第2章 最初の門
アレクセイ・セロフは、いつものように自分の部屋にいた。
静かなランプの光。開かれたノート。机の上に広げられた教科書。
彼は春の期末試験、つまり大学一年の最後の試験に向けて勉強していた。すべては慣れた日常で、ほとんど単調なほど静かだった。
その時、スマートフォンが振動した。
ドミトリー・ヴラソフからのメッセージ。
「急いでニュースを見ろ」
アレクセイは眉をひそめた。
短すぎる。あまりにも唐突だ。
一瞬だけ画面を見つめ、それからテレビをつけた。
そしてすぐに、何かが異常だと理解した。
どのチャンネルも同じだった。
緊急速報。
生中継。
震えるカメラ映像。
そしてどこでも同じ現象が報じられていた。
ポータル。
それは世界中で同時に出現していた。
都市の中、道路の上、建物の間、歩道の真ん中にまで。
空間を切り裂くような巨大な長方形の“裂け目”。
まるで同じ型で切り抜かれたように整った形をしているが、大きさは様々だった。細い通路のようなものから、十数メートルに及ぶ壁のようなものまで。
そしてそれらはすべて光っていた。
緑色に。
ネオンでも、技術でもない。
現実に存在してはいけない“光”。
初めてそれを見た人間なら、誰もが同じ言葉を口にするだろう。
――魔法だ、と。
ニュースでは記者たちが冷静さを保とうとしていたが、その声は明らかに震えていた。
「各地でポータルの出現が続いています……数十か所で確認……原因は不明……」
カメラが街を映す。
普通の都市。
人々。
車。
そして歩道の真ん中に、直立した緑の裂け目が“扉”のように存在している。
通行人は立ち止まり、距離を取る者もいれば、撮影する者もいる。ただ何が起きているのか分からず、その場に固まる者もいた。
その時、スマートフォンが再び振動した。
ドミトリーだ。
アレクセイはすぐにチャットを開いた。
アレクセイ:
「そのポータルって何だ?」
ほぼ即座に返信が来る。
ドミトリー:
「こっちが知りたいよ」
「酔ってるのかと思った」
少し間。
続けてメッセージ。
「幻覚かと思ったんだ」
さらに続く。
「でも本当に目の前に出てきた」
アレクセイは固まった。
視線をテレビへ戻す。
そして初めて、これは単なるニュースではないと理解する。
急いで打ち込む。
アレクセイ:
「“目の前に”ってどういう意味だ?」
すぐに返信。
ドミトリー:
「そのままだよ」
「普通に歩いてたら、いきなり目の前に開いた」
間。
「道路の真ん中に」
アレクセイはゆっくりとスマートフォンを下ろした。
再びテレビを見る。
都市の中心に立つ緑の門。
それはもう、“どこか遠くの出来事”ではなかった。




