おっけ気をつけろよ」
そのまま情報を担任に伝達。海が遅刻なんて意外だな。
少し経って海が到着。なぜか車内で拍手が起こる。
海の腕を見ると出血があり、足には包帯が巻かれている。ざわつく車内。
「海、何があったん?」
海の近くの席にいた翔が問う。
「来る途中に玲と会ったからハイタッチしようと思ってチャリ漕ぎながら手を出したら引っかかって転んだんよ」
「おお…」
「何してん海と玲」
「海お前チャリ通やろ頑張れよ片手運転」
「いや実は玲が強すぎたんじゃないか」
男子がボケとツッコミを繰り返し、車内に笑いが増えていく。
「海、よく走れたな」
「こう見えても意外と痛くないから大丈夫だよ」
「そりゃ何より」
まあ、海が大丈夫ならそれでいいか。
ひと悶着を経て、和やかな空気になったバスがゆっくりと動き出した。




