第193話 前にも似た状況があったような……?
「多勢に無勢と思っているようだが、それは認識を間違えている。むしろ逆なのだということを思い知らせてやろう!」
「何をするって言うんだ!」
(ブゥゥゥン!!!!!)
スレイブは不可解なことを言った。奴はたった一人だというのに形勢逆転するとか言い出したのだ。決して虚勢を張っているという訳でもなく余裕の表情で言っているので、ハッタリではないと思う。何か転移魔法とかを使って味方を呼び寄せるとか、先に死んだゴドルフィン達を復活させるとかが有力な所か? それともご本人登場! ……とかもあり得るかもしれない。カラクリだしな。
(バババババババッ!!!!!)
「ああっ!? 奴の姿が分裂した!?」
「惑わされるな! これは雷電の魔力によって作られた電影だ!」
「それはある意味正解とも言えるが、間違ってもいる。この”憎しみの野”の中では全ての電影が私と同等の力を手に入れた事になるのだ!」
何が起きたかと思えば、現れたのはスレイブの分身体だった。カラクリの姿が軍勢となって現れたとも言える。とにかく多数なのだ! 最初からその場にいたとも思えるほどに忽然と姿を現したのだ。俺はこの光景に既視感を覚えていた。前にも似たような真似をした奴がいた様な……? 誰だったっけ? なんか遙か昔のこと様に思えるのでハッキリ思い出せない。
「これが私の秘技”憎しみのワルキューレ”だ! 軍勢など従えなくとも、自身の電影がその代わりとなるのだ!!」
「えぇ~? それじゃ、ゴドルフィン達の立場がないじゃない?」
「奴ら配下はまた別だ。奴らはいずれ名を上げ出世し、私と肩を並べる存在になり得た存在だ。分身とは違う。」
「ほー? 意外と部下思いじゃないか? 見殺しにした割りには……。」
「褒めたのかと思えば一言多いぞ? 言っておくが、奴らを信頼していた故、名誉を尊重した故に手を貸さなかったに過ぎん。我々ギャロ様配下は名誉を第一と考えているのだ。誇りの高さは魔王軍一を自負している!」
なんか魔族っていうのは残虐非道、傍若無人を地でいく連中だと思っていたが、違うのもいるんだな、魔王軍は一枚岩ではないとは聞くけど、その陣営ごとに気質が違うのかもしれない。
羊や蛇みたいな陰湿な奴らがいたかと思えば、タンブルや猿みたいにからっとしたタイプもいる。この馬の魔王の配下達はなんだか騎士団みたいなノリなんだろうな。それはそうとして大変な事になってしまったな? どう対処する?
「多勢に無勢であろうとやることは同じ! バーニング・イレイザー!!」
(バシュウウウン!!!!!)
「おおっ! さすがグレート! 多くの敵をなぎ倒したぞ!」
グレートは有無を言わさず、いきなり勇者の豪撃をスレイブの軍勢に向けて放った。灼熱の衝撃波は次々と敵をなぎ倒して消滅させていった。させていったはずだが……何事もなかったかのように元通りの風景に戻ってしまった! なぎ倒された軍勢がそっくりそのまま元の隊列を再現して出現したのだ! 効かなかった? いや、それとも効いたけどすぐに再生できただけなのか?
「そんな! グレートの攻撃が効かないなんて!」
「いや、効いていないのではない。確かに手応えは感じた。すぐさま再生したと言うべきだろうな。」
「フフフ! その通り! 我が分身達はいくらでも現れる。何人倒されようが、無尽蔵に現れ敵を殲滅するまで戦いを止めないのだ!!」
「なんてこった! これじゃキリがないよ!」
「落ち着け、若者よ。これはあくまで奴の術中に嵌まっただけに過ぎん。必ず突破口があるはずだ。」
「そう簡単にいくものか! あっという間に蹴散らしてくれる!!」
多人数となったスレイブが一斉に襲いかかってきた。それを見たグレートが真っ先に立ち向かい再び勇者の豪撃を放って迎撃をする。それでも、気休めにしかならず軍勢は復活し、グレートに襲いかかっている。俺とウィンダムも援護しようと攻撃を加えるが、一向に減らない敵に取り囲まれてしまった。これではやられるのも時間の問題だ!
「ロア! 思い出すのじゃ! ノウザン・ウェルで金剛石の王を打ち倒した時の事を!」
「金剛石の王……? そうか! 思い出したぞ! 似た状況だったな、あの時も!」
何か既視感を感じると思って引っ掛かっていたら、あの時と同じだ! 特殊な異空間に閉じ込められ、金剛石の王の大群やダイヤ竜を相手にしたんだったな。あの時は奴の空間その物を奥義で破壊して事なきを得たが、今回も同じ手段で切り抜けられるか? 出来そうだからこそ、サヨちゃんが助言してくれたのだ。やるしかない!
「とっておきの奥義を食らわせてやる……、」
(ズンッ!!!)
「うわっ!?」
「先程、槍を消滅させた奇怪な剣術を使うのであろう? そう簡単に使わせてなるものか!」
奥義を使うための構えを取ったとき、黒い閃光によって義手を貫かれてしまった! 奴の槍が深々と突き刺さり、右腕を動かす事が出来なくなってしまったのだ。魔法その物を破壊する事を警戒され、瞬時にそれを封じられた。あの時、金剛石の王は俺を舐めていたからなんとかなったが、スレイブはそう簡単に倒させてくれなそうだな……。




