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生存と精神
猛烈な吹雪の中でも両手の中のペンギン達の姿ははっきり映る。狂いまくる雪は一切映さず、生物が放つ波長のみを瞳が捉え、それらは光るひもがペンギンの姿を描いてはいても、伸びたり縮んだりする不思議な光景だった。目に見えない感情を可視化しているのだろうか、ひもはぎざぎざのペンギンとなったり、縮み過ぎたペンギンとなったり、子どもが描く芸術作品を鑑賞させられているようだった。しかし、それは視界の彼方にはっきりと描かれていく。この巨大なペンギンの群れはほかにもあるが、それ以外の生き物は光のひもでつくられなかった。過酷な環境で生きていくのはペンギン達しかいないのだ。皆背中を摩り合ったり、かわるがわる、真ん中から外側に移動して、温め交代している。
「このペンギン達を両手で温め、見送ったら、次の群れに会いにいこう。それにしても、彼方で捉えたペンギンのひもはなんだか、すべて刺々しいな。震えているぎざぎざの形とは違うし、角でも生えているのか? いや、しかしペンギンを描いてはいる。すまない。係長、もう少ししたら、群れから旅立つ。君たちは寒さに強いな。いや、弱さに優しい。人間そのものだな」
ノベルアップと小説家になろうに同時投稿




