The second day【B】
「ところでさ、セシル。聞きたいことがあるんだけど」
朝食を済ませ、食器を片付け終わり二人は座ってお茶を飲んでいた。
「はい、なんでしょう。」
セシルは分厚い本を閉じ、レイスの方へ目を向けた。
「この床にある円って何なの。スッゲー気になるんだけど。」
「あぁ、これですか。これは【魔法回路】に通じる魔法陣です。
「まほーかいろ?」
「はい。魔法回路です。そうですねー。簡単に言えば私の中に蓄積している魔力を使って扉を開いて好きな場所に行けるド扉みたいなものですね。」
「えっと…ちくせき、とか、まりょくって何?」
「そこから質問しますか。そうですね。あ、いっそレイスも魔法を覚えませんか。そしたらよく分かりますよ。」
「俺に出来る訳ないよ。だってそれ呪術師みたいに生まれたときから呪術の力を持ってるように、セシルも生まれたときからその、まほうとかいう力を持って使えるんだろ。」
「まぁ、確かに呪術師も魔法使いも生まれた時から持ち合わせている力から呪術や魔法を煉るわけですが、人は誰でも小さい魔力と呪力を持っております、ですからそれをちゃんとした者がその力を目覚めさせれば、誰でも魔法、呪術、どちらも使うことが出来ます。」
「なんかあっさり言い切ったな…。すると、俺の中に魔力、呪力があるんだよな。でも、誰がその力を目覚めさせるんだ?」
「私が目覚めさせます。」
「出来るの?」
「出来ますよ。その魔法陣の上に立ってください。早速始めますよ」
セシルは立ち上がって階段に立てかけていた杖をとりに行った。
「でもこれ魔法回路だよね。俺他の場所に飛んだりしない?」
「大丈夫です。魔法陣の中の文字を書き換えるだけでいいんですし」
「え…これ文字だったの?」
「魔法使い用の1000年前の文字ですよ。現代の文字に書き換えても効果はそのままなんで魔法陣扱えるようになったら使っていいですよ。それじゃあ始めます。動かないでくださいね?」
セシルは杖と同じ長さの燭台を魔法陣の四隅に立てて、蒼い炎を灯した。
すると部屋の中は一気に薄暗くなった。
そして杖の先についている蒼い石が紫から赤色へ変わると、バトンのように回して魔法陣の上へつ突きおろした。
「眠りし種子よ、今深い眠りから覚め、主、レイスに真の力を目覚めさせよ」
何やらその後も唱え続けているが、よく聞こえない。
レイスはじっと立っていて変化に気がついた。
足元の魔法陣の文字が変化している。
うっすら魔法陣が光りだすと、体に何か熱いものが走る。
これは一体…
そのとき、魔法陣が一気にカッと光った。かと思うと、すぐに収まってしまった。
「セシル?」
「終わりましたよー。」
「何?今ので俺の中の魔力が目覚めたの?」
「えぇ。ただ…魔法使い(まだ見習いですが)になると変化があるんですよ…」
「何?」
セシルは手鏡を取り出してレイスに向けた。
レイスは手鏡に映った自分の顔を見て驚いた。
「なっ…髪の毛が茶髪に?!目の色も青が赤に?!」
「あははー。綺麗ですよ、その色」
「これ、親がいたら完璧怒られただろうな…でも明日からどうやって仕事場に行けば…」
「簡単なことじゃないですか。ここで働けばいいんです。」
あっさりとセシルは言い切った
ここで仕事を?いやいやいや、いくらなんでも地下通路にある店に誰が好き好んで来るんだ?
てか誰も来ないよ。断言するね。こんな薄暗いばしょ誰も来ないよ。
「無理だろ。誰がこんな地下通路にくるんだ?」
「来ますよー。明日あたりビラ配って様子みましょうよ。」
「…なんか騙されてしまった気がしてきた…」
こうしてこの日、レイスは郵便配達屋から魔法使いへ転職し、魔法を勉強することになった。
この日は、昼から夜にかけてセシルがつきっきりで初期魔法を覚えさせたとか。
二日目の話のおまけv