第8話
やってみせ、言って聞かせて、させてみせ
ほめてやらねば、人は動かじ
山本 五十六
「ミロ」
∑( °д ( °д ( °д ( °д (°д °;)
野草茶を用意し狼人、鬼娘達にネットの投稿動画を見せる。本日は職人による弓製作風景。
「ななななな!?」
「ダマレ」
動画視聴中、稀人は研修作業計画をたてる。
968 名無しさん
ほうほう
967 マレ
バイトの初日研修の要領だな、うん
968 名無しさん
次スレたてたよ
969 名無しさん
㌧クス
∑( °д ( °д ( °д ( °д (°д °;)
竹、木の切り出し。鋸と鉈の凄さにドン引きの五人。
「ヒク オス ヒク オス ダイジ ヒク ダイジ ヒク」
削り、成形作業
鉋、ノミ、小刀、彫刻刀、金槌、文明の利器に戦慄する五人。
一事が万事、驚きの連続だった。
「ハク ヤル」
「タン ウマイ ヨキ」
5 名無しさん
道具色々もってるな
6 マレ
中学、技術の授業で購入した道具と
若い頃 三年だけ現場職人見習いしてたからね
「キョウ タベル クサ キ トル」
「キョウ カマ ツクル キ モエル スミ デキル スミ トテモ ヨキ」
「コレ ウツワ ツボ ツクル ダイ サギョウ ダイ ロクロ」
「クエ ホシタ カキ ウマイ アマイ」
「タベモノ ホス トテモ ヨキ カラダ ヨロコブ」
「ウツワ ヤク カマ ホシイ タスケテ」
「アリガト アリガト」
和弓作り、時折、他の作業をする日々。時には稀人がニケ達を伴い狼人集落へと赴き、今迄の成果を集落へと還元していく。
集落に造られる陶芸窯と炭焼窯。
「シッパイ」orz
集落に炭が普及し火鉢を利用するようになった。
次はと炬燵を用意したが狭い竪穴住居に入るわけも無く。獣の革や麻布を掛けた炭炬燵、集落の狼人達は野外で使用する。
何故か皆、幸せそうに。
いつの日か集落に家を建てようと稀人は誓う。
寒さ和らいだ頃。弓の生産も一人一本目処がついた。玄関前、各々が作業するなか稀人は指差す。
「アソコ 行きたい 山 山 ノボル」
稀人が指差す先を五人も見る。
五人には見慣れた山、麓は狼人族の狩猟場。
彼等の生活圏である。
標高は、それ程ではないが、今も山頂には薄っすらと雪が残る。
登山をする習慣の無いハク達は顔を見合わせる。
稀人も登った経験無いのだと察し。
「山 ノボル 道具 用意 する 靴 作る 服 用意。」
「エビス様、山に何が?」
「ワカラ 無い タブン 何か有る サガス」
「行って来る ニケ ルス 任せる。」
稀人自前の防寒着をハク達に着せ。
リュック、袋、竹籠を各々が背負う。右手には木の棒を杖がわり。
「エビス様、こちらがいいかと。」
麓まではセンが案内し川沿いの登り易そうな場所へと昼には着く。
皆がペットボトルに清流の水を汲むなか稀人は周囲を観察したのち川面を覗き込んだ。
あるな 砂鉄が
浅い場所、スコップで掘り返し川底の土を調べ一人満足気に頷いた。
「ハク 山の 名前 ハ?」
師にして神に問われハクは首を傾げ仲間へと視線を向けて後。
「山は山っすよ?」
「名前無い カ この山 良い山 神が住む」
「えーと?」
「山の神様?」
「凄いのかな?」
男の言葉に半信半疑のホウ、マク、タン。
「今 名前 ツケル 息吹山 山に 山の神に イノリ ササゲル 息吹山に感謝の イノリ 狼人族の ハンエイ ヲ ネガエ。やるぞ。」
稀人は一礼する。皆も習い。
パンパンと打つ拍手が静寂の森に響く。
二拝二拍手一拝。
この日、この瞬間から、息吹山信仰は始まる。
それは悠久の時を越えて、この名も無かった山を多くの者が愛す事に成る。
騙り神 恵比寿が紡いだ歴史の一幕。
男は歴史を刻む。