第89話 「期末テスト後、二人で答え合わせをしたら甘くなった」
期末テストが終わった。
アキラは机に突っ伏した。
(終わった。長い戦いだった。今回は英語ラスボスに加え、古典という隠しボスまで出現した)
トオルが言う。
「放課後、遊びに行く?」
アキラは少し考える。
今日は生徒会室に行く約束をしていた。
ミレイと数学の答え合わせをするためだ。
「すまない。答え合わせクエストがある」
トオルはにやにやする。
「会長と?」
アキラは黙る。
トオルは笑う。
「お前、沈黙で答えるのうまくなったな」
放課後、生徒会室。
ミレイは問題用紙を広げていた。
「黒瀬くん、ここはどうなった?」
「これは三番です。理由は、等差数列の和が……」
アキラは説明する。
ミレイは真剣に聞く。
前より、ずっと自然に隣に座れるようになった気がする。
それでも、近いと緊張するのは変わらない。
ミレイが答えを見る。
「合っていたわ」
「よかったです」
ミレイは嬉しそうに言う。
「黒瀬くんのおかげね」
アキラは首を振る。
「解いたのはミレイ先輩です。僕は伏線回収の仕方を少し説明しただけです」
ミレイは笑う。
「数学なのに、やっぱり物語なのね」
その笑顔を見て、アキラは思う。
(この人に笑ってもらえるなら、数列も悪くない)
その後、ミレイが英語の答え合わせを手伝ってくれる。
アキラが正解していると、ミレイは自分のことのように喜ぶ。
「ここ、合っているわ」
「本当ですか」
「ええ。よくできているわ」
よくできている。
その言葉に、アキラは静かにやられる。
ミレイは褒めるのがうまい。
いや、たぶん本人は普通に言っている。
だから余計に効く。
答え合わせが終わる頃、二人とも少し疲れていた。
ミレイが言う。
「テストが終わると、少し寂しいわね」
アキラは驚く。
「テストが?」
「ううん。こうして一緒に勉強する時間が減るのが」
アキラは完全に停止した。
(それは……かなり直接的では?)
ミレイも、自分の発言に気づいて赤くなる。
「い、今のは学習機会の話よ」
アキラは小さく言う。
「僕も、少し寂しいです」
ミレイがこちらを見る。
二人とも赤い。
でも、今回は笑えた。
◆オチ
リコが戻ってきて言う。
「答え合わせ終わりました?」
アキラは頷く。
「はい。数学と英語は」
リコは二人を見て言う。
「恋の答え合わせはまだみたいですね」
アキラとミレイは同時に問題用紙で顔を隠した。




