66.『拝み屋のおばあちゃんと僕』
『拝み屋のおばあちゃんと僕』
五十嵐大 作
双葉社 出版
あらすじ
母親が突然いなくなり、青森で「拝み屋」をしている祖母と暮らすことになった小学六年生の蒼が主人公の物語。
感想
「拝み屋」と聞くと、不思議な力で事件を解決する物語を想像するかもしれません。
しかし、この作品のおばあちゃんは霊能力ではなく、豊富な人生経験と鋭い観察力で人の悩みや事件の真相を見抜いていきます。
その姿はまるで名探偵のようで、とても魅力的でした。
事件は派手なトリックよりも人の心や家族の事情に焦点を当てたものが多く、謎が解けるたびに温かい気持ちになります。
青森の風景や人々の暮らしも丁寧に描かれていて、その土地の空気を感じながら読むことができました。
特に印象に残ったのは祖母と蒼が少しずつ本当の家族になっていく過程です。
お互いを思いやる姿に心が温かくなり、読み終えた後は優しい余韻が残りました。
推しポイント
1.相手を決めつけず、その人の事情まで考えようとする姿勢
主人公の蒼は母親が突然いなくなったことで大きな不安や寂しさを抱えています。
最初は祖母との暮らしにも戸惑いますが、さまざまな出来事を経験する中で人の表面だけでは分からない思いや事情があることを学び、少しずつ成長していきます。
その変化がとても自然で共感できました。
2.犯人探しよりも、人を救うことを優先する姿勢
一方、おばあちゃんは「拝み屋」と呼ばれていますが、霊能力に頼るのではなく、相手の表情や言葉、周囲の状況をよく観察し、「どうしてこの人はこんな行動をしたのか」と、その背景にある気持ちを大切にします。
3.事件解決で終わりにしない
この作品では悪人に見える人物でも、事情を知ると単純に責められないケースが多く描かれています。
そのため、事件を解決して終わりではなく、「人にはそれぞれ事情がある」というメッセージが心に残ります。
私が特に印象に残ったのは、おばあちゃんが「人を信じること」と「相手をよく見ること」の大切さを、行動で示しているところです。
その姿を見て蒼も少しずつ成長していくため、ミステリーでありながら祖母と孫の絆を描いた心温まる物語としても楽しめる作品だと感じました。
こんな人におすすめ
1.心温まるヒューマンドラマが好きな人
2.派手なトリックより、人間関係や登場人物の心情を楽しみたい人
3.地方の風景や温かい暮らしが描かれた作品が好きな人
逆に合わない人
1.本格ミステリーのような複雑なトリックやどんでん返しを期待する人
2.スピード感のあるサスペンスやアクションを求める人
3.「拝み屋」という設定から、オカルトや霊能力が活躍する物語を期待している人
この作品は、「謎を解くこと」以上に「人を理解すること」や「家族の絆」を大切に描いた物語です。
そのためミステリーとしてだけでなく、心温まる人間ドラマを楽しみたい方に特におすすめできる一冊です。
まとめ
『拝み屋のおばあちゃんと僕』は、
母親が突然いなくなり、青森で「拝み屋」をしている祖母と暮らすことになった小学六年生・蒼の物語です。
「拝み屋」と聞くと霊能力を思い浮かべますが、おばあちゃんが事件を解決するのは不思議な力ではなく、豊富な人生経験と鋭い観察力。
その姿はまるで名探偵のようでとても魅力的でした。
事件は派手なトリックではなく、人の心や家族の事情に寄り添ったものが中心です。
青森の美しい風景や温かな人々の暮らしも丁寧に描かれ、優しい雰囲気に包まれています。
特に印象に残ったのは、相手を決めつけず、その人の事情を理解しようとする姿勢です。
おばあちゃんは犯人を追い詰めるのではなく、人を救うことを大切にし、事件も解決して終わりではなく、それぞれの思いに寄り添います。
蒼もそんな祖母と過ごす中で少しずつ成長し、本当の家族になっていく姿に心が温かくなりました。
人を信じることと思いやりの大切さを教えてくれる、優しい余韻が残る一冊です。




