第9話
20XX.11.8. 8:00
フェリペ王国
Bartender A.F base 駐機場
彼女らとの再びの飛行訓練の為、駐機している自分の機体へと歩いていく。
歩いている最中、左肩を叩かれる。
左を振り返ると誰も居なく、右からレナが駆け足で追い抜いていく。
「ふふっ、背中ががら空きだよ、先生」
彼女は俺に悪戯を仕掛けた後、前を歩いていたライナの隣を歩く。
「今日の訓練は? 模擬戦?」
「いいえ、今回は高高度への上昇訓練よ」
「なんだ、つまんない。……やるけどね」
「レナ、あんた最近、機嫌いいじゃない? 好きな人でも出来た?」
「ち、違うって」
そんな2人の姿を見ながらのろのろと歩いていると、もう2人が横に現れた。
「ね、先生。レナの奴の距離が近くて戸惑ってる?」
「……」
「溜息で返事しないでよ。でも、あの子がこんなに元気になって、大人と接するなんて本当に久しぶりなの」
「そうです。元々は明るい性格だから、どうかこのままいてほしくて」
「先生、お願い」
彼女たちは縋るような目つきで俺を見あげる。
いろいろとうるさかったり、おどおどとしている2人だが。
「優しい子たちだ。今どきあまり見ない」
「そ、そんな、私なんて……!」「ちょ、いきなり褒めても何も出ないけど!」
もう、口から勝手に言葉が出ることは気にしないことにした。
なんとも、複雑に絡んだことになってしまったな。
「先生、何しているの? 早く、飛ぼうよ」
早速、機体の所へとたどり着いたレナが振り返り、微笑んだ。
◇
リストニア首都
20XX.11.8. 23:00
Air force Headquarters
「ホンプスキー閣下に敬礼!」
空軍司令本部の地下指揮所、軍政となったリストニアのトップ、ウィリアム・ホンプスキー総司令が現れると、詰め掛けた将校たちは直立不動の敬礼を行った。
比較的若い将校が多く、彼らの表情には情熱と、司令に絶対的な忠誠心を誓っていた。
「座りたまえ。 君たちのその忠実な態度に私は感銘を覚える。 遂に、我らの待ち望んだ日が来る」
彼は雄弁に語り出す。
「無知な国民たちは政治家の無能を我々に責任転嫁し、学のない不良軍人たちは軍の威光を地に落とす真似をした。
諸君だけだ。リストニア軍人と自称して良い者は」
幾つかの将兵が胸に手を添える。
胸元には銀・金色の鷹を象ったバッジが光っていた。
「胸のバッジをみたまえ。私が選りすぐったパイロット達に送る名誉だ。
諸君らは一番槍となる。
栄光の先駆けとなり、英雄となるのだ」
彼が大型モニターを叩くと、フェリペ王国の航空図が現れた。
「我らリストニアには、正義を遂行する義務と権利がある。次こそ、時代遅れの王国に死を。そして、繁栄を栄えあるリストニアに
フェリペ王国を我らの手に」
彼の静かな言葉に、青年将校たちは熱狂し、雄たけびが上がる。
そんな中でも、冷静に司令の言葉を聞いていた彼女に、司令は歩みよる。
「君には期待している。戦闘機連隊長エミリー・アウアー」
「はい、ホンプスキー司令。リストニアに栄光あれ」
彼女の胸元には、白く輝くプラチナのバッジがつけられていた。
「栄えあるリストニア、万歳!」「栄えあるリストニア、万歳!」「栄えあるリストニア、万歳!」




