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あるもの  作者:
8/8

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 火事は燭台が倒れたことによる失火として処理された。警察から事情聴取を受けたが、事件性はないものとして扱われた。

 光司と幸恵からは、後日たちばな葬祭株式会社へ手紙が届いた。

 火災があった夜、二人の夢に玲が現れたという。微笑みながら「無事でよかった」とメッセージを残し、消えてしまったそうだ。

 手紙には、息子に助けられた命を大切にし、これからは慎ましく生きていくと記されていた。

 蔵のあった土地は更地にされた。跡地には供養のために地蔵が祀られた。佑真は定期的に訪れ、手を合わせている。

「どうか、安らかに眠りますように」

 お参りをすると、佑真につきまとう不気味な影は一時的に大人しくなる。あくまでも勢いが衰えるだけだ。油断をすれば、幸円と同じ道を辿るかもしれない。

 幸円は怪しい影と佑真は相性が良いと言っていた。

 当初は分からなかったが、おそらく均衡がとれるという意味なのだろう。影は佑真を乗っ取れない代わりに、佑真がお祓いの類をしても消えることはない。

 よりにもよって悪霊と腐れ縁のような関係になるとは。人生とはどう転ぶかわからないものだ。

 ささやかれた幸円の言葉を思い出す。

「すみません、連れてはいけないようです……か」

 お参りを終えると佑真は社用車に乗り込む。まだ片付けなければならない仕事がある。車の収納スペースを開けると、保管していた刃物を手に取る。

 美しい刀身だ。眺めていると黒い感情に心が焼かれそうになる。

 忘れてはいけない。あの日、僕達はおそろしい体験をしたのだ。

「大丈夫、僕は正常だ。みんなをひどい目に合わせた人間に復讐をする。それだけさ」

 車のエンジンをかけると、佑真はゆっくりとアクセルを踏み込んだ。

〈了〉

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