第108話 「会長、花火大会の話題に少し期待する」
夏休み三回目の生徒会活動日。
ミレイは少し緊張していた。
理由は、黒瀬くんと会うのがプール事件以来だったから。
もちろん、メッセージのやり取りはした。
お礼も伝えた。
怪我がないことも伝えた。
けれど、実際に会うとやはり意識してしまう。
黒瀬くんを見ると、あの時のことを思い出す。
後ろから抱き止められた感触。
真剣な声。
心配そうな目。
(事故。救助。事故。救助)
今日も心の中で唱える。
しかしリコには全部見抜かれていた。
「会長、黒瀬くん見るたびに顔赤いですよ」
「暑いからよ」
「生徒会室、冷房入ってます」
「……冷房の効きが弱いのかしら」
「会長の言い訳の効きが弱いです」
作業中、掲示物の中に花火大会のお知らせがあった。
三日後、駅前商店街で花火大会。
ミレイはそれを見て少し心が跳ねた。
花火大会。
夜店。
花火。
浴衣。
夏の夜。
そして、黒瀬くん。
(もし、一緒に行けたら……)
そこまで考えて、ミレイは顔が熱くなる。
黒瀬くんが何か言いかけた。
「ミレイ先輩、その……」
その声に、ミレイの胸が高鳴る。
もしかして。
もしかして、花火大会のことを。
しかし、その瞬間リコが言った。
「あ、会長。その日って予定ありましたよね?」
ミレイは固まる。
予定。
そうだ。
母から、親戚の集まりが入るかもしれないと言われていた。
まだ確定ではない。
けれど、その可能性はあった。
「ええと……そうだったかしら?」
リコが手帳を見ながら言う。
「たしか親戚の集まりが入るかもって言ってませんでした?」
「そうだったわ」
ミレイは黒瀬くんを見る。
彼は一瞬で表情を整えたけれど、少しだけ残念そうに見えた。
胸がちくりとした。
(今、黒瀬くんは何を言おうとしていたの?)
期待してしまう。
でも、聞く勇気が出ない。
作業後、ミレイは家に帰ってすぐ母に予定を確認した。
「三日後の親戚の集まりって、確定しているの?」
母は少し考える。
「まだ未定よ。叔母さんの都合次第ね」
未定。
ミレイの胸が少し高鳴る。
まだ、可能性はある。
◆オチ
夜、リコにメッセージする。
花火大会の日の予定、まだ未定だったわ。
リコから即返信。
黒瀬くんに言うんですか?
ミレイは固まる。
少し悩んで返信。
聞かれたら。
リコ。
会長、それだと黒瀬くんも聞けません。
ミレイはスマホを抱えて悩んだ。




