第一章8『逃げて、の意味』
彼女のこぶしに殴られ、倒れた獣の鳴ておい声を皮切りに、おびただしい数の獣が押し寄せ始めた。
見かけは全部同じだ、攻撃方法もほとんどが類似して、しかも学習能力もない。
前の奴が飛びかかったとたん彼女にやられてしまうのに、後ろのやつはなんの警戒もなかった。
・・・なんか俺、言っていることを見ると強い人みたいが、こんな観察がでこるのも今戦っている彼女のおかげ、俺は戦いとは遠い人だ。
そもそもとんでもない数に圧倒され、ひざの力が抜けて何もできない。
不思議に、獣たちが狙っているのは髪を靡かせながら美しく踊っているような彼女のことだけ。
彼女の言うとおりだった。俺に関心を示している獣たちは一頭もいない。
彼女は信じがたいほど早すぎる。あれは本当に人間か?まるで戦いのために生まれた人みたい。
素手でもそんなに自信満々したのはわけがあるからだっだのか。
舞踊手のように美しいが、その仕草には残酷さが込められている。
気持ち悪いくらい。
でも、あの獣たちなんかおかしい。
確かに倒すと、頭の数が減少しなければならないのが定説だが全然減ってない。
一体どこから来てるんだあいつら。
一撃に奴らを処理していた彼女も、力が抜けたようだ。
獣たちが徐々に起きる回数が多くなっている。
このままじゃ、ダメだ。
結果が目にはっきりと見える。
俺が何か役に立てられるのが…。
彼女のように戦うのは無理だ。 むしろ邪魔になるだけ。
それでもここでは俺が何かしなければならない。 じゃないとこの状況、打破できない。
彼女の疲れた息音が心を掻くようだ。
ちょっと、あいつ何するんだ。
彼女を見ていた俺の目に付いた獣一匹。
草藪の中に隠れている。
さらに、機を見ている。
あいつ、知っている。 彼女が力が抜けたということを。
『おい、あぶ...』
急に聞こえてくる俺の声が意外だったのだろうか。 彼女は瞬間、獣から俺のほうに目を向けた。
月が美しく輝く夜だった。 そしてその月は彼女の姿を照らした。
彼女と俺の目が合った瞬間。 彼女の荒い息音がさらに大きく聞こえてきた。
そしてその息音は、他の存在の息音によって飲み込まれて消えてしまった。
戦闘態勢がしばらくくずされたその瞬間、あいつはその瞬間を逃さなかった。
当初からこれが目的だったのだ。 彼女が警戒を緩める時を狙うこと。
彼女を照らす月光を仕切りながら、あいつは彼女に飛びかかった。
すまない、リコ。
血まではどうか洗ったらいいかなと思ったのに。
これは・・・。
どこかで、瞬く間に飛んでいったガラス瓶が、獣の顔に直撃した。
やつの顔に着くやいなや、粉々になったガラス瓶、奴の行動を制限することにかなり効果的だった。
彼女も、そのような状況を気付かないほど馬鹿ではなかい。
すぐに体を回して、陰で自分を襲撃しようとして失敗した獣に早く近づき、こぶしを飛ばした。
・・・俺があんな人と話をしたなんて。
その獣の息がつくすことを確認した後、彼女はまた俺に目を向けた。
目をあんなに大きく開ける? あんなに驚くことまであるか。
「逃げて...」
まだか。
あんなに疲れているのに、いつまで一人でするつもり?
その際、背中の草やぶがおかしいほど揺れているという事をどうして気付かなかったんだろう。
多分彼女が言った逃げてという言葉の意味は、俺が思った意味とは違うようだ。
そうだろ、攻撃した瞬間から敵になるよね?
それをよく知ってるのに、おれはなぜ・・・。
獣の息づかいが聞こえたかと思うと、すぐに痛みが肩で感じられた。
見るたびに感じたが、獣の鋭く、巨大な歯は、簡単に人を肉片に作られる屠殺用刃のようだった。
まともにあれで殴られたら、一気に息が切られるかもしれないが。
他の所としたら、その苦痛はまさにある程度と決められない。
言い換えれば死ぬほど痛い。
とんでもない苦痛としたらが口から悲鳴も出ない。
悲鳴をあげようしても、その苦痛に口が自然に結ばれるほどだ。
聞くだけで筋肉が凍りついてしまう息音。
俺に近寄ってくる暗い影を、俺は防げない。
俺一人の力だけでは。
これで群れをなして集まった獣たちを後にして彼女が髪をなびかせながら、俺のほうに駆けて来る。
冷たい歯が首に到達しようとする刹那、目の前にいた彼女の足が浮き上がるが思うと、
何回も体を回転させて瞬時に動物に近づき、推進力がついた足で正確に獣のくちばしへ一撃を飛ばす。
彼女はその攻撃にすべての力を全部使ってしまったのか、何もせず、席に座り込んで荒い息を吐いていただけだっだ。
助かったたという安堵感もつかの間、くたびれないか彼女の後で数が減らない動物などがもう一度彼女に向かって近づこうとする。
今度は俺も攻撃対象であるはずだ。
しかし、彼女は疲れたせいか、力をすべて使い切ってしまったせいか、しばらく気を失ったように何の動きもしないまま、その場にじっと座っている。
獣が歯を剥き出し、俺たちにやってくる
歯に貫通された肩が動かない。 こんな状況になった以上、彼女を挙げて、逃げる方法しかないのに、腕を動くたびに肌が裂けるような苦痛が体を包み込む。
こんな体の状態で彼女を手にして走る行為は絶対無理だ。
腕をつかんで振り回してみても何の反応がない彼女、
気を失った、すぐに起きられない。
いつ獣たちが攻撃してくるかも知れない、最悪だ。
このままじゃ、二人全部獣の歯にずたずたに裂けてしまうことが明らかな状況。
確かに獣たちが攻撃優先順位にするのは、今は気を失ってして何もしないこの緑髪。 実際、俺がやつらに攻撃する前までは、俺のことを無視した。
彼女を置いて俺一人ででも逃げたら。
可能性は十分にある。
頭を下げるとまだ気がつかなかったまま気絶状態の彼女の顔が見えた。
『・・・逃げて』
と言った彼女の顔がまだ目にちらちらする。
俺を攻撃していた獣を殺してしたその安心に満ちたその顔が、忘れられない。
逃げて?そんなに自信があったらこんな目には…。
もちろん、彼女がこんなになった最も大きな理由は俺を守ってくれるためである。
一体なぜ俺を救った、という言葉はこんな気持ちか。
何の返事もない彼女。
体には小さな怪我と誰のものか分からない血がいっぱだっだ。
そんなにひどくけがをしたわけでもない。
無事に帰るさえすれば、彼女には何の問題もない。
「お前は、俺にいくら惨めを見にするつもりなんだ。」
俺は確かに彼女にいい感情を持っているのではないんだ。
もし普通に、過ぎ去って見たくらいだったら。 俺はこの女性の美しい美貌に惚れたかもしれない。 いや惚れた。 それで声をかけただろう。
しかし、今の俺が、そうでない理由は、あまりにも複雑で、何ともいえない様々な理由からだった。
俺はそのいくつかの理由の理由を。
聞きたかった。
そう。
ここから逃げられる時は今だけだ。