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19、バカ犬

「緊張するね〜、どんな子っかっなー」


ランよ。

あんた…あんだけ「私がいるから他に兄弟いらないー」とか喚いていたくせにものっすっごい楽しみにしてるじゃん。


私たちは今お父様の執務室に向かっている。


「リン、あんた冷たい見た目に基本無表情なんだから冷たく見えないように頑張りなね?」


「…ランも私と同じ銀髪に青い目で冷たいと思うけど」


リンディアはムスッと言い返した。

するとランディアは得意げな顔し、両サイドの髪高い位置で持って見せた。


「私の髪はふわふわしてるからセーフなのっ」


犬かよ。

あれ、なんだっけあの犬種…キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルだ!

この妙に長い名前だけどすこぶる可愛い犬…別にランが可愛いとはいってないけどね。


ってか今更だがセーフってなに⁉︎

私はつまりアウトってことなのかなランさんよぉ。


「…バカ犬」


「わんっ!!へへっ。あ!リンは猫じゃらし好きだから猫だねぇ〜ほれないてみっ」


そーゆーことじゃないんの。

ランが犬ちゃん!私が猫さん!せーっのっ…なんて遊びはしてない。

バカにしてんのよ。


このおバカさんをどうしたものかと悩んでいると、ちょうどお父様の部屋の前に着いたようだ。



コンコン。


リンディアはランディアを無視して部屋をノックした。


出迎えてくれたのはお母様であった。


「…遅かったわね」


おっとっとっとぉ〜…。

これはまたお母様ったら、ずいぶん不機嫌オーラが出ていることですこと。


リンディアがノックをすると、部屋の扉を開けて出迎えたのはステラであった。


わざわざメイドの仕事を奪ってまでお父様の近くにいたくなかったのかなお母様。

一体どうしたの?いつもすごく仲良いのに…。


部屋の奥を見るとお父様と、その後ろに隠れている私達よりも少しだけ身長の低い男の子がいた。


正直驚いた。


なぜって?


それはその男の子が私たち双子と同じ、銀髪に青い目をしていたからだ。片方の髪を耳にかけ、長く垂れた前髪で片方の目が隠れている。

つまりは女の子みたいに可愛い美少年。


「お父様…やっちゃったのですね」


リンディアは額に目を当てて短く息を吐いた。

リンディアのその言葉に誰よりも反応した人がいた…ステラだ。


バタンッッッ。


後ろで扉がものすごい音で閉まる音がした。


「な、なんのことだい⁉︎」


ガイ・ブルーノの青い瞳は、妻であるステラとリンディアを行ったり来たりとしていた。


「これは…その、流石に言い逃れできないかと思います」


(へぇ〜…リンったらやるじゃない)


ちょっとこんな時に何なんかに心の中で話しかけてくれてるのよ。


(大丈夫だよ。リンが全ての疑問を口に出したおかげでお父様もお母様も本音で話し出すだろうし)


???

本音とは…。


「リンの言う通りです…いい加減あなたの口から聞きたいですわね。…私を、私を裏切ったとっ!」


お母様が片方の口角をあげて、今にも誰かを殺しそうな目をしているではないか。


おいおい、やばくないかこれ。


(大丈夫だって〜。それよりも大丈夫じゃないのはあったかな〜)


リンディアはランディアの目線の先を追う。

そこにはプルプルの震え、涙をポロポロ流す短いショートパンツを履いた先程の美少年がいた。


ショーパンに長いから靴下に美少年…やばいなこれ。萌える…萌えるなんて気持ち初めてだわ。

でもこれは絶対に萌えってやつだわ!


リンディアはテクテクと歩いていきその少年に話しかける。


「あなたは悪くありません。悪いのはお父様だけ、です」


リンディアは力強く頷き、少年の方に手を置いた。

少年はなんのことか分からずポカーンと口を開けた。


「ままままってくれ⁉︎私はステラを裏切ってないし、リンディアも私をそんな蔑むようなめでみないでくれっっっ」


「…理由とやらがあるのですか?」


「その一応聞いてあげるって顔やめてくれないかなリンディア?…あーーその、言葉足らずだったのは私のミスなんだけどね。これには事情がぁ〜」


はっきりしないなー。

お母様もう我慢できそうにないぞー。


「あ!ああ…あの、僕のことなら気にしないでくださいっ!」


美少年が声を上げた。


意外と大きい声が出るのね。

なかなかのゼロ距離だったから私の耳はキンキンよ。


お父様はチラッと美少年を見ると、「ありがとう」と小さく微笑んだ。


そして、少しの間下唇を噛み黙っているかと思ったら意を決したように話しだした。


「ごめんね。ちゃんと色々話すべきなのはわかってはいたけど、この子の前で話すにはなかなか酷なことかと思い結果、説明を省いて君たちに誤解を与えたようだ」


お父様はいつも通り話しているのになんだか悲しそうだ。


お母様もそれを感じ取ってか、先程までのオーラを消して静かにお父様の話の続きを促すように相槌をうった。


「この子は結論から言うと、私の弟の子だ。ステラも知っているように、父と一悶着あった後に、家を出て平民となった…好きな人と一緒になるためにね。けれど先月、弟夫婦が乗った馬車が事故にあいこの子マグノラだけ残して無くなってしまった」


「っっ⁉︎」


お母様はとても驚いたようで両手を口に当てて信じられないと言う顔をしている。


確かに、お父様の弟の子なら全て辻褄が合う。

我がブルーノ家しか持たない瞳の色に、お父様と同じ銀髪。


チラリと美少年に目をやると、先程止まっていた涙が再びながら出ていた。

…かわいそうだわ。


リンディアは顔はお父様に向けたまま、そっとその美少年の手を握った。


「最初は分家に預けようと思っていたんだがリンが弟が欲しいと言ってくれたからうちにと思ってね…勝手なことをしてすまない。…本当は、マグノラのためだけじゃないんだ。私も、未だにガルの死を受け入れなくてね。つい、話を避けてしまった…すまない」


その日、私は初めてお父様の涙を見た。

お父様の涙は数滴…静かに頬をつたった。


すると、お母様はお父様に駆け寄り、当主であるお父様の代わりに声を上げて泣いた。


(ぶらぼーーーーっ)


ランディアが心の中でそう叫びながら、うんうんとリンディアの元に歩いて行った。


何その親が娘の成長喜ぶみたいな演出。


(お手柄よリンっ。実は本来のストーリーだと、マグノラの見た目を見てお母様はお父様に浮気されたと勘違いして、次の日何も言わずに実家に帰ってしまうの。お父様が何を言っても聞く耳も持たずにね〜)


…。

ねぇ、先に言おう?

そういう結構な大きさの爆弾のことさ。


(てへっ⭐︎でも私反対はしたじゃん?弟くるなーーーって)


いや、まぁ…そうなんだけどさ。

それにもしても諦め早かったよねあんた。


リンディアはあいている手を使い、ランディアの頬をつねった。


「いひゃいっ、いひゃいわリンっ」


うるさい、バカ犬。

いつもお読みいただきありがとうございます。

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