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720時間の弾丸  作者: 一条一
9/23

混乱

「オタク」が操作しているRQ-11「レイヴン」は、国境から約4kmの上空を旋回してドイツ側に回頭した。ちょうどその頃、真下を通る高速道路を3台の車列が通過して、100mほど遅れてもう1台が後を追っていた。

「オタク」が3台を「レイヴン」のカメラに収めると、「池上」が「100m後方にもう1台だ」と言い、「オタク」がカメラを広角にして4台をPCのモニターに映した。

「全車レンジローバーだ、分かりやすいな、順調に飛ばして来る」と「池上」はライフルスコープを覗きながら言うと、「オタク」は「何台目にブツが乗っているか、フルスモークで分からんな…車高もどれも変わらないし」と困惑顔でつぶやいた。無線でそのことをGSGに伝えると、GSGの隊長は「ヤー」とだけ返信してきた。そのこわばった一言だけで緊張感が高まっているのが手に取る様に分かった。

GSGの立てた作戦は、密輸団の車列が国境を越えドイツに入ったら、1km先のインターからGSGの装甲車3台が躍り出て車線を封じ、反対車線から侵入させたインターポールとGSGの合同チームで挟み撃ちにする計画であった。

ところが、車列が国境の手前1kmでスピードを緩め、ついには500m手前の路肩で止まってしまった。これにはGSGを始めインターポールも慌てたらしく、「池上」達にも聞き取れないぐらいの口調で無線が横行していた。

どうやらGSGの操作している無人機が、十分な高度を保っていなかった為、密輸団に気づかれてしまったのだ。これには「オタク」と「池上」も閉口して鼻で笑ってしまい、「さあ、どうするょ?」と言いながら「池上」はL96に初弾を給弾し、「オタク」は「レイヴン」の高度を落としながら風速の観測に移っていた。慌てたGSG本部は、反対車線のチームをポーランド国境を越えて走らせ、密輸団の車列の後方に付かせようとしたが、密輸団の最後尾を走っていた4台目が止まっている3台を猛スピードで抜き去りながらAK47を反対車線に向かって乱射した。これには反対車線の一般車はパニックに陥り、合同チームは思うように先に進めなくなっていた。GSGはこの事態を自前の無人機映像で確認すると、本隊の装甲車を高速道路の本線を逆走させ応援に向かわせた。しかし、その頃には密輸団の車列も逆走の体制に入っていた。

「池上」は、「GSGの隊長はとっ散らかって俺達を忘れているな。何も言ってきやしない」と半笑いになり、「どうだ?1050m、左からの風5mってとこか?」と言うと、「オタク」が「OKだ、ファイヤ、ファイヤ、ファイヤ…」と言うと同時にL96のトリガーを引いた。初弾は1台目のフロントホイールとタイヤを撃ち抜いた。そして2秒後には次弾がボンネットに着弾してオイルとクーラント液が吹き出した。その後も、まるで録画映像を繰り返し観るかの様に2台目、3台目と「池上」は正確無比に撃ち続けた。

先頭に踊り出た4台目の「乱射車両」は、「池上」が「これでフィニッシュ」と言いながら運転手を撃ち抜き、車は中央分離帯に激突して車内からの乱射は止んだ。車両を撃たれた先の3台は、どれもラプアマグナム弾で撃たれた衝撃とエンジンルーム内で跳弾したせいで、車内のエアバッグが全て作動し、車内にいた密輸団がマゴマゴしている間にGSG合同チームに囲まれていた。かくして麻薬密輸団は全員逮捕となったが、A2と呼ばれるドイツ・アウトバーンは大混乱になり、そこに事情を知らないポーランド側の警察も加わり更に混乱に拍車がかかっていた。

観測チームの「池上」達は、麻薬密輸団の逮捕を確認すると、さっさと「レイヴン」を回収し撤収していた。


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