第67話 「名前呼びイベントは突然に」
足首は順調に回復していた。
体育祭本番には間に合いそうだった。
そんな中、アキラには別の問題が発生した。
名前呼び。
きっかけはトオルだった。
昼休み、トオルが言う。
「お前、いつまで会長のこと白鳥先輩って呼ぶんだ?」
アキラは首を傾げる。
「何か問題が?」
「いや、別に問題ないけど。向こうはお前のこと黒瀬くんだろ?」
「それが標準設定だ」
「ミレイ先輩って呼んでみたら?」
アキラは飲んでいたお茶をむせた。
「高難度すぎる!」
「名前呼びだけでボス戦扱いすんな」
アキラは真剣に反論する。
「名前呼びは関係性が一定値を超えないと解放されない特殊ボイスだ」
「お前の中で恋愛ゲームの仕様どうなってんだよ」
しかし、その日からアキラは意識してしまう。
白鳥先輩。
ミレイ先輩。
ミレイさん。
会長。
白鳥ミレイ生徒会長。
どれも口に出せない。
放課後、生徒会室でミレイが言う。
「黒瀬くん、この資料をお願いできる?」
アキラは返事をしようとする。
「はい、し……」
白鳥先輩と言おうとして、途中で止まる。
「し?」
ミレイが首を傾げる。
アキラは焦る。
「資料ですね。了解しました」
リコが横で目を光らせる。
「黒瀬くん、今何か呼び方を変えようとしました?」
アキラは全力で否定する。
「していません。発声が詰まっただけです」
ミレイは少し気になる。
「呼び方?」
アキラは書類を抱えて逃げようとする。
しかし、ミレイが言う。
「黒瀬くんは、私のことを呼びにくい?」
アキラは足を止める。
「いえ。呼びにくいというか……呼び方を変えるのは、イベント解放条件が」
ミレイは真剣に聞いている。
「黒瀬くんが呼びやすいなら、どんな呼び方でもいいわ」
アキラは心臓を撃ち抜かれた。
(どんな呼び方でもいい……? 許可が出た?)
試しに言おうとする。
「ミ……」
ミレイがじっと見る。
「ミ……」
リコがにやにやする。
「ミ?」
アキラは限界を迎える。
「ミッション完了後に考えます!」
そして逃げた。
◆オチ
帰宅後、姉のマドカに相談する。
「名前呼びができない」
マドカは即答する。
「ミレイちゃんって呼べば?」
アキラは両手で顔を覆う。
「姉さんはいつもラスボスの第二形態を出してくる」




