疾走と失踪
叶人くんがいない間の元の世界のお話てす
水瀬 絵梨子は走っていた。走っていた理由にはいろいろある。
まずは母の誕生日を祝うために我が家を飾り付けしようとしていたためだ。百均でレースやらクラッカー等のパーティーグッズをかい、母が帰る5時までに全て仕上げなければならなかった。
それと予約していたケーキ屋にバースデーケーキを取りに行かなければならなかった。前日にやっておきたかったが、サプライズだったのでそれは賢明ではなかった。なので急いで取りに行かなくては。
そして……最後は兄だった。私の兄・水瀬叶人は学校に忘れ物があるとかで行ったきり、なんの音沙汰も無い。あれだけ早く帰って来いと言って置いたのにもう2時間も過ぎている。本当に頭が痛くなってくる。何を道草しているのだろうか、こんな時に限って。それともーーー
「お、叶人の妹じゃねーの?」
後ろから不意に声をかけられた。この声は……
振り返ってみるとバカがいた。
「なんだ、風宮先輩ですか」
「なんだはねーだろ、なんだは」
この不良もどきは風宮静葉。兄にくっつくアホ虫である。入学当初から何かと兄と絡んでいる。兄も影響を受けてこうならないか気が気でなかった。別に悪いことをしている訳ではないのだが、私はこの先輩があまり好きになれなかった。 どうせこの人に言いくるめられて一緒にーーー
「あの、私の兄は…?」
いなかった。てっきりこの人と一緒なのかと思っていたが。
「やー、叶人なら一時間以上前に家帰るって言って別れたぜー」
帰っ……た……?いや、それならもう家に着いていてもいいと思う。私は先輩を訝しげにみる。
「嘘ついているなら怒りますよ?」
「嘘なんかついてねーっての。だいたいこんなスマートに嘘つけねーしな」
「それもそうですね」
「おーい、そこで納得するなー?けっこう失礼なこと言ったぞお前ー?」
何か反論しているがどうでもいい。
「ありがとうございました。では失礼します」
私は一応先輩なので礼を言って立ち去る。後ろからまた何か言われたが相手にしてもいられない。兄は帰ったらしいが、まだ家に来ないとはどういうことなのだろう。まさか、何かトラブルにでも巻きこまれたのでは……そういった考えが頭をよぎる。
「まあ、そんな訳ないか」
と頭を横に降って追い出す。どうせ兄のことだ、暑い暑いと言って日陰で休んでいるうちにウトウトして、なんてことも有り得る。
私は兄のいつも使う通学路を通ってみる。いろいろな建物を通り過ぎ、橋に出た。したを流れる川は前に降った雨の影響で少し流れが激しくなっているらしい。その橋も駆け抜けようとしたとき、脇に見覚えのある鞄を見つける。とっさにブレーキをかけタタタタッと少し前に進んでからきちんと止まる。
その鞄は……兄のものだった。毎日見ているから見間違うはずがない。
「でも、どうしてこんな所に……あっ!」
ハッとして橋の手すりにかかり、川を上から見下ろす。まさか、飛びこんだのでは?そう予測する。理由は分からないが、それで荷物だけをここにのこして……当然だが兄の姿は全く見えなかった。
「ま、まさか、お、溺れた……?」
そう考えると足が崩れ、へたり込む。あの兄が溺れて、死んだ?受け入れられなくて頭が真っ白になっていく。
プルル、プルルーーー
横から急に携帯の着信音がなってびっくりする。そちらをみると、鞄の中からしてくる。私はその鞄を開けて確認してみる。学校のテキストやプリント、筆箱に埋もれていた黒いスマートフォンが見つかる。画面が全体的に割れている。ここに置いた時の衝撃だろうか。手に持って画面を付ける。そして左にスクロールされてパスワードの画面に移るが、私は兄がパスワードを打つところを偶然見たことがあるのですぐにわかる。それを入力し、ホームの画面が出てくる。が、勝手にメールアプリが開いてきて少し驚く。この着信音だったのだろうか。
「新着メール、一件……」
その表示された項目を押してみる。そこに文章が書かれているようだったが、画面の破損のせいでところどころしか読めない。内容は……
【GA×E STAR××
来訪×一名・水×叶×
××より×跡報告を×始しま×
ーーー
「なに、これ……?」
私は意味が分からずにじっと画面を見つめた。スマホの時計はかなり見にくくなっていたが、午後三時過ぎを表わしていたーーー
あまり頻繁に書けないからこのサイドストーリーは多分短いと思うてす。




