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初投稿です。よろしくお願いします。

 生まれたときから私はいらない子だった。

 王弟と愛し合っていながら、王に無理矢理娶られた母。仲を引き裂かれたことに耐えきれなかった母と王弟は、陰謀で王を殺した。しかし、母の腹には既に王の子が宿ってしまっていた。望まれない結婚の末に出来た傷。それが私だ。

 王位継承権を持つ男児では無かったことが幸いし、殺されることはなかった。表向きは病弱で外には出られないと噂を流したらしい。広大な王家の敷地の外れに建てた小屋に幽閉され、いずれ外交の駒にと必要最低限の教育と食料を与えられて育った。文字の読み書きや身の回りのことが一通り出来るようになると、人との関わりも最低限になった。当然、両親の顔は記憶にない。

 死の危険が無かっただけ、幸運だと思うべきなのかもしれない。だが、誰にも存在を認められず、何もないかのように振る舞われ続けることは、死んでいるのと同然だと思った。私は幽霊だ。誰にも見えないが、確かにそこにいた。


 ある時、食料を運んできた者たちが噂しているのが聞こえた。曰く、魔王が山向こうの海の国を滅ぼしたらしい。明日は我が身と、近隣諸国はピリピリしているようだ。

 少し羨ましいと思った。この国が滅びてしまったら、私も本当に死ねるだろうか。幽霊でいなくてすむだろうか。


 それから数日後のこと。私に与えられた部屋の結界が解かれる音がした。記憶にある中では、初めてのことだ。この結界は、私に物心が付き、身の回り世話が自分で出来るようになってから張られた。生物以外なら結界をすり抜けることができるので、今までこの結界が補強されることはあっても解かれたことはない。

 しかも、そんな日に限って私は体調が悪かった。もしかしたら先日用意された水と食料に、何か混ぜられていたのかもしれない。ついに殺されるのだろうか。それなら歓迎だ。

 足音が近付いてきて、扉が開いた。


「……薬は効いているようね」


 かん高い女の声だった。やはり薬が盛られていたのか。

 体全体が重く顔を持ち上げるのも億劫だ。簡素なベッドに横たわったまま視線だけ声がした方へ送る。

 派手な赤色のドレスに見を包んだ女が、扇で顔半分を隠しながら立っていた。


「よく聞きなさい。国王陛下からおまえに役目が与えられたわ。魔王への生贄となるのよ。この国を救う大切なお役目だもの。もちろん嬉しいわよね?」


 ああ嫌だ。散々この国に囚われてきたのに、命すら自分で使うことが許されないなんて。でも、間違いなく自分へ向けて言葉が発せられている事実をどこかで喜んでしまっている自分がいた。この女は、私を見てくれている。その事実が悔しい。


「確かに伝えたわ。……ああ、これでやっと厄介物の処分ができるのね。その点は魔王に感謝しなくては」


 その台詞でようやく気が付いた。

 この女は私の母親だ。

 女は言うべきことが済んだのか、足早に去っていった。それと入れ替わるようにお仕着せを着た女達がぞろぞろと5人入ってきて、ベッドに突っ伏した私を持ち上げた。驚きのあまり言葉も出せない。女達は無言で服を脱がせ、どこからか持ってきた湯で、私の隅々をゴシゴシと洗った。指の先から髪の毛の一本まで磨かれた。清潔にはなったのだろうが、他人に身体を触られるのはどうにも慣れない。洗浄が終わり、次は飾り付けに入るらしい。今まで触ったこともない肌触りのとても良い下着を着せられ、上等な青色のドレスを着せられた。息をつく暇もなく、顔に化粧が施される。

 この部屋に鏡はないので、自分の姿を確認することはできないが、それなりに見られる姿になっていることだろう。

 仕上げにシンプルなデザインのヒールが付いた靴を履かされた。ドレスに合わせたのか、群青色のきれいな靴だ。しかし、こんなヒールが付いていれば走って逃げることなんてできないだろう。足首に回された靴のストラップが、まるで足枷のように感じた。


 用意が全て終わった後、馬車に詰め込まれた。使者としての役目を任命された男は、向いに座ってずっと嫌味を言っていた。御者とともに、然るべき場所に私を捨てたらさっさと居なくなるんだろう。格子の嵌った小さな窓から景色を見ていると、馬車はどんどんと森の奥へ進んでいるようだ。


 私は、これから魔王に差し出されるらしい。

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