ある鍛冶師の始まり
このゲームを始めてしばらくたった。鍛冶師になりたくて始めてスキル制ではないこのゲームのシビアさから、鍛冶師になるのは簡単ではないと思っていたのだが存外うまくいっている。
それは俺の種族のおかげだ。ランダムで決定したんだが、俺の種族っていうのがプルートドワーフっていうドワーフの上位存在である種族なんだ。キャラクリをするときの補助NPCみたいなやつにどんな種族なのか聞いてみたら、地下の鉱物資源の扱いにとても長けた種族だって言ってた。要するに鍛冶をやりたい俺にとっておあつらえ向きな種族ってわけだ。
鍛冶をするために一か八か鍛冶師に自分の種族を伝えて鍛冶をやらせくれって言ったんだが、それだけで二つ返事っで了承してくれた。
俺が降り立った街がドワーフたちの国の街っていうのも幸いしてんだろうが、すべてがおれを味方しているみたいだぜ。
そんなこんなで鍛冶をすることを歓迎されて、鍛冶場を一つ借りて鍛冶をやっているんだがこれがなかなかうまくいかない。
ドワーフたちに教えを請うてみたものの、そんなこと畏れ多いなんていって教えてくれないので自力でどうにかするしかない。幸いドワーフたちの鍛冶風景を見せてはくれるのだが、見るだけで簡単にできれば苦労なんてしない。
そんなわけで手探りで剣を打つ毎日だ。
ただやはりずっと剣を打ってもなかなか結果に結びつかないんじゃあ、嫌になるだけだ。もちろんそんな簡単なことではないことは承知の上でやっているんだが、それでも心に来るんだ。
てなわけで今日は息抜きに鉱山に来てみた。鉱山で石を掘るなんて下っ端のやることらしいが、俺は鉱山資源の扱いに長けた種族だからな。金属を打つだけじゃなくて金属を掘るのもうまかったりしないかなあなんてことを考えながら来てみたわけだ。それに自分で掘ってみることで何かつかめるかもしれないしな。
他の採掘に来ているドワーフに話を聞きながら黙々とつるはしを振っていく。レアな種族だけあって潜在能力も高いのでかなり身体能力も高い。だからつるはしくらい今なら軽々振ることができる。
この鉱山は鉄や鉄に魔素が浸透してできる魔鉄ていう金属が取れるらしい。ごくごくまれにミスリルっていう魔法金属も採れるらしいが、まず出ないし出てもごく少量らしい。
そうしてつるはしを振ってしばらく鉄鉱石をそこそこの量と魔鉄鉱石を少しとることができた。
そして次は、これを実際に製錬するところを見に行ってみよう。
製錬するところもじっくりと見てみたが特に何かを感じたり何かをつかんだりした感覚はなかった。それでもまあいい経験にもいい息抜きにもなったぜ。
また数か月の間ひたすら鉄を打ち続ける。そしておれが鍛冶場を借りている親方が魔力を使った特殊な打ち方を親方の弟子に見せるのに混ぜてもらえる機会があった。
それをみたが普通に鉄を打つのと違い、鉄がだんだんといろが変わっていきその性質のようなものが変わっていくのがわかった。
魔力にこんな性質を金属に付加させたいという強い意志を乗せて鉄を打つたびに、その意志の乗った魔力を伝えるらしい。魔力は自分の意思を具現させたりものにその意思を付加させたりする力があるそうだ。
自分の鍛冶場に戻って先ほどの景色を思い出しながら自分の意思を自分の叩く金属に伝えるようにして打つ。そうしてしばらくして自分の中の何かが金槌を通して叩くたびに鉄に伝わっていくのを感覚的に感じてくる。
そうするとみるみると自分の作りたい形に成形されていく。
ああ、こうすればよかったのかと感嘆するが自分の中の魔力であろう何かがどんどんと鉄に移り消費されていくのを感じる。それでもぎりぎりまで打ち、今の感覚を忘れることのないように鉄を叩き続けた。
___ハアッ___ハアッー___
かなりついていた体力もかなり消費してしまい息も荒くなっている。
ただあの感覚を忘れてしまうのが怖いので、次は魔力なしで鉄を打つ。魔力ありでできても魔力を使わずにできなければ意味はない。こういうのは絶対に基礎をおろそかにしてはいけないものなんだ。
こうしてまた鉄を打ってどうにか、今までより何段階かは成長できた気がした。ずっと足踏みをしていたにも関わらず、突然こんな機会が得られてかつてなく興奮している。
_____ああ、鍛冶やってて良かった
これからも金属を打ち続けて世界で一番と文句なしに言える鍛冶師になってやる!
プルートドワーフ
ドワーフの上位種
今は絶滅してしまっておりドワーフの中で伝説の存在になっている。
鉱物資源の扱いに富んでおり、かなり器用なため鍛冶含め様々な生産において大きくその力を発揮する。
人族と比べると低身長なドワーフと違い身長は高い。
土属性や火属性の魔力との親和性が高く、土や火を扱う魔法も得意である。
 




