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47.『算法少女』


江戸時代の数学をテーマにした児童文学と聞くと、ちょっと難しそうに感じるかもしれません。


でも、算法少女は、そのイメージをいい意味で裏切ってくれる作品でした。


みなさんこんにちは。

今回は遠藤寛子さんの「算法少女」を紹介します。


この作品は、江戸時代の“和算”

つまり日本独自の数学文化を題材にした物語です。


ただの歴史小説でもなく、単なる勉強小説でもありません。


「学びたい」という気持ちと、時代の壁に立ち向かう少女の成長物語なんです。


まず物語の主人公は、あきという少女。


江戸時代、女の子が学問を本格的に学ぶ機会はほとんどありませんでした。


特に数学なんて、男の学問という空気が強かった時代です。


でも、あきは数字や計算に強い興味を持っている。


父親が数学好きだったこともあり、自然と“算法”の世界に惹かれていきます。


この導入がまずすごくいいんですよね。


現代だと「好きな勉強をする」って当たり前に感じますけど、当時はそれだけで大きな挑戦だった。


だから、あきが問題を解きたい、もっと知りたいと思うだけで、もう戦いが始まっているんです。


この作品で面白いのは、“数学”がちゃんとドラマになっているところです。


普通、数学って答えだけ見れば終わりじゃないですか。


でもこの作品では、「なぜその答えになるのか」を考える過程に、人間ドラマがある。


たとえば、難問を前にして悩み続けるシーン。


あきはすぐに天才的な答えを出せるわけじゃない。


何度も失敗して、考えて、またやり直す。


その姿がすごくリアルなんです。


しかも、江戸時代の数学者たちって現代みたいに電卓もネットもない。


全部、自分の頭と紙だけで考える。


だから問題を解いた時の達成感がとんでもなく大きい。


読んでいるこちらまで、「解けた!」という快感を共有できるんですよね。


そして、この作品の大きなテーマは「才能」よりも「学び続ける情熱」だと思います。


あきは確かに賢い。


でも、それ以上に“知りたい気持ち”が強い。


周囲から「女なのに算法なんて」と言われても、簡単には諦めない。


ここが本当に胸を打ちます。


現代でも、「向いてないかも」とか、「自分には無理かも」って思う瞬間はありますよね。


でも、この作品は

“好きという気持ちは、時代や立場を超える力になる”

ということを静かに伝えてくれる。


そこがすごく魅力的でした。


あと個人的に印象的だったのは、父親との関係です。


父は、娘の才能を認めつつも時代の常識との間で揺れている。


自由に学ばせたい気持ちはある。


でも、世間の目もある。


この葛藤がリアルなんですよ。


単純に「理解ある理想の父親」として描かれていない。


江戸時代という社会の中で、どう娘を守るのか悩んでいる。


だからこそ、あきが学び続ける姿がより際立つんです。


さらに面白いのが、“和算文化”そのもの。


現代人からすると、数学って学校のテストのイメージが強いですよね。


でも江戸時代では数学の問題を神社に奉納したり、難問を出し合ったり、一種の文化として広がっていた。


この作品を読むと、「数学ってこんなにワクワクするものだったんだ」と感じられます。


数字そのものより、“考える楽しさ”が伝わってくるんです。

そして終盤。


あきは、自分の力だけではなく人とのつながりの中で成長していきます。


ここがこの作品の優しいところなんですよね。


孤独な天才の物語ではなく、教えてくれる人、支えてくれる人、一緒に考える人がいる。


学問って、本来こういうものなんだなと思わされます。


知識は競争だけじゃなく、受け継がれていくものなんだ、と。


読後感としては、とにかく爽やかでした。


派手な展開があるわけではない。


でも、一人の少女が「学びたい」という気持ちを貫く姿に、すごく力をもらえる。


しかも、児童文学だから文章も読みやすい。


それなのに内容はかなり深い。


大人が読むと、「学ぶって何だろう」と改めて考えさせられる作品でした。


個人的には、今の時代だからこそ読まれるべき作品だと思います。


すぐ答えが検索できる時代にじっくり考える面白さを教えてくれる。


そして、“知りたい”という純粋な気持ちの強さを思い出させてくれる。


数学が苦手な人でも楽しめるし、逆に数学好きならさらに刺さる。


歴史小説としても、成長物語としても、とても完成度の高い作品でした。





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