第61話 久々の決め台詞!!
「いてて……ただいま、勇者参上!! ……久しぶりに言えたな。」
「な!? 何故あなたがこんなところにいるのです!?」
なんとか、こっちも間に合ったみたいだな。今まさに魔王へ止めを刺そうとしている場面に出くわしたのだから迷わずに蹴りを入れてブレンダンを妨害した。しかし、魔王のタンブルが押されるなんて思わなかった。多勢に無勢とはいえ負けるとは思っていなかったし……。
「何故と言われても……? 知り合いの知り合いを助けに来るのは当然の話だと思うんです?」
「今はそういうことを聞いているんじゃない! 何故ここがわかったのです? ここは異空間に近い環境だというのに!」
「いやぁ、まあ、なんとなくですよ? 気配を探って、ハイクでバショーして、気付いたら私刑の現場に遭遇したんです?」
「何をふざけたことを!!」
ふざけるったって、奥義の名前はふざけた(※タニシ的表現)かもしれないが本当の名前を言っても理解できないでしょ? 耳馴染みのない単語を聞いたところで頭がこんがらがるだけでわかるわけないし。理解しやすいように配慮したんだが、理解されなかったようだ。理解、理解と連続して俺もわけがわからなくなってきたよ!
「全く油断も隙もない! 少なくともあなたがここにいるということは処刑人達がしくじったということですね!」
「しくじりましたね、アイツらは! 逆に処刑台へ縛り付けておいてやったから、あとからタップリ説教してやってよ。」
「ああも大口を叩いておきながら失敗するとは……役に立たない連中だ!」
特に隊長”代理”のギリーが楽勝とかほざいていたんだろうなというのは安易に想像できる。無抵抗な俺たちを楽勝で処刑できると豪語していたのだろう。その結果が……大惨敗なのである。余裕ぶっこいて遊びに走ったのが奴らの敗因、というか”代理”の最大のしくじりだろう。アイツもそのうちまっさらに”洗浄”されてしまうに違いない。
「くっ!? 何やら、他にも仲間がいたようですね? あの人物が助けに入ったのでしょう?」
シャルルが言うあの人物とはヘイフゥの事を指しているのだろう。今はオードリーと対峙している。タニシはクロガネ団のメンバーにカウントされているだろうから、元々勘定に入っていたものと思われる。想定外の人物が乱入してきたことに苛立ちを覚えているようだ。外部からの侵入を許してしまった事に腹を立てているに違いない。
「あなたの仲間が助けには入れるとは思ってもいませんでした。クルセイダーズの連中であれば、ここに来ることはできないと思っていたのに!」
「俺の身内だからな。クルセイダーズとは関係がないし、かといって梁山泊の五覇全てが手を貸してくれるわけでもない。消去法で可能性を消していったら、あの人以外いないってわけだよ。」
「元の流派とあなたは敵対しているという情報だったのに……。」
確かに敵対に近い状況なのは間違いない。五覇の一人に執着されていたので襲撃されたりもした。しかも、それは最近の話だ。その情報がどこからか入っていたのだろう。それが誤解されて梁山泊には俺の味方が一切いないと伝わっていたのかもしれない。これはある意味、ティンロンに感謝しないといけないな。あの事件がなければ、ヘイフゥもマークされていたに違いない。俺に降りかかった災難がプラスに転じるとは誰が予測できただろうか?
「グガァッ!!!」
「うわっ!? ブレンダンが復帰した!? 思ったよりも速い!」
「気を付けろ! その男は兜で理性を奪われているから狂暴だぞ!」
「狂暴……。元から狂暴だったけど、とうとう人間味まで奪われちまったのか……。」
横からの不意な攻撃により気を失っていたと思われたが、あっさりと起き上がってきた。よく見ればこの前の兜とは違うものを着けている。似てはいるが顔面を覆うパーツが追加されているようだ。確かにこんな知性すら感じさせないほど狂暴なヤツではなかったはず。それが……こんなに殺気だけを漂わせた戦闘マシーンみたいな状態になるなんて……。
「やってしまいなさい、ブレンダン! その男はあなたなら余裕で倒せるはずです!」
「グゴアッ!!!」
シャルルはブレンダンに指示を送っている。元々、上下間系ですらなかったはずなのに、あの兜のせいで無理矢理従わされているようだ。だったら、あの兜を破壊するまでだ。そのためには一人で戦った方がいいかもしれない。タンブルなら兜を破壊した隙に殺すところまで行ってしまう恐れがある。ここは……俺の苦手なあの男の相手を任せるとしよう。
「ここは俺に任せてくれ! そっちはシャルルの方を頼む。」
「何を言うんだ! 二人なら余裕で倒せるだろ!」
「お前は調子が悪そうだし、コイツとは約束というか挑戦状を叩き込まれてるから一対一でやり合いたいんだ。」
「こんな状況でそんなこと言う?」
「アイツとの対決がこれっきりになっちまったら、後悔するかもしれない。だからここで約束の決着をつけるんだ!」
タンブルは肩を竦めつつも俺の意向を尊重してくれるようだ。それに、ブレンダンの方も何かニヤリと笑ったような気配がした。仮面で目しか見えないが、そんな気がした。そして俺に狙いを定めて猛然と向かってきた。タンブルには目もくれずに、俺だけを見ている様だった。




