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エルフって

 目が覚めると知らない天井が見える。ああ俺は今、異世界にいるんだっけ。夕べのショックが祟って、気分はハッキリと悪い。二度も告白したのに、いずれも本人に伝わっていないとか、どんな仕打ちだよホント。


 そういや昨日の事でルシェを救ったと思うんだけど、謎の声からの反応がない。これでクリアーって事なら、また他の女の子を救いに違う世界に飛ばれてしまうんだろうか。そう考えると怖い。ルシェと離れてしまうのを恐れている自分がいる。まだ何も言ってこないって事は、救う相手がルシェではないのか、それともまだ救った事になっていないのか、そのどちらかだろう。とりあえず今は考えるのをやめよう。ルシェとはまだまだ一緒にいたい。


 支度を整えて部屋を出ると、昨日夕食をいただいたテーブルには、朝食の準備が進んでいるようで、ルシェがせっせと料理の入った皿を運んでいる。ちょうど目が合った。挨拶しとこう。


 「おはよう」


 「おはよう日詩。昨日はちゃんと眠れた?」


 「見ての通り、あまり」


 「そっか。おじいちゃんが用事があるって言ってたから、ご飯を食べたら行ってみましょ。それが終わったら休むといいわ」


 「分かった」


 いやあ、やっぱり可愛いなルシェ。よく見ると前掛けのような物をしている。エプロンなのかな?その姿も似合っててすごくいい。それにしても、この想いを伝えられるのはいつになるんだろ。ハアと一つため息が出た。


 ミュールさんとも挨拶を終え、三人そろったところで朝食。ミュールさんはすごく機嫌がいいようで、とにかくニコニコしている。こっちの顔を見ると、その笑顔がニコニコからニヤニヤに変わってる!絶対昨日の事思い出してるだろ!そんなミュールさんを見てルシェが声を掛ける。


 「お母さん、なんか今朝から随分と機嫌良くない?」


 「ふふ、いいことがあったからよ」


 ああもう!俺がルシェの事好きだってのはバレてるからなあ・・・こっち見るのは勘弁して下さい。恥ずかしいです、とっても。


 「なになに?」


 聞かないで!


 「内緒よ」


 ハアとまたため息が出た。針の(むしろ)だな。そんな感じで摂った食事は何を食べたか、どんな味だったか分からない。そんなこんなで食事が終わると、ルシェが声を掛けてきた。


 「そういえば見た目がどうこう言ってたわね。うちのお父さんので良かったら貸すわよ」


 「それは助かる。一人だけ浮いてる感じがするもんなあ、この格好だと。ありがたく着させていただきます」


 ルシェの用意してくれた民族衣装に袖を通す。色はやはり緑色で、袖は七分くらいかな。胴回りはそれなりにピッタリとしていて、あまり余裕はないみたいだ。


 「春夏兼用ってところね、それは。少し小さいかしら?」


 「いや、ピッタリしてるけど、元の格好よりは動きやすくていいよ」


 「なかなか似合ってるじゃない。これでお揃いね」


 そう言われると何だか嬉しい。あまりお洒落とは言えないけど。ともかくこれで目立ちはしないはずだ。


 長老の家に行くと昨日は姿を見せていなかった、ルシェのおばあちゃんに当たる人がいた。って言っても中年くらいにしか見えない。長老のおじいちゃんでさえ、それくらいにしか見えないもんな。エルフはまだまだ奥が深い。


 「よく来たね。今日は君たちに、ちょっと殺し合いをして貰います」


 「はあ!?」


 何言い出すんだこのじいさん!


 「日詩日詩、いつものおじいちゃんの悪ふざけだから、大丈夫よ」と、ルシェは言うが


 「え?いつもの?いつもこうなのか?」


 「そうねえ。半分くらいは」


 多いだろ半分は。めんどくせえじいさんだな。昨日はちょっといい人かなって思ったのに。いい人認定した俺の心遣いを返せ。いくらルシェのおじいちゃんだからって、俺の中ではもう面倒なじいさんで決定だな。

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