第60話 「会長、相合傘の次回予約に動揺する」
昨日の相合傘が噂になっていた。
ミレイは、生徒会長として落ち着いて対応するつもりだった。
相合傘は校則違反ではない。
ただ、周囲の生徒が騒いでしまう可能性がある。
風紀委員の指摘ももっともだった。
そう、これは冷静に処理できる話のはずだった。
しかし黒瀬くんが言った。
「一本予備です。必要ならまた共同使用可能です」
また。
共同使用。
つまり、次も一緒に傘に入る可能性があるということ。
ミレイはその場で固まりそうになる。
リコがにやにやしている。
「会長、次回予約入りましたね」
「予約ではないわ。雨天時の備えよ」
「傘の予備じゃなくて、相合傘の予備ですね」
「違うわ」
しかし心の中では、少し嬉しかった。
次に雨が降ったら、また一緒に帰れるかもしれない。
そう思ってしまう自分に気づいて、ミレイはますます顔が熱くなる。
その日の放課後、黒瀬くんと一緒に備品整理をする。
雨の話題を避けようとするほど、意識してしまう。
黒瀬くんも少しぎこちない。
「白鳥先輩、これはどこに置きますか」
「その傘……じゃなくて、その箱は棚へ」
「傘?」
「箱よ」
リコが小声で言う。
「会長、脳内が雨ですね」
ミレイは咳払いする。
作業が終わった後、黒瀬くんが言う。
「昨日、噂になって迷惑でしたか?」
ミレイは驚く。
彼は少し不安そうだった。
ミレイは首を振る。
「迷惑ではないわ。ただ、少し恥ずかしかっただけ」
黒瀬くんはほっとしたような顔をする。
「よかったです」
ミレイは勇気を出して言う。
「それに……雨の日に一緒に帰れたのは、嬉しかったわ」
黒瀬くんが完全に止まる。
ミレイも止まる。
言ってしまった。
でも、これは本音だった。
しばらく沈黙した後、黒瀬くんが小さく言う。
「僕も、嬉しかったです」
その一言で、ミレイの胸が温かくなる。
◆オチ
その日の生徒会日誌。
相合傘の件について、黒瀬くんと確認。迷惑ではなかった。
追記。
また雨が降ってもいいかもしれない。
リコが読んで言う。
「会長、天気に恋愛を委ね始めましたね」
ミレイは小さく答える。
「天気予報を確認するだけよ」




