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第1部完 第76話 不退転の鳳 慈愛の女神ニケ とこしえなるかな



「全員 黙祷」


ハクの声が一帯に響いた。


海浜町の一画。

並ぶ二つのやしろ

一社は共同墓。

一社は鬼人族が奉る氏神ニケ神社。


口を引き結び涙堪えるハクとセンの横にて今も泣き続けるマクとタン。

鬼人分離派集落の後片付けを終え直接海浜町へ帰還したのは昨日正午過ぎ。

マクとタンは荷台に横たわる変わり果てた友の亡骸に縋りつき泣き喚いた。


本日、午前。

ホウの亡骸は火葬され連合葬がおこなわれた。

アル峡谷防衛隊を除く全ての者が参加し行われる葬儀。


二つの神社横。

大地に一枚の大きな木板がささる。

筆と墨を手に黒衣の男が客人恵比寿として書き込む。


戦没者慰霊碑


 狼・不退転・鳳




狼人族 ホウ

おくりなは 狼・不退転・鳳



「我等の理念理想に殉じ散っていった勇士に此の名を贈る。鳳とは鳳凰。瑞獣、伝説の不死鳥。鳳は雄。凰は雌をあらわす。ホウには此の鳳凰の鳳の名を贈る。」



黒衣の男は天を仰いだ。

雲の無い青空が広がる。



「鳳よ 天高く翔び 舞え いつまでも 此の大地を守護せよ」


 “ピィュゥゥ―――――――――――――”


 青空を鷹が一鳴きし翔け抜けた

   未だ山頂に雪のこる息吹山へ向かって



    誰そ彼 誰そ彼方 第一章 第一部 完

 









〈余話〉


 隊長ハク 副長セン 八軍曹 プラノを前にし

「今回の出兵、砦防衛隊も含め交代にて五日間の休暇を与えてくれ。この間の給与も支給する。此れを有給休暇とする頼んだ。」


各種指示をだしハク、センを連れマク、タンと合流する。

今も泣くマクとタンを重籐弓を抱えたハクが促す。 


いこう、ご挨拶に伺わねばな Brother




「申し訳ございません。私が到らず息子さんを死なせてしまいました。」


「ちがうんす! 親父さん おばさん 俺が、俺が、馬鹿だったんです。」


「義兄のマレの責任は一切ありません。自分とハクが軽挙でし。ホウを死なせたのは自分とハクなんです。」


海浜町、配給住宅。

こぢんまりした木造平屋。

真新しい木造床に額擦りつけるマレ、ハク、センの三人。

三人の後で今も鼻を啜るマクとタン。

五人の対面に座るのは、此の家の住人、ホウの父と母。


両親は息子を喪い泣いた。

泣きながら、


「ハク君 セン君 マク君 タン君、何時もホウと一緒に居てくれて ありがとう。マレ様もみんなも顔上げて。ホウね、あの子ね、いっつもマレがねマレがねって楽しそうに話してくれてたんです。」


泣きながら話す母。

父も堪えきれず泣きながら。


「自慢の息子です。彼奴の最後は聴きました。自分達には出来すぎた息子ですわ。」


涙に濡れた顔を上げハクは両親の前に、そっと重籐弓を置く。


「ホウの形見です。」


息子の自作弓を前に涙零す母。

「何時も持ち歩いてました。マレ様に教えてもらったんだって。」


マレは顔を上げセンも続く。

用意していた紙封筒を両親の前へ。


「此方、連合体から御遺族への見舞金です。僅かではありますが御両親には恩給を五年間支払わせて頂きす。また、御父母様におかれましては働けない御歳になりましたら養護院を御利用ください。連合の政策の一環で御座います。」


頂けないと固辞する両親を説得する(客人恵比寿)


「ホウは息子さんは義務を果たしまた。此方は御父母様が受け取る当然の権利で御座います。何卒お受け取りください。」


今一度床に伏す男に四人の狼も続き伏す。



「最近、夫と話してたんです。あの子も一人前になったって。もう一人子供がいてもいいかなって。養護院などとんでもない。此の頂いた家で暮らしていきます。」


妻の言葉に二度頷き。


「次は、あれほど腕白なのも困りものですな。娘がいい。そう娘、娘ならオウ()。いやいかんな、男勝りに育ちそうで。」


泣きながらホウの父と母は笑った。

義兄弟五人も泣きながら笑った。







 


 天降二年 四月 一日


 狼猫鬼部族連合 分派鬼人集落を滅ぼす

 分派鬼人 死者 百六十二名

 不当なる扱いを受ける

 猫人三名 鬼人七名を救出す


           太陽ノ昇ル国 正史

           編纂改定天降102.4.12





 天降二年 四月 一日


 狼人族 狼ホウ 十七歳(推定)

 分派鬼人族の手にかかり没す

 太陽ノ昇ル連合国 初の戦没殉死者となる

 諡は 狼・不退転・鳳

 勇猛果敢にして義に殉ず

 

      太陽ノ昇ル連合国 副史 人物名鑑

            編纂改定天降102.4.22










此処までお付き合い頂けた読み手様 

ありがとうございます m(_ _)m

第二部も読んで見ようと思われましたら

ブクマ ★ リアクション 感想など頂けたら

幸いです

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