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151.守護騎士アスティンの帰還 後編


「ねえ、セラ。かれこれ数時間はああしているけれど……あ、足が痛くならないのかしら?」


「姫さん、そういうことじゃなくて、動けないのさ。アスティンもアグスティナも神経を研ぎ澄ましながら、互いの間合いを狙っているんだ。足はまぁ、痛いだろうけどな」


 セラの言う通り互いに向き合ったままで、出方を見極めている状態を保ち続けているようだった。戦いのことはよく分からないルフィーナは、騎士同士の真剣勝負はこういうことなのだと黙って見守るしかなかった。


「――行きます」

「……来い、アスティン」


 アスティンのいつもの剣技は相手の頭上からの振り下ろしで、バランスを崩すものだった。しかし、今回は違っていた。アグスティナの武器は一見すると、動きが鈍そうな感じを覚えていたが、構えの彼女からは一切の隙が感じられなかった。


 そこで取った攻撃姿勢は、突きの姿勢だった。身長が低く華奢なアグスティナには、腰を屈めての前傾姿勢攻撃が有効であると踏んだ。床を蹴り、勢いをつけてアグスティナの懐に突っ込んでいくアスティン。左手に持っていた盾を前面に押し出してバッシュを試みていた。


 対するアグスティナは、重武器フォセでアスティンのバッシュに備えていた。彼女の判断は瞬時に彼の動きを見極めて、バッシュに必要な盾を手元から外させることにあった。重武器フォセは、想像以上に重くアスティンの盾の動きを即時に止めていた。


「突っ込みではバッシュの利は失われる。シャンタル様から何を教わったというのか」


 重武器の重みは、バッシュの構えを見せた盾をあっさりと手元から外すことが容易だった。


「アスティン――!」


 思わず叫んでいたルフィーナだったが、王女の声がかき消えるくらいの火花が散り乱れていた。盾を外されたアスティンの動きは素早く、手にしていた剣をすぐさまフォセ目がけて振り下ろす。


 盾を失い、片手剣だけを手にするアスティンと、フォセを手にするアグスティナ。左右の交差が劈きの音を響かせている。実力は拮抗。しかし、実戦からしばらく離れていたアスティンの分が悪いのは、セラから見てすぐに分かっていた。


「ぐっ、僕は、もう迷うわけにはいかないーー!」


「ならば、誓え! 守るべき者と共に生き抜くことを! そのままでは私がお前を認められない」


「――誓う! 僕は、王女の守護騎士アスティンだ。僕はもう、悲しませない」


「……いいだろう。お前の勢いに免じて、弾くだけにしておく」


 ぶつかり合う剣の行方は、アグスティナの一瞬の突き上げによって、アスティンの剣を弾き飛ばして幕を閉じていた。手元に何も残っていないアスティンは、そのままルフィーナの元へと足を向けた。


「ルフィーナ。僕は誓う。キミを、ルフィーナ王女を守護する騎士になることを!」


「そ、それなら誓いの口づけをわたくしに」


 王女の手の甲に口づけを落とすアスティンは、一瞬だけ目を閉じていたルフィーナの口にも軽く触れていた。通常であれば、騎士の口づけ落としは手のみに行うものであった。しかし、アスティンは王女の唇にも誓いを込めて触れていたのだった。


「アスティン、あなた――い、いいわ。認めるわ、わたくしの守護騎士アスティン。あなたは今より、永劫において、傍に仕える誓いを立てたことを認めて差し上げるわ。あなたはもう、どこへ行くにもわたくしの傍から離れることを許しませんわ。よろしくて?」


「御意」


「……ということでいいかしら? ヴァルティアお姉さま。それと、お父様、お母様?」


「えっ?」


 大広間のコルティーナに隠れていたシャンタルと、アソルゾ陛下、ビーネア妃が安堵した表情で姿を見せた。アスティンの戦いを密かに見守っていたのである。


「守護騎士アスティンか。ふ……アグスティナの言う通り、バッシュにしても剣のさばきにしても、動きが鈍くなってしまったようだな。王女を守るというのであれば、我がまた指導をしなければならないようだ」


「シャンタルの稽古? そ、それは見習い騎士の頃の……?」


「ふふ、はははっ! 我では不満か? 守護騎士殿」


「そっ、そんなことはないです! お、お願いします!」


 シャンタルとの思い出のうち、アスティンから消えたのは想う心だけであった。見習い騎士だった頃の思い出は彼の中に残っていた。シャンタルはそのやり取りだけで、何となくの懐かしさと、喜びが込みあがり、思わず笑いがこぼれてしまった。


「お姉さま、嬉しそうだわ」


「ルフィーナよ。アスティンと共にジュルツを頼むぞ。そして機が熟した時は、彼と共に再び世界を回るがよい。わしはこの城に留まり、王女と騎士を見守ることにする。お前が再び城を離れるときには、父親であるわしを使えばよい」


「ルフィーナ王女、あなたはもう大丈夫よ。あなたと、彼とで騎士の王国を作っていきなさい」


「ええ、もちろんよ! 彼はわたくしの運命の人ですもの」


 アスティンの復活、そして王女の守護騎士となったことで、ジュルツは騎士の王国として新たな幕を開いた。ルフィーナとアスティンの物語は、新たな展開を迎えていくこととなる。

お読みいただきありがとうございました。


新たな展開へ続いていくということで、シリーズを完結いたしました。

わがまま王女と駆けだし騎士の物語はこれで終わります。


シリーズ続編の次回作にご期待と応援を頂けましたら幸いです。ありがとうございました。


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