第74話 「会長、二人に支えられすぎて困る」
体育祭の後、烏丸くんが黒瀬くんを強く意識し始めた。
以前からその気配はあった。
しかし、今回は本格的だった。
「どちらがより白鳥さんを支えられるか」
そう言って、生徒会補助業務勝負が始まってしまった。
ミレイとしては、そもそも勝負にしてほしくなかった。
生徒会の仕事は協力して進めるものだ。
誰が一番かを決めるものではない。
そう思っていた。
けれど。
黒瀬くんが、自分の言いかけた仕事を次々と察してくれる。
「あの資料……」
「文化祭予算の残額表ですね」
「あの箱……」
「体育祭備品の未返却分です」
「昨日の……」
「風紀委員からの報告書です」
ミレイは驚く。
「黒瀬くん、どうしてわかるの?」
彼は少し照れたように言う。
「白鳥先輩が困りそうなところを、少し覚えていただけです」
ミレイの胸が大きく跳ねる。
困りそうなところを覚えている。
それはつまり、自分のことをよく見てくれているということだ。
リコが横でにやにやしている。
「会長、今の効きましたね」
ミレイは小声で答える。
「効いたって何かしら」
「恋愛ダメージです」
一方、烏丸くんも真面目に頑張っている。
書類は綺麗に整えるし、備品の点検も丁寧。
彼は彼なりに、ミレイを支えようとしてくれている。
ミレイは二人に言う。
「二人とも、手伝ってくれてありがとう。でも、勝負ではなく協力してくれると嬉しいわ」
烏丸は少し気まずそうにする。
黒瀬くんはすぐに頷く。
「了解しました。協力プレイに移行します」
「協力プレイ?」
「はい。対戦より効率がいいです」
ミレイは笑ってしまう。
その言い方が、やっぱり黒瀬くんらしい。
烏丸もため息をつく。
「君は本当に調子が狂うな」
アキラは真剣に答える。
「僕は平常運転です」
リコが笑う。
「それが一番狂わせるんですよ」
◆オチ
その日の生徒会日誌。
烏丸くんと黒瀬くん、補助業務で競争。今後は協力へ誘導。
追記。
黒瀬くんは、私の困りそうなところを覚えてくれていた。
さらに追記。
嬉しかった。かなり。
リコが読んで言う。
「会長、かなりって書きましたね」
ミレイは日誌を閉じる。
「業務効率の話よ」
リコは笑う。
「業務効率で顔赤くなる人、会長くらいです」




