第39話 「文化祭明け、現実に戻れない」
文化祭が終わった。
校内から装飾が外され、机は元に戻り、廊下もいつもの静けさを取り戻している。
だがアキラの心は戻っていなかった。
後夜祭。
ミレイと踊った。
手を取った。
「もっと、仲良くなれるかもしれないわね」と言われた。
思い出すたびに、心臓が変な動きをする。
(これは文化祭後遺症。イベント終了後に発生する余韻デバフ)
授業中、ノートにうっかり書いてしまう。
もっと仲良くなれるかもしれない
トオルに見られる。
「重症だな」
アキラは慌ててノートを閉じる。
「これは台詞研究だ」
「誰の?」
「……生徒会長の」
「それを世間では恋煩いって言うんだよ」
アキラは否定しようとするが、言葉が出ない。
放課後、生徒会室へ行く。
ミレイも少しぎこちない。
「黒瀬くん、文化祭お疲れさま」
「生徒会長も、お疲れさまでした」
二人の間に、妙な沈黙が流れる。
いつもならアキラが何かオタク用語を言い、ミレイが天然に受け止め、リコがツッコむ。
でも今日は、何を言っても後夜祭のことを思い出してしまう。
ミレイが紅茶を出す。
アキラが受け取る時、指が触れる。
二人とも同時に手を引っ込める。
リコが遠くから言う。
「文化祭を経て、むしろ初心者に戻ってません?」
アキラは反論できない。
作業中、ミレイが言う。
「黒瀬くん、後夜祭……楽しかったわ」
アキラの心拍数が跳ねる。
「僕も……楽しかったです」
言った瞬間、二人とも赤くなる。
でも、今度は逃げなかった。
少しだけ、アキラは思う。
(もしかして、これは推し活ではないのかもしれない)
◆オチ
帰宅後、アキラはまた検索する。
推しと恋の違い
今回は最後まで読む。
そして静かに呟く。
「……まずい。条件一致率が高い」




