第115話 自動で走るものだと思ってました!
「え? これって、自動で走るんじゃないんだ?」
無理を言ってなんとか俺も出場できるチャンスを掴んだ。しかし、レースの詳細やら、車体が実際に走る姿については全く知らないままなのだ。自分ではまだ試せないが、イツキがレースの勘を取り戻すために練習すると言うので見せてもらうことになった。しかし、ここで以外な事実が発覚したのだった!
「アンタ、まさか、これが自動で走るとでも思っていたのか?」
「いやー、形は違ってても、一応ゴーレムの一種なんでしょ? だったら、車体自体が勝手に走ってくれるものだと……、」
イツキが車体に乗り込む際、乗るための鞍?とも言える部分を展開させた。幌というかカバー自体が二重構造になっていたようで、全体を開けると、内部構造が丸見えになり、その一段上に鞍の設置されている部分が存在していたのだ! 上にもうひとつの幌が付いていたのだ! カバーの上に跨がったりするのかと思ってたのでビックリした!
「バカやろう。他のチームは知らんが、おやっさんとこのは馬みたいに制御してやらんとまともに走れないんだぞ? 加速、減速、向きの転換、あらゆる動きの制御をする必要があるんだ!」
「馬より難しくない、それ?」
「だから、おやっさんはアンタに確認してたんだぞ!」
馬のように制御してやる必要があるらしい! しかも船のような操舵の要素もあるとか! 「よーそろー!」とかいいながら爆走せにゃならんのか? しかし、馬にさえ乗れない俺にうまいこと制御できるのだろうか? また、馬の時みたいに強引に外に弾き出されるとかは嫌よ? まーでも、そんな機能が付いてるなら自分で走れるやろ、って話だ。
「まあ、俺が制御できなくとも、他の同乗者がやれればいいだろ?」
「やれれば、ってアンタ、誰をチームメイトにするつもりだ? もともと、3人までとはいっても、他に人員がいないだろ?」
「うーむ、俺と……ウィンダムか? あーでも、俺とおんなじで未経験者だな……?」
「そら見ろ! メンバーの当てがないくせに出ようとするからそうなるんだ!」
「まあ、なんかあったときは自分らで走るから!」
「マラソンとかトライアスロンじゃねーんだよ!」
あと一人を担うのは間違いなくアイツだったが、こういうときに限って不在だったことを思い出してしまった! タニシがいないのだ! 大抵はタニシさえいてくれれば、俺の心の平穏は保たれるのだが……。残念ながら、ウィンダムとの勇者一号・二号コンビでの出場を余儀なくされることになりそうだな……。
「くそう! タニシさえいれば! タニシがいたらなんとかなったのに!」
「あんなヘタレが何の役に立つんだよ?」
「お前にタニシの何がわかるって言うんだ! ちょっとエロが過ぎて女子にセクハラしたりするとことか、ちょっとピンチになったらお漏らしてしまうとことか……お前はなんも知らんくせに!」
「褒めるどころか、軽くディスってるじゃねえか……。」
タニシのことを思い出したら、いつもお約束のお笑いシーンばっかりが思い浮かんでしまった。タニシとの思い出と言えばそういうのばっかりだったからだ。最近は離れ離れになってしまうことが多いので、つい楽しかった時のことを思い出してしまった。あの日々はもう帰ってこないのだろうか? エルとも離れ離れだし……。
「タニの事だったら、私の方が誰よりも知ってるんだからね!」
「シジミちゃん!」
「そういえば、アンタは姉だったな。弟のことを悪く言われて腹が立ったか?」
「タニの事は勇者さんに私が謝らないといけないよね。弟が迷惑をかけてしまったわ。」
「迷惑だなんて、滅相もない!」
タニシの事が話題に上がったら身内であるシジミちゃんが話に入ってきた。ある意味悪口みたいになってたから怒られるのかと思いきや、反対に謝られる事態に……。姉から見たらあの弟について色々思うところがあるのだろう。とはいえ、謝られるのもなんか悪い気がする。なんとかここは取り繕わないと……。
「このままだと皆さんにご迷惑をかけてばっかりだから……、」
「いやいや、そんなに気を遣わなくてもいいよ!」
「せめて、タニの代役を勤めようと思うの!」
「えっ!? もしかして、代わりにセクハラとかしたりするポジションに……?」
「んなわけあるか!!」
気を遣わせまいと思っていたら、代役を勤めると言い始めたのだ! まさかの言動に俺はビックリだ! 代役なんて……セクハラとかおも……いや、それは女の子なのに失礼か。見た目はそっくりなので違和感は無さそうだが、性格的にコメディリリーフなんて勤まるのか? 我がパーティーのお笑い担当なんて出来るのか? なんて思ってたら、イツキに突っ込まれたのである。じゃあ、どうするの?
「私がレースで”オリッツォンテ号”の制御を担当させてもらってもいいかしら?」
「え!? 制御役を!? 出来んの?」
「お嬢がレースに出場するだと!?」
なんと、難航していた制御役をシジミちゃんが買って出てくれると進言してくれたのだ! しかし、乗れるのか? 経営者としての腕はあるみたいだが、競技的なものに出場をしたことがあるのだろうか? もしかしたら馬術とかの経験はあるのかもしれないが、危険なレースに参加しても大丈夫なんだろうか?




