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わがまま王女と駆けだし騎士の純愛譚  作者: 遥風 かずら
外伝クライマックス:プリンセッサの恋愛譚
73/151

73.姉妹の絆

「よし、じゃあ外で待ってるあいつらに会って来るとするか!」


「ハヴィ、わたしも一緒に行くわ。あなたの傍から離れたくないの」


「甘え王女だな、お前は。いや、王女じゃなくなっちまうのか。だとしても関係ねえな」


「ハヴィ、わたしの手を握って。彼らの前にすぐ出られるから」


「おう」


 レナータ王女として、最後とも言える不思議な力を使って、レナータとハヴェルはアスティンとラルディそれぞれの目の前に姿を現わした。


「ハ、ハヴィ!? あれっ? い、いつの間に」


「おう、久しぶりだな! いや、そうでもねえか?」


「う、うん……お、おかえり」


「なんだぁ? アス坊、泣いてたのかよ。ったく、戻るって約束しただろうが! お前、ルフィーナ様と別れてからまた泣き虫アスティンに戻っちまったんじゃねえのか?」


「そ、そんなことないよ……で、でもっ、ハヴィの顔を見たら泣きたくなったんだよ」


「なんだそりゃあ!? ヒゲか? ヒゲが無くなっちまったのがそんなにショックだったのか。そいつはすまねえな」


「ち、違うよ~」


 兄騎士ハヴェル。俺の兄のような存在。俺がルフィーナに出会う前から世話になってた騎士。彼への想いは他の誰よりも強い。それだけに迫る別れが近づいているのがすごく嫌だ。嫌だけど、あの王女の子を見た瞬間に安心出来た気がした。あの子ならきっとハヴェルを幸せにしてくれるようなそんな感じだった。


「レナータお姉さま……わ、わたし、あの……あのね」


「うん。ラルディ、いいの。言わなくてもいいの」


「お姉さま!」


 双子の姉レナータと別れ、記憶失いの騎士イグナーツと過ごしていたラルディ。属性魔法の支配に溺れ、力を手にし過ぎたラルディのしてきたことは、全てレナータにはお見通しだった。その全てを姉王女は許した。


「わたしもラルディに謝りたいの。あそこでわたしがあんなことをしなければ、こんなことにはならなかったはずだから。だから、ごめんなさい。ラルディごめんね……」


「ううん、わたしもお姉様に……ひどいこと」


 双子の姉妹。そして王女。王国を守っていかなければならない運命の姉妹の絆は、容易く途切れるものでもない。だけれど、別れが近づいていることは妹ラルディにも分かっていた。だからこそ、ヒゲ騎士ハヴェルに会わせたくなかった。姉がずっと恋煩いをしていた騎士ハヴェル。認めたくもない。だけどもう、認めるしかなかった。自分にも愛する騎士が傍に付いているのだから。


「ラ、ラルディ……あの、あのね、わたし」


「お姉さま! まだ時間はたっぷりあるわ! こうなってしまった以上は仕方ないわ。ヒゲの無くなった騎士と、そこのジュルツの彼に王国案内してあげましょ。それならいいわよね?」


「うんっ! そ、それじゃあラルディ。帰りましょ、わたしたちの故郷へ」


「そうね! すぐ目の前ですものね。魔法壁さえ無かったらいつでも入れたのだけれど、それはもう解いてくれているのでしょう?」


「え? 魔法壁ってなぁに?」


「は? お、お姉さまがしていたことじゃないの? ほ、ほら、この水で出来た壁……あ、あら?」


 厚い水壁で覆われていたはずの王国。ラルディやアスティンたちを阻んでいた魔法壁が目の前にあったはずなのに、まるで幻を見ていたかのように目の前には見慣れた王国の門が見えていた。


「だ、大丈夫?」


「何てことなの……お姉さまに心配されるなんて、不覚だわ」


「もうーー! ラルディってば! いつもいつもわたしをバカにして! これでも姉なんだからね」


「ごめんね、お姉さま。ごめんなさい」


「――うん」


 双子王女の絆は切れることの無いもの。いつもの姉妹のやり取りで、互いの想いを認め合えた瞬間だった。


「レニィ、俺らも入っていいのか?」


「ハヴィ! うんっ、もちろん! あっ、キミがアスティン?」


「ど、どうも……えと、俺……僕がアスティンです。初めまして」


「うふふっ、そっかぁ。君がラルディの初恋の相手だったんだね。その時のこと、ごめんね。妹は好きなものは全て手に入れないと気が済まない子だったの。だからアスティンと出会った時に怖い思いをさせてしまったよね」


「お、お姉さま、そ、それは……」


「――ラルディ」


「は、はい」


「お、おぉ、レナータがおっかねぇ……さすが姉といったところか」


「んもう、怖くないよぉ」


 そうか、これがハヴィの見て来た王女の世界なんだ。僕とルフィーナがそうであるように、ハヴィはレナータ王女といい出会い方をしたんだね。この人となら、ハヴィのことを託せるかもしれない。


「と、とにかく、そこのアスティン! あなたとヒゲ騎士、そしてわたしのイグナーツだけは王国へ入れて差し上げるわ!」


「な、なに!? お、俺とルカニネは入れねえのかよ? おいおいおい、そりゃあねえぜ」


「ふぅん? やっぱりね。そうだと思った。魔法を弾くヴァルキリーの力とは相容れない。そういうことかぁ。そうだろうとは思っていたけど、でもドゥシャンくらいなら入れるんじゃないの?」


「えと、ジュルツのヴァルキリーさま。ごめんなさい。あなたの言う通りです。それと、そこの長髪騎士様も入れないのには理由があるのです」


「くそぅ……ヒゲはよくても長髪は駄目なのかよ。ここまで来といてそりゃあねえぜ」


 確かにこんな遠くの地まで来たのにドゥシャンとルカニネだけが入れないなんて可哀相だよ。何でなのかな。


「そこのアスティンは王婿で間違いないかしら?」


「え? あ、うん」


「それとヒゲはお姉様の証を受けた騎士。イグナーツもそう。つまりそういうことよ。お分かりかしら?」


「ちょっと、ラルディ。もう少し優しく言いなさい」


「事実よ。王国は王に関わる人間にしか入れないわ。だから、悪いけれどジュルツの騎士ふたりは入れないの」


「な、なんてことだよ、ちくしょう……ルカニネ、俺らどうするよ?」


「ふーん……じゃあ、私とどっか行く? ふたりで」


「おぉ? マジか! それならそれでもいいぜ!」


「結論は出たようね。そういうことだから、お別れを言いなさい」


「もう、ラルディってば! あ、あの、どうか気を悪くしないで下さいね。アスティンとハヴェルだけが王国に入れるのですけれど、またあなたたちと会うことが出来ますので心配なさらないでください」


 やはりレナータ王女の方がお優しい方なんだなぁ。どこかフィアナ様に似ている気がする。だからきっとルフィーナとも気が合う気がする。


「しょうがねえな。じゃあ、アスティン。それとヒゲ! まぁ、ヒゲはもう無くなっちまってるけどよ。俺とルカニネでどこか適当に行って、適当にジュルツに戻るから団長と王女様には適当に言っといてくれや! じゃあな、ハヴェル!」


「おう、元気でな! ドゥシャン」


「アスティン、そういうことだからルフィーナ様とアルヴォネン様には適当に話をしといてね。じゃあね」


「ええっ!? ジュルツには帰って来るんだよね?」


「そりゃあね。好き好んでコイツと駆け落ちする気なんかないし~」


「ひでえな」


「わ、分かったよ。じゃあ、ルカニネとドゥシャン。気を付けてね」


「あたりめえだ!」

「またねー」


 王の関わりの人間。僕はルフィーナと関わってる。それだけのことなのに、王国に入れるんだ。でもこれで、少しでも長くハヴィとイグナーツと一緒にいられるんだ。そしてルフィーナ。もうすぐ君の元へ戻るからね。僕の愛する王女、ルフィーナ。

次回更新は夜です。

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