エピローグ
長期の休みを取って、兄様がバルロット国にやってきた。
それはもう、熱烈な再会となった。
兄様が落ち着く頃には、私はもう、ぐったりしていた。
「フェリシア、この腕輪をはめてごらん」
兄様が取り出したのは、金細工に6色の宝石が花のように配置された綺麗で繊細な腕輪。
見るからに高そう。
そっと左の手首にはめてみる。
途端に何かが戻ってくる気配。
外に出ていた私の一部………これはもしかして。
「嗚呼、フェリシア。良かった。本当に…」
兄様が泣きながら私の頭を撫でている。
久しぶりの、柔らかく頭全体を撫でられる感覚に、獣耳が無い事を実感する。
「この腕輪は?」
「それはね、女神の加護の腕輪で、アミエット国の初代国王がつけていたとされる、国宝なんだ」
「こ、国宝っ?」
「そう。王家の者しか使用を禁ずるとか言われてて、借りるの苦労したんだよ」
「か、借りたんですかっ?」
「まぁ、色々とあってね。父様と私が協力すれば、あの国で出来ない事は少ないよ
リチャード殿下が留守してるしね。まぁ、この国に来てるってのは腹が立つけど」
さらっと何言ってるんでしょう、この兄は。
「王家は、というかリチャード殿下はフェリシアの事全く諦めてなくてね。
婚約者候補も、持続中。
あくまでその腕輪も、婚約者候補だから貸し出ししてるだけで、他の候補者候補とリチャード殿下が婚約したら没収。
ずっとしていたければ、婚約して結婚して王妃になれとの事だ」
「つつしんで腕輪はお返しします。
私、順調に貴族以外の生き方も学んでおりますので」
ちょっと一晩じゃ語りつくせないほど、学院でも色々あるけど、おおむね私の生活は順調だ。
友達も出来た。お気に入りの店も出来た。喧嘩相手も出来た。
アミエット国と違って自分の足で動く事が多いので、体力もついた。
決して追いかけられてからの逃げ足で鍛えられたわけではない。踵の低い靴は素晴らしい。
「ふふ。さすがフェリシアだね。心配はしていないけど、将来の選択肢は多いほうがいいだろう?
私も、腕輪の結果を見たから、また研究を進める事が出来るよ。
女神の加護レベルの問題だなんて、やり応え十分。
ディーン・ユトロの名前にかけて、解明してみせるよ、可愛いフェリシアのためにもね」
兄様、この1年で色気と凄みが増しました?
その笑顔、周りに見せないほうがいいと思いますよ?
兄様が私の腕輪を外す。何かが溢れてくる。
「腕輪をした時、外した時で気づいた事は?」
「そうですね…何か…魔法力が一番近いと思うのですが、腕輪をすると、溢れていた何かが戻ってくる感覚があります。
逆に、外すと何かが溢れる。それが獣相に形成されるのでしょうか?」
「腕輪に籠められた女神の加護は状態異常無効だけではなく、余分な魔法力発散の効果や、使用魔法の強化、結界の生成など、複数の効果を
矛盾しないバランスで練り上げている、さすが女神としか言えないくらい複雑で難解な加護なんだ。
どの効果で獣相が収まっているのか、まだわからない」
「王家のみの使用という制限は後付けなのですか?」
「勇者が同じ物をつけてたって説が有力でね。王家の血筋で限定されてはいないだろうと」
ふむふむ。
「そしてね、この腕輪が何故フェリシアに効くと思ったかというと、
勇者の伝説の中に、同じ状況の記述があったからなんだ」
「初耳です」
「勇者がまだ、自分の運命に気づいていない頃、魔王に呪いをかけられてしまい、それを女神の加護で緩和したとか……
呪いは一つでは無く複合で、その中のひとつが獣相の呪いらしい」
「解呪ではなくて緩和ですか?」
「ああ。理由は記されて無くてね。推測しかできない。
よほど呪いが強力だったのか、解呪したく無かったのか…」
今、何かひっかかる言葉が。
「解呪したくない?」
「だって、きっと、可愛かったんだろう? 勇者が」
「はい?」
「わかる気がするんだ。獣耳と獣尻尾をつけたくなった魔王と、解呪を惜しんだ女神」
兄様、そこ、わかっちゃいけないと思います。
「可愛いフェリシア。そのままでも可愛いけど、獣耳や獣尻尾があると、さらに可愛い。
だけど、耳や尻尾は可愛すぎて、他のやつらに見せるのは惜しい。
じゃあ、自分の前でだけ獣耳でいて欲しいって思うのは、自然だろう?」
兄様、それ、自然じゃないと思います。
兄様の愛が痛い。どうしよう。以前は悪ノリの雰囲気を残していたのに、今は本気にしか聞こえない。
母様、呪いを移す方法って見つかったのでしょうか?
不本意ながら、兄様に移してしまってもいいでしょうか?
自分に獣耳が生えたら、きっと冷静になってくれるはず。
お願い兄様。落ち着いて。
*****
モフモフは至高。見てるだけで癒されて、触れば至福。私も同感だ。
でも、モフモフは危険。
人族である私に、本来不必要な獣相をつけた『何か』に私は問いたい。
『ケモミミは、必要ですか?』
中途半端に見えますが終わりです。
フェリシアがケモミミと向き合う話なので。
相変わらず展開が急になってしまう;;
補足をここに書くのは本文で説明不足を補えない実力不足で大変申し訳ない。
王子ルート。
王子は生まれてからずっと、命の危険にさらされてて、大事な物をつくると、大事な物を殺されたり壊されたりしてました。
なので自分が強くなるまでは大事な物は作らないと決意。好きな物こそ貶す傾向があります。
警戒心が強くて、でも理性から表面では平静を装って逃げず、でも内面では王子を嫌い、かつモフモフ、ていうフェリシアは、王子の好みのどストライクです。めっさ狙われてます。
学院王道恋愛物語。トゥルーエンドは王妃様っ! 他各種エンド。
兄ルート。
1話とエピローグの暴走からお察しの通り、シスコンでヤンデレです。
フェリシアに獣相が出たことが自分のせいかもってのと(身体強化魔法実験してたのは兄。でも実験対象は自分だった)
兄である自分がなんとかしなきゃって責任感と(こんだけ面倒な問題は自分しか解決できないだろうという自尊心もある)
可愛すぎて独占しちゃいたいのと(元々シスコン。ケモミミでさらにこじらせた)等で、ぐるぐる。
監禁も快楽落ち狙うのもアリだと考えてる。
R15タグはこの人のせい。各種エンドあります。甘甘も。ただ、バッドの種類が多くて選択肢間違えると即やばい。
同級生ルート。
学院で仲良くなった文系貴族様と平和なゴールイン。
平民ルート。
迫ってくる方々が色々と大変なので逃げ出します。仕事に生きるエンドや喧嘩相手とくっつくエンド。
このルートからしか隠しキャラ(父の話に出てきた商人)は落とせない。難易度高し。年の差上等。
というマルチエンディング。(え) フェリシアの明日は貴方が決めるのです。(投げっぱなしジャーマン?)
なんでフェリシアにケモミミが生えたのかは明らかになりません。
強いて言えば『作者』のせいなのでしょう。ごめんねフェリシア。大好きだよ。
もふもふ大好物です。できれば耳尻尾性感帯設定じゃないほうが好みだな。普通に可愛がりたい。
恋人、伴侶じゃなきゃ触っちゃいけないだなんて、それなんて拷問ですか(涙)
あ。ちなみにねずみ派ですw げっ歯類最高っ!(異論は認める)
タイトルとあらすじと本文の温度差がひどい事に、投稿してから気づいた(手遅れ)
ここまで読んでいただいて、ありがとうございました^^