第109話 爆発の十秒前
「ば、爆発するぅ!?」
「俺に任せろ! 霽月八刃!!」
(シュン!!)
メタル猫の突然の脱出劇に続いて、本体自爆機能の作動! 一転して突然の危機にみんな慌てふためいている。確かにこんな密閉された屋内で爆発したら被害が大きくなる。ここは落ち着いて、義手から剣を取り出し、爆発が機能しない様に八刃で一閃した。そこで爆発のカウントも停止した。残されたメタル猫のボディはこれで機能停止したはずだ。
「これで大丈夫だ。爆発はしないと思う。」
「お前さん、一体何をしたんだ?」
「ああ、これは爆発の原因になる物だけを斬ったんだ。」
「斬っただと? 剣を振ったというのに、対象は何も斬れていない……。理解しがたい現象だな。」
爆発を阻止したが、メタル猫のボディには一つも傷が付いていない。その事を不思議に思ったのか、親方はじっくりと見て確認している。この中では俺の技の情報を唯一知らない人間なので当然の事だった。
普段からこの技の事を知っている仲間内だけでやってたから、俺はその事の異常性を忘れてしまっていたと言えるのかもしれない。馴れという物は怖いもんだな。そんなことを考えているうちに親方は早速、メタル猫の分解に取りかかっていた。
「速攻でバラすとは物好きだな、おやっさん。」
「当たり前だろ。つい、未知の物品を見ちまったら、詳細を調べたくなるのが職人の性ってもんよ。」
「まあ、敵勢力のスパイなんだし、正体の手掛かりを探るには必要な事だもんね。」
分解に興味があるのは親方だけではなかった。シジミちゃんも意外と興味津々で分解の様子を見ていた。最初はどうやってバラすのかさえ、素人目にはわからないのだったが、何やら小さな釘の様な留め金を外している。
先のとがった工具で留め金を回して次々と何個も外していく。留め金をよく見てみると、先っちょが螺旋状になっているのがわかった。なるほど、この形が外れるのを防いでいるのだ。こんな凝った物を発明した人間は相当頭が良いに違いない。
「ネジは全部外せたからここからがバラしの本番だな。」
「うわ! なんか蓋みたいにガワが外れた!」
「思った通り、新型ゴーレムと同じ動作方式だな。魔力コアでエネルギー供給を受けているタイプの。」
「中身って、こんなことになっていたのか……。」
中身はもっとカラクリな感じで複雑に歯車とかが噛み合っている物を想像していたが、そういうのではなかった。なんと言うか、細い管みたいなのが複雑に絡み合ったり束ねられているのが一杯詰まっていた。その中心には円筒状の物体と真っ二つになった水晶の様な物が収められてる。これがいわゆる魔力コアと呼ばれるものなのだろう。
「コアが真っ二つになってやがる。これはお前さんの仕業だな?」
「ああ。そうだと思う。なにかエネルギーの様な物の気配がしたからそれだけを斬った。前に戦ったゴーレムも同じように自爆しようとしたことを思い出してね。同じ対処をした。」
「外装を透過してか? とんでもないヤツだな。物理法則を超越してやがる。こんなゴーレムよりもお前さんの所作の方がよっぽど奇妙だよ。」
ゴーレムとは何度も学院でやりあった。大抵のヤツは不利になると相手共々自爆で爆散させようとしてくる傾向があった。自分のエネルギー源を暴走させれば爆発が起きるようになっているらしいのだ。要はそれを機能停止に追い込めば止める事ができるので、最終手段をとってきたときはコアの破壊を優先させるようにしている。
「なあ、おやっさん? これを作った張本人は誰なのか検討がついてるんじゃないか?」
「なんのことだ? わしは知らん。」
「へ? 親方のお知り合いの仕業? まあ、でも、そうなるよな。わざわざ偵察に来て宣戦布告までしてくれたんだから、相当なライバル意識を持っている、と?」
こんなにも挑戦的な態度をとっているんだし、敵対しているんだから、敵対派罰の誰かが送ってきたと考えるべきだろう。多分、その人物も何らかの技術者だろうから、この町に住んでいる人間ならおおよその特定は出来てもおかしくはない。
だが、親方はその正体に関してだんまりを決め込んでしまった。中身を見たのもその確信を得るための行為だったのかもしれない。特定の人物しか扱えない技術が仕込まれているみたいな……?
「アイツか? 犯人は? どおりで姿を見なかったワケだ。」
「うるさいぞ。アイツのことはどうだっていいだろう。」
「アイツって誰? 説明してよ、二人とも!」
なんか、親方とイツキだけがその正体に気付いている様な感じだった。しかし、よほどのタブー事項なのかハッキリとは明言しようとしなかった。もしかすると、昔ここにいた従業員だったりするのかも? だとすれば裏切り者ということになる。親方からすれば恩知らずの弟子の事など思い出したくもないのだろう。そういう話は辛いからな。
「相手が誰だろうと、わしらに対抗意識を燃やしているのに違いはない。だったら全力で最善を尽くすまでだ。それが技術者のやるべきことだ。」
「何があったんだよ、おやっさん! 俺のいない間にアイツと何があったんだよ!」
親方はイツキの問いに答えることなく背中を向けて部屋を出ていった。うなだれ、イラつきを見せるイツキを見ながら俺たちはオロオロすることしか出来なかった。過去にここにいた誰か、その正体はわからずじまいだったが、何か複雑な事情があったのだろう事を思わせる。真相を聞きたいのは山々だったが、しばらく様子を見てイツキにでも聞いてみることにしよう……。




