The second day
レイスは今日も朝からものすごい速さでボードに乗って坂を下りて手紙を配達する。一体どうすれば1番区から13番区までたった一時間半で回りきり、手紙を配達し終わるのだろうか。
正直その点は誰にも解けない謎である。
配達を終えて、13番区の教会の近くの橋の下に丁度来た列車に飛び乗る。
一息ついて、列車の上に横になり、後は中央区へ戻るのをしばらく待つだけだ。
「ふー・・・早く終わったし。朝飯食わないとな。あーそういえば冷蔵庫何にもないんだったっけ。
買い物しないとなー。あ、洗剤も切らしてたっけ?安売りしてるのは、と」
新聞に挟まれていたチラシをバックからだして見る。
今日はここで野菜が安い。あの店では洗剤がお一人様2箱。
次々すばやくチラシに目を通す。
「あ、セシル倒れてたんだっけ。流石に食材とかまだおいてないだろうし。立てるのかな・・・」
風に揺られて小一時間。中央区の店で食材や必要な生活用品を買うと、セシルの店へ向かった。
「おっはよーさん」
勢いよくドアを開けて中に入る。と、そこにはセシルが立っていた。
とても驚いた表情で。
「びっくりしたぁ;ドアはゆっくり開けてください!!心臓に悪いです;;」
「あ、悪りぃ。つか、もう大丈夫なん?」
「何がですか?」
「何がって、昨日倒れたじゃんか」
「あぁ、昨日の。」
「そう、昨日の。」
「大丈夫です。貴方が運んでくれたんですか?ありがとうございます。」
「いや・・・別に。」
こんなに会話をしているがやはりまだ距離感がある。
「あの、ところで何をしに?」
「え?あ、あぁ、アンタ何も食材ないだろうなって思って買ってきたんだよ。」
「わぁ。助かります。ありがとうございます」
レイスのほうへセシルが近づこうとしたのをレイスは待ったをかけて、食材の入った袋をテーブルの上に置いた。
「・・・まだ信じてないぞ俺は。」
「私が貴方を食べるとでも?」
「あぁ」
セシルはため息をついてお茶を入れ始める。レイスの分も入れているようだ。
それからお茶を入れ終わるまで何の言葉も発さない二人・・・。
セシルはお茶を入れるとテーブルの中心にカップを置いて「どうぞ」と、言うと、
部屋の隅にある本棚の前へ移動した。
そしてそこへ座り込み分厚い本を読み始める。
しばらく、何の会話もないまま時は過ぎた。
重苦しい空気がその場にあふれてきているのがよく分かる。
レイスはその中口を開いた。
「あのさ・・・・アンタ腹減ってない?」
「お腹が空いているのであれば奥の台所使ってくれてかまいませんよ。」
「俺はアンタに聞いてるんだ」
しかし、セシルは返事をせず、本に集中する。
その態度に腹を立てたのか怒鳴った。
「聞けよッ!」
「・・・はぁ・・・」
パタンっと、本を閉じると、レイスの方へ向き直った。
「貴方が私を警戒するから、私も貴方を警戒しているんですが、どれほど嫌か分かりますか?」
「・・・え」
「私は確かに今の時代の貴方達から見たら変な人かもしれません。ですが、私も人間です。
同じ人間としてみて欲しいのです。」
その言葉を聞いてレイスは、はっとした。
(そっか・・・そうだよな。俺は馬鹿だったよ。
同じ人間なのに、セシルがまほうとか言うの使うから同じ人間と見ていなかったんだ。
そりゃぁセシルだって怒るよな。)
「セシル、ごめんな。俺、お前のこと同じ人間として見ていなかった。」
「もういいですよ。分かってくれたなら。」
セシルは食材の入った袋からトマトやきゅうりを出すと笑顔で振り向いた。
「さ、レイスが私のために持って来てくれた野菜さん達の鮮度が高いうちに朝食を作りましょう!私、お腹が空いてしまいました。」
「あぁ」
レイスは初めてセシルの横に立って笑った。
「初めて笑ってくれましたね。」
「そりゃあ、お前、だってさぁ―――」
セシルと食材の袋を台所まで運ぶとフライパンに火をつけて
「友達だもん」
と言い切り、野菜を切っていく。
セシルは何も言わず、ただ呆然としてレイスを見ていた。
手にしていたトマトは握りつぶしちゃっていたりするけど。
「うわッ?!セシル何してんのおおおぉぉぉ?!?!トマトがーッ!!!
うわぁブラットレイみたいじゃんかよーッ!!」
ぐちゃっ、と言う背後の効果音に気がついたのか振り向いてその状況を見てレイスは焦る。
「へ?あ。」
「『あ。』じゃヌエエエエェェェッ!!!一刻も早くトマトさんを離せ!!開放して!!」
トマトさんがお一人、いや、一個無残な姿になったので朝からはちょっとキツイが、
他に思いつかなかったのでトマトカレーになってしまった。
「レイス。朝からカレーが食べられるとは思いませんでしたよ。」
にっこり笑って手を動かして口に運んでいるがセシルの顔色はよいとは言えたものではなかった。
「やっぱり朝はさっぱり系だよな。朝からのカレーがこんなにきついとは思わなかった。」
「同意です。でも――」
セシルは一口、口に運んで
「おいしいです」
と笑って答えた。
「ぷっ。」
「何ですか。」
「セシルッ。か、顔。あははッ。」
「何ですか、もー。」
「口周りついてる。」
「えっ。」
「お前子供みたいだな。」
二日目の朝の食卓の風景。
セシルとレイスが出会って二日目の話。
これからどうなるのか、自分で先が分かっているのに気になる自分が時々います(笑




