第114話 精神論でどうにかなるんですかね?
「あの~、親方? これって使わせて貰っても問題ないすか?」
前段階に作られたモノが保管庫で死蔵されている……コレを見た俺は閃いた! コレ使えば、俺もレースに出場出来るんじゃね? そう思い立ったが吉日、さっそく親方に声をかけてみたのだ。このまま、出場出来ずに見ているだけでは心のモヤモヤが溜まってしまうだけだ。それぐらいならいっその事、ダメ押しで交渉してみようと思ったのだ。
「コイツをどうするつもりだ、お前さん?」
「まさか、レースに出るってんじゃないだろうな?」
「その通り! レースに出る! これで!」
「マジで言ってんのかよ……。」
ダメとは言われていないが、何故か使って良いと即答もしてくれなかった。なんか渋られている様な気がしなくもない。しかも、イツキだけではなく、親方まで。親方はどうするか聞いてきただけで何か考え込むようなそぶりを見せている。なにか問題があるんだろうか? 2チームで出ることに問題でもあったりするんだろうか?
「何か問題でも? 同じ陣営から2チーム出たらダメなんか?」
「いいや。ただ大抵は2チーム分もカラクリの開発が出来ないってだけだ。一つに絞って開発して性能を上げた方が効率的だと、みんな思っている。」
「これで出ようってか? 止めとけよ。この車体じゃ勝負にならんと思うぜ?」
「なんで? 旧型ってだけで、別に極端に違うわけじゃないだろ?」
「コイツには欠陥があるんだよ。そのせいで負けたんだ。」
「な、なんだとぉー!?」
2チーム出ることには問題はないが、車体に問題がある事が判明した。見た目は似ているのに勝負にならないだと? 一体どんな欠陥があるというのか? しかも過去にコレが原因で負けたって言うのか? 過去に何があったのか気になるところだ。その欠陥をカバーできればなんとか出場出来るのではないかと、わずかな希望に賭けてみたい!
「だ、だが断る!」
「は? 何言ってんだ? 出ても確実に負けると、今言ったろうが?」
「その欠陥をカバーしてみせる! ……勇気と情熱で!」
勇者の武器と言えば、勇気だ! それと情熱というスパイスも追加して! それで無理くりでも押し通してみせるさ! 「渡るなら、端をを渡ろう、ホトトギス」と昔のエラい人も言ってるじゃないか? 渡れなくても、鳴かせて見せたり、待ってたりすれば、自ずと道は開けるものだ、ホトトギス! ……なんか、間違ってたかな?
「何寝言を言ってやがる? 頭膿んでんのか? 勇気とか情熱じゃどうにもなんねえんだよ!」
「じゃあ、愛も追加で!」
「飲み屋の注文じゃねえんだから! そんな精神論でどうにかなる問題じゃねえんだって言ってんの!」
「こんなに悲しいのなら、愛などいらぬ、って事? 昔、負けたから?」
「だから! 精神論は関係ないって言ってんの、俺は!!」
ますますイツキはヒートアップするばかりだった。俺がおちょくり倒すからいけないんだが、コイツの煽り耐性の低さにも問題があると思います。ファルちゃんと似たり寄ったりだと思っていたが、コイツはやはり肉体派。感情表現が豊かなこと。ファルはいつまでも理屈で俺を詰めてくるからなぁ。
「精神論か。いいじゃないか。」
「オイオイ、どうした? おやっさんまで?」
「勇気とか情熱を武器にするってのは、案外悪くないかもな?」
「冗談だろ……? おやっさん、気は確かか?」
「おっ? おっ? 親方も行ける口っすか?」
イツキがキレ散らかす一方で、親方が意外にも俺の精神論に乗ってきた! いったいどういう心づもりなんだろう? 昔のレースで敗退したという旧型の車体で勝つためのプランでも思い付いたのだろうか? しかも精神論で? なんか精神力を動力に変換する装置でも所有しているのだろうか?
「イツキ、俺は精神論だけで旧型の欠陥を補うとは一言も言ってないぞ。あくまで欠陥をカバーするための”秘策”を用いるのに精神論が必要になるってことを言いてぇんだ。」
「”秘策”ってなんだ? 旧型の性能不足を補えるモノがあるっていうのかよ?」
「元は本命の”インペラトール号”に使う予定だったが、”オリッツォンテ号”に実装するのも悪くないって思えてな。」
「あるのか、改造プランが?」
なんと改造すれば参加できるスペックになるかもしれないなんて話になってきた! なんか強化した部品とかが存在してるのだろうか? 毎年出場するから、いつもレース用のカラクリは開発進化していてもおかしくない。都合上、時間が足りない、間に合わないとかで実装できなかったモノがあるってことなのか?
「だがよ? 実装できなかった理由は調整の時間が足りなかったからなんだ。だから、実装すれば間違いなくその車体はとんでもないじゃじゃ馬性能になる。乗り手の身の保証は確実になくなるぜ?」
「それに乗るためには勇気と情熱が必要になると……?」
「そういうことだ。覚悟があるってんなら、”オリッツォンテ号”を改造してやってもいいぞ?」
早く走るために更にハイパワーな動力源を導入するってことなのか? 載せれば間違いなく制御は難しくなると……。制御を誤れば、車体自体が大破しかねない程のパワーを持っているのかもしれない。とんでもない話だが、この話に乗るしかない。俺が無理を言って参加するって言ったのだ。ここで引き下がる選択枝なんてないのだ。




