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第58話 廻る 運命の糸車 (6)

 

 「いよ〜ぉ!リョウちゃん、稼いでるかぁ〜」


ローレライは国営交易所に隣接する出来て間もない宿屋兼酒場の扉を勢いよく開いた。

閑散とする一階。酒場カウンターを挟みどんよりとした気配を漂わすロレ国の雇われ店長と従業員の女二人。


「若様、御覧の通りよ。」( ´Д`)=3ハァ


「都合が良い。店主、二日間宿を貸し切りたいのだが構わないか?」


マレの提案に雇われ店長リョウは大喜びで飛びついた。

「ママエちゃん!団体様一行、ご案な〜い。」


唯一の従業員ママエのハーイと元気な返事。一堂を二階の部屋へと案内する。

部屋荷物を置き皆で飲み片手に酒場スペースに寛ぐなか、ローレライが独りブツブツと呟き交易所から戻る。



「あかん。あかんわ。本当に困ったで。」


革袋を両手に抱え独り自分の世界に入り込むベレー帽少女に声を掛ける。

ローレライは顔を上げカウンター前で腰を降ろす男の前に革袋をドサリと置いた。


“ジャラリ”


音を点てる袋、次には袋口が開けられ大量の金貨、銀貨が顔をのぞかせる。

客席一つ、テーブルにて果汁水で咽を潤すサンマルール・プラノはカウンターに置かれた金貨、銀貨がぎっしりと詰まる革袋に目眩を覚える。

商隊の面々は何時もの事と。

ハク、狼人と子供達、リストアスは、その価値が理解できず一度見た後は果汁水を味わう事に意識が向けられた。


「マレの分、バークスはん処と交易所の上がりや。でまあ客居らん訳や。もう商品(陶器、陶磁器)あらへん、商人も次の目的地に向かっとる。」


そうか〜と応じるマレ、しょぼ~んとするローレライ。

マレは眼の前の革袋に無造作に手を入れ一握り、掴んだ貨幣をカウンターに置いた。


「リョウさん、ママエちゃん。夕食少し早いけど皆で騒ぎたいからジャンジャン食事と飲み物お願いしま〜〜すッ!!」


「ああン♡ 太っ腹〜ぁ」

「はい!喜んでぇ〜」


「おっしゃぁぁぁ!Brotherの奢りだ遠慮すんなよおおおお!!!」

「みなぎるぜ!」

「滾るぜ!」

「受けて立つぜ!」

「あざースッ!」

「ヒャッハー!!」

「にーくッ!にーくッ!」

「たまごおおおおおお!」

「ハムとソーセージ、あ、、、チーズもたっぷりでッ!!」


沸き立つ一階の酒場。

張り切りだす宿の者。

歓喜する狼達にマレも連れてきて良かったと微笑する。

「おう、宿の食材全部食い尽くしてやれ」

(*゜∀゜)(*゜∀゜)(*゜∀゜)(*゜∀゜)     ( ´∀`)


 楽しい夕餉、大宴会。

遠慮なく食事に齧り付く狼達。

温かな食事に子供達にも笑みが広がる。

ローレライに水の様なワインの酌をし。


此奴、並のワインだと直ぐ酔って寝るしな。

   ヒック(*゜∀゜) (´・ω・`)

マレは席を立ち皆を労いにまわる。


「ハク、ロロ、サク、シマル、ソテツ、オウン、ラル、カマン、カムラ。」


ハクと八人の狼は名を呼ばれ食事の手を止める。

それだけでは無い。

九人皆が背筋を伸ばし椅子に座る。


「今回の屋内制圧作戦、皆、高い練度だった。満足している見事だった。今後の諸君の活躍にも期待している。今日は充分に食べて充分に寝てくれ。明日はセインに皆を連れて買い出しに出て貰う。ロレ国内に居る間は気を緩めてよし!以上だ。」


“SIR YES SIR”


一斉に返事を返す九人。

マレはニカッと笑む。

男の笑みに緊張糸のが切れた。

初めての外の世界。

初めて少人数の作戦行動。

そして、男の評価の言葉。

八人の狼は泣き出す。

皆、若い。感情の昂り抑えられず泣いた。

ハクは目を閉じ、うんうんと何度も頷く。


 ああ、俺も経験があるな。

 Brotherに誉められた、あの日、あの時。


初めて重籐弓を手にした、あの日を想いだし、八人の仲間を前に白狼の胸は熱くなる。



 ロレ国の面々へ礼を告げ周り、子供達の処へ。

笑顔で皆に告げる。

「明日は皆の服を買いに行こう。今日は好きなだけ食べなさい。」






リストアスは微笑を浮かべ、サンマルールは難しい顔で、男を見続けた。

サンマルール・プラノは男にマレについて考える


 富豪?強力な私兵を抱える金持ち、商人?

しかし、川辺で視た男は髪も顔も泥と染料で汚し

服は返り血に塗れていた。

私兵任せでは無い。

男は、自らも手を汚す。

傭兵か?裏稼業人か?もしや強盗騎士!

しかし、子供達を攫った処で、端金程度にしかなりはしない。

ましてや、、、手を、脚を、眼を。

サンマルールは、理解らない。

理解らない故に、思い切って聞く事にした。

ちびちびと水の様なワインを舐める様に飲む少女に。

「あの、、、」


「あ~どしたん?あーわっちはローレライなローレライ。」


「はい、ローレライ様、その、御主人様の、、、お仕事は、その」


おずおずと尋ねる女、ローレライは、あ~そっか、そっか〜、そりゃ不思議に思うわな〜と、微酔ほろよいながら話しだす。


「女転がすのが巧いボンボンやで。ン〜軍略家で有能な将で政治家か? ンン〜芸術家?職人? ンンン〜たま〜に王族の愛人したりな〜。」


微酔いのローレライの話しに更に困惑を深めるサンマルール。

ローレライは、あ〜と酔っ払いながら続けた。


「本業、本業、、、あ〜そやそや!そやったは!本業は神様らしいでぇ〜。ウケるうぅ」www


( ´∀`)「はぁぁ〜 マレ様凄いのですね~。」


微酔い少女の話しに聴き入っていたリストアスが楽しそうに嬉しそうに感嘆の言葉を、サンマルールは、駄目だ、、、此奴酔ってやがると半ば諦め嘆息した。


('A`)リストアス様、少しは疑ってくださいませ


 一通り皆を周り、黒衣の男が果実水片手にサンマルールとリストアス近付くと椅子を引き二人の対面へと腰を落ち着けた。

微笑するリストアス。

表情を硬くするサンマルール。

男は二人を前に。


「なあ?二人は今後どうしたい?行く当ては在るか?俺は君達を金でどうこうする気は無い。自分達の事は自分達で決めて良いのだ。」


下を向き口を噤む少女、代弁するかの様にサンマルールが。

「私共には帰るべき家も国も、故郷も、もうありません。戦争で負け全てを喪い奴隷として売られて来たのです。」


マレは微酔うローレライに視線を送る。

男の視線に少女もまた察し。


「あ〜よかったら、ロレ国に住むけ?今、うちは景気ええで。職業訓練所用意したし、仕事憶えながらでも何とかなるやろ。」


微酔い少女の言葉に、何を?と思う二人。

ああ、と察しマレが補足する。


「彼女はロレ・ローレライ、このロレ国の第一王女殿下だ。君達が望むならロレ国の民に迎えるそうだ。」


完全なる不意打ち、王女殿下の単語に身を強張らせるサンマルール。


「この国の王女殿下でございましたか。数々の御無礼平にご容赦を改めまして、リストアス・アーミテノールで御座います。ロレ・ローレライ殿下、以後お見知り置きの程。」


隣りから挙がった口上にサンマルールは我に返りリストアスを見た。

そこには胸に手を当て頭を下げるリストアス。

若さに不釣り合いな綺麗な所作に纏う気品。


ああ、この方は今も、、、、

サンマルールは連れの姿に意を決する。


「私くしは、リストアス女王国、近衛隊騎士、サンマルール・プラノ。此方におわされる方こそ、リストアス女王国、第三王女、リストアス・アーミテノール様で御座います。」



(´・ω・`)・・・・・

(`・ω・´)シャキーン 再起動コンマ五秒

(´・ω・`) 折るぜ フラグ! ヤダ面倒事回避


微酔いが冷めるローレライ、やはりかと胸中複雑に。

マレは、只、ふーんと応じた。

何時しかマレとローレライの後で立ち聴きするロレと狼達。

ラミスだけは子供達の面倒を見つつも此方のテーブルの話しに耳を傾ける。


「西方の大国でしたな。」

サウス・サンディはボソりと呟いた。

リストアス女王国、リストアス家。

ローレライ旅商隊が今迄脚を運んだ事がある西方国といえばバレス、イアン商連。

其処から更に西方の国家で()()()

全ては過去、そして近年の事。

レキ、マルトゥスク、バレス、イアン商業連合、東方四か国より頭一つ飛び抜けた西方の大国リストアスは更に西方、海を隔てた大陸国家ラハン神聖帝国に従属する西方三カ国によって滅ぼされたのはつい最近の事。


眼の前の少女は亡国の姫君。

青き血の一族。



「で?二人はどうすんの?」

さした感慨も感情も出す事なくマレはテーブルに金貨入りの小袋を置いた。

“ジャラ”

リストアス、サンマルール、二人の購入金額を超える枚数の金貨が入った小袋を二人の前に置いた


男の態度、対応にサンマルール・プラノは眼の前が発火したかの様にチカリと赤くなる。

椅子から勢いよく立ち上がりテーブルに音を点て両掌を叩きつける。

「貴様ッ! 王女殿下に何たる無礼! 今直ぐに非礼を詫びよッ!!」


「しらんがな」


飄々と告げる男。

ロレの面々も、男は、此の男は、権力、権威に屈する事あるまいと、、、、、思っていた。


「なんで?俺が君達に頭さげるん?無いわぁ〜。俺が真に両の膝を着き頭垂れるのは俺がいた国、日本、、、うん、ZIPANGの皇帝陛下と皇族、その祖先の紡いだ歴史にのみ。」


「は?」

「え?」

「へ?」

「んーマレ、マレの来た国、、、皇帝居らはるん?」


「いらっしゃいます。時に民の苦しみに涙し。時に民の困窮に税を取らず。日々民の安寧に祈り捧げる。二千七百年続く伝統と歴史の前に俺は両膝を着くだろう。そう自ら進んで。永遠とは在るのか?世というのは儚い、実に儚い。お隣の国では国家とは興亡するもの生まれては滅ぶものらしい。こう、こうだな」



國破れて 山河在り

城春にして 草木深し

時に感じては 花にも涙をそそ

別れを恨んでは 鳥にも心を驚かす

烽火 三月に連なり

家書 萬金に抵る

白頭 掻けば更に短く

渾て簪に勝えざらんと欲す


春望 杜甫



「哀しい唄、、、ですね。」

「哀しいな、それでも山は在り続け、河は流れ続ける。それでも人の営みは続いてくんだよ。君も君の人生も続く。哀しみも憎しみも、恩讐を背負い生きてくんだよ。」

生きる。辛い。悲しい。それでも生きる。

生きていかねばならないのだ。

リストアス・アーミテノールは涙を零す。




「俺が来た国は今も永遠に挑戦し二千七百年国が在る俺は権威を否定はしない。それは我が祖が受けたであろう恩が有るからだろうな。結果今俺が在る。万民の為に祈り続けて二千七百年。」

男が何故、祈りにこだわるのか。

男が何故、契約に拘るのか。

男は歴史マニア。

歴史を辿る程に深まる。

天照皇大神と五穀豊穣の契約と祈りは男の思想の源流。


遠き地より流れてきた男。

放蕩する王女レキ・アルウルに嫌悪を抱き。

民の為に駆けずり回る王女ロレ・ローレライに肩入れするのも言うに及ばずであろう。

そして眼前、亡国の王女に同情以上の感情は無く。その権威に膝を折ることも無い。



俯き共に落涙するサンマルール・プラノ。

「お金は頂けません。」

仕えていた王女の言葉、そして椅子脚と床の擦れる音に彼女は顔を上げた。

亡国の姫君は一歩、二歩、そして膝を折る。


「国も民も城も母上、姉上も喪いました。もう帰る故郷も無く非力、非才なる我が身ではありますが。どうかマレ様のお側に侍り仕えさせてくださいませ。貴方こそ神より王権授かりしお方。何時しか天をも掴む者。そう私の始祖がそうであったように。我が君(MY LORD)。」

 

何故であろうか、不思議と確信があった。

眼の前の男こそが私の君主(運命の人)

リストアス・アーミテノールは両膝を床に着き胸の前で両腕を交差させ頭を垂れる。



(´・ω・`)・・・・・・・

(・ω・`)ハク、お前等、こっち見んな

(´・ω・`)・・・・・・・

(´・ω・)ローレ、ロレの皆、こっち見んな

(´・ω・`)サンマ、こっちみんな


当然だと言わんばかりの九人の狼。

期待の視線を向けるローレライ一行。

子供達が遠巻きに見ていた。

マレと視線が合ったサンマルール・プラノは立ち上がり急ぎリストアス・アーミテノールの横へ、そして膝を着く。

「御無礼を!申し訳ありませんでした我が君(MY LORD)。」


「あーえー、私しゃ、君主様?じゃねぇ〜よぉ 子沢山のしがない、神様だぁ〜よぉ。」


マレ、往年のギャグで場をやり過ごそうと、、、


「はい、我が神よ。」


少女リストアス・アーミテノールは顔を上げ微笑んだ。


 あああああああ(;ω;|||`)ああああああああ

       お(´;ω;`)わた


大人と少女の境を揺れる娘が純粋無垢な瞳向ける

赤髪、短髪の美丈夫は決意を瞳に宿す。

九人の狼が木製ジョッキを打ち鳴らし牛乳で乾杯し“おおおおおおおお”と咆哮した。

ローレライと商隊の面々は此の男ならと期待し。


マレ、無理、嫌と言えず。

そう男は男の中身はチキン。

縋る者を振り払えないチキン野郎。


心の中で号泣するマレを放置しローレライが大声で。

「おっしゃぁぁぁ!一件!落着!!皆ぁ〜食べてるかぁぁ飲んでるかぁぁ!無礼講やでぇぇぇぇ!!!」

“おおおおおおおおおおおおおおおおおおッ”



皆が笑顔で飲み食いする。

独りの男を除き。

(´;ω;`)うぐ、ひっく、ひっく

(´;ω;`)確定イベントですかね?回避不可避!?


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