第62話 「会長、借り物競走のお題が気になりすぎる」
体育祭の準備が始まった。
ミレイは生徒会長として、運営資料を確認していた。
競技順。
放送原稿。
係の配置。
救護テント。
来賓席。
備品リスト。
やることは山ほどある。
それなのに、ミレイの意識は借り物競走のお題表に向かってしまう。
黒瀬くんが借り物競走に出る。
それだけなら、ただの体育祭種目だ。
けれど彼は言っていた。
「お題によっては、社会的に即死します」
リコはそれを聞いて笑っていた。
「会長、もし黒瀬くんが『好きな人』を引いたらどうします?」
ミレイはペンを落とした。
「好きな人……?」
「借り物競走の定番ですよ」
「人は借り物ではないわ」
「そこに突っ込むんですね」
ミレイはお題表を確認する。
そこには、いろいろな項目があった。
赤いものを持っている人
眼鏡をかけている人
足の速そうな人
先生
仲のいい先輩
尊敬している人
そして、最後の方に小さく書かれていた。
気になる人
ミレイは固まった。
気になる人。
好きな人ほど直接的ではない。
けれど、十分に危険な言葉だった。
(黒瀬くんがこれを引いたら、誰を連れてくるのかしら)
考えたくないのに、考えてしまう。
桜庭ユナさん。
クラスの女子。
仲のいい先輩。
それとも。
自分。
そう思った瞬間、顔が熱くなる。
リコが横から言う。
「会長、今、自分が連れていかれる想像しましたね」
「していないわ」
「じゃあ何を想像しました?」
「体育祭の円滑な進行よ」
「会長の心臓が円滑に進行してませんよ」
放課後、黒瀬くんが生徒会室に来る。
「借り物競走の練習って必要でしょうか」
ミレイは思わず聞く。
「黒瀬くんは、もし『気になる人』というお題が出たらどうするの?」
言ってから、しまったと思う。
黒瀬くんが完全に固まった。
「気になる人……?」
「い、いえ、例としてよ。お題にあるかどうかは別として」
黒瀬くんは明らかに動揺している。
「気になる人……気になる……つまり、関心度が高い人物……」
ミレイも赤くなる。
「そうね。関心度が高い人物ね」
リコが遠くで言う。
「言い換えても甘さは消えませんよ」
◆オチ
その日の生徒会日誌。
借り物競走のお題確認。『気になる人』は危険。
追記。
黒瀬くんが誰を連れてくるか、少し気になる。
リコが読んで言う。
「会長、この時点でお題クリアしてます」
ミレイは首を傾げる。
「どういう意味?」
「黒瀬くんが気になる人、会長です」
ミレイは真っ赤になった。




