音なき銃撃2
池上は銃にマガジンを装着した時すぐに弾を銃に装填していた。今まさにいつでも撃てる状態だ。池上の呼吸は浅くそしてゆっくりと息を吐くと、呼吸を止めた…2秒も経たないうちにトリガーに添えた人差し指と他の指が、「ジワッ」と何かを握るように動いた。その瞬間、池上の後ろから吹いている氷点下の風音に混じり、「パッ!!」っという乾いた銃声がした。(よし…命中。)池上はプロペラ機から出てくる影武者の姿を見ながら呟いた。影武者は、プロペラ機から降り片足を踏み台に乗せた所でハプニングがおきた。本来ならば、踏み台の位置で影武者の頭に着弾するはずだったが、影武者は踏み台の高さを見誤り、膝と腰がガクガクと崩れた。影武者の頭をかすめた銃弾は、滑走路の為に削られた壁に当たり「キーンン」と大きくは無いが、その場にいる人間に聞こえるには十分な音を立てた。滑走路にも氷点下の風は吹いていても分かりやすい銃弾の音。一瞬「エッ?」と顔をした中国兵は「銃撃だ!」と思った時にはすでに池上の放った次弾が影武者の頭に命中していた。一早くパニックに陥ったのは随行していた北朝鮮の下士官の2名だった。下士官の1人は影武者の上に覆いかぶさり、さらなる攻撃から影武者を守ろうとしたが、もう1人の下士官が影武者の首の頸動脈を触ると、ガックリと膝を曲げ正座をする様に座り頭を前に倒しうなだれた。滑走路に聞こえた攻撃の音は弾が飛ぶ「ヒュッ!」っという音と、壁に当たる甲高い音だけだった。中国兵は、影武者が倒れた反対方向に向けて中国版AKをマガジン一つ分撃ったが、弾が無くなると自分がどこに向けて銃撃しているのかも分からず、ただボーと突っ立ってしまった。
池上は、影武者が倒れ下士官がうなだれるのを確認すると、腹ばいのまま後ろに下がりテント横でバイポッド(ライフル銃の前下に付ける二本脚の部品)をたたみ、サプレッサー(この場合、減音用と火花を抑える為のもの)を外し、テントの中で銃を分解しバックに収め、テキパキと撤収作業に没頭し、わずか15分でインドに向けて下山し始めていた。




