その3
249 本当にあった怖い名無し 2008/03/19(水) ID: 60hVWQ3x0
前の日もそうだし、なんでその日のうちに神社行かなかったの?
危機感足りねーんじゃねーの?
251 本当にあった怖い名無し 2008/03/19(水) ID: iGevxsc90
社務所が開いてなかったとか?
確か結構早く閉まるんじゃなかったか
252 143◆wr4Yp5tLbk 2008/03/19(水) ID: z5QDCdkZ0
>>249
251の言ってるので正解。
父親が電話しまくったんだけど、もう今日のお務めは終わったからって。
後は、変なものに憑かれてるから祓ってくれって言われて、向こうの人も内心困ったっていうのもあるんじゃないかな。
とにかくその日のうちはどこも無理と断られてしまったんで、次の日のお務め中の時間に行くことにした。
254 143◆wr4Yp5tLbk 2008/03/19(水) ID: z5QDCdkZ0
次の日、両親に連れられて近くの神社まで行った。
社務所に行ってお祓いをお願いしたんだけど、そこの神社では前例のないお祓い内容だったんで、神社の人もちょっと困惑した様子だった。
とりあえず禰宜と相談してみますということで、そこで少し待たされることになった(ちなみに禰宜という言葉はこの時初めて知った)。
しばらくすると袴姿の40~50代くらいの男性がやってきて、丁寧に俺たちに挨拶してくれた。
そして、困ったように顔をしかめて、奥歯に物の挟まったような物言いで曰く、
「当神社では、ちょっとそういう形でのお祓いというのは執り行っていないんですけども、え~、厄除けという形でのご祈祷であれば……」
ということだった。
(念の為言っておくけど、一言一句覚えてるわけじゃないよ。確かこんな感じのセリフだったっていうのを書いてる)
家族三人、お祓いの形式がどうこうなんて分からないし、第一、他に頼るものもない。
ほんの気休めでも良いからとにかく安心したいって気持ちでいっぱいだった。
なので、それでも良いからということでお祓いをお願いした。
255 本当にあった怖い名無し 2008/03/19(水) ID: j6AkMbAv0
ぱっと行ってお祓いしてもらえるもんなの?
256 本当にあった怖い名無し 2008/03/19(水) ID: iGevxsc90
神社で一番えらいのは「宮司」で、宮司の補佐役として「禰宜」、その下に「権禰宜」と続くね
そのおっさんが禰宜なのかな?
だとしたら結構偉い人に見てもらえたのかな?
257 本当にあった怖い名無し 2008/03/19(水) ID: iGevxsc90
>>255
お務め中ならいつでもお願いできるよ、個人でやる分には予約とかいらない
他の神事とかと被ったら待たされるけど
258 本当にあった怖い名無し 2008/03/19(水) ID: w8Z4S0qM0
力を持った霊能者なんてほんと少ないよね
私は知り合いにそういう人がたまたまいるけど、どこからどうみても普通のおばちゃんw
かなり見える人らしくて、私の守護霊見てもらったら何代か前のご先祖さまらしい
でも特別強いわけでも無いらしいから、結局自分のことは自分で身を守りなさいと・・・
あとそのおばちゃん曰く、私は割と晩婚になるらしい ソンナコトシリタクナカッタヨ・・・orz
259 143◆wr4Yp5tLbk 2008/03/19(水) ID: z5QDCdkZ0
>>255
その時は見てもらえた
>>256
すまん、わからん。
流れ的には禰宜さんな気もするが、そこまでは確認してない、ってか覚えてない。
でも偉い人風ではあった。
とりあえずこれ以降、その人を神主さんと呼ぶことにする。
お祓いもその神主さんがやってくれることになった。
その時は他に人は居なくて、俺たち三人だけの祈祷になった。
なんか変なタスキみたいなのをかけられて、本殿? に座って祈祷が始まった。
神主さんがおおぬさをばっさばっさ振って、祝詞を奏上するのを頭を垂れてじっと聞いていた。
これで本当にお祓いされるんだろうか?
アイツはこれで俺たち家族から離れてくれるんだろうか?
頼むからこれで居なくなってくれ!
そんな風に俺は切に祈っていた。
だが、俺の願いは無情にも粉々に打ち砕かれることになった。
261 143◆wr4Yp5tLbk 2008/03/19(水) ID: z5QDCdkZ0
バンッ!!
屋根の方から突然大きな音がした。
俺は驚きと恐怖で背骨がバネのように跳ねたよ。
それでも神主さんは気にとめる風でもなく、朗々と祝詞を上げ続けていた。
しかし、続けざまに2、3度、
バン、バン、バンッ!!
と、同じように屋根が叩かれるような騒音が鳴ったところで、流石に気になったようでチラチラと上を見上げていた。
俺はといえば、もう気が気じゃなくって、すでに涙目だった。
思わず両親の顔を見回したんだけど、明らかにおかしな雰囲気が漂い始めたことに二人とも不安の色を隠せないようだった。
それでも父親がそっと「おとなしくしなさい」と言って背中をぽんと叩くので、俺は前を向かざるを得なかった。
その瞬間、またあの生臭い匂いがした。
俺は確信したよ。
絶対アイツがここに居ると。
262 本当にあった怖い名無し 2008/03/19(水) ID: DJFCcNqx0
うわ・・・
263 本当にあった怖い名無し 2008/03/19(水) ID: Nd7A91n/O
追いかけてきたか……
263 本当にあった怖い名無し 2008/03/19(水) ID: A8B3Z0Db0
YABEEEEEEEEEEEEEE
264 本当にあった怖い名無し 2008/03/19(水) ID: r/F85GC80
塩まけ塩
265 本当にあった怖い名無し 2008/03/19(水) ID: w8Z4S0qM0
さっきから家の中でパキパキって音がしててgkbr((((;゜Д゜))))
266 143◆wr4Yp5tLbk 2008/03/19(水) ID: z5QDCdkZ0
怖すぎて何度も何度も涙と鼻水を拭って、それでもなんとか耐えてた。
そのうち神主さんや巫女さんも何かおかしい雰囲気を感じるようになったらしくて、頻りに周りを気にするようになった。
そうしていると屋根を叩く音が、ドタドタとなにかが駆け回るような音に変わった。
生臭さは強さを増して、もうえずきそうなくらい。
気のせいなのか、空気もどんよりと重たく、息苦しさを覚えるほどになった。
耳が詰まったような感じで、神主さんの祝詞の声もどこか遠くに聞こえる。
頭もクラクラし始めた。
辛い時間だった。
我慢しきれなくなった俺は両親の方を振り向くと、やっぱり両親も苦しそうな顔をしていた。
父親なんかは、額に玉の汗が浮いて、頻りにハンカチで汗を拭っていた。
今度は前を向けと叱られることはなかった。多分そんな余裕がなかったんだろうと思う。
祝詞の間、俺達はずっと立ってたんだけど、巫女さんが俺たちの様子を見て取ったのか、「具合が悪いようでしたらお座りください」と声をかけてくれた。
両親も辛かったろうが、俺も正直倒れる寸前だったので、そう言ってくれたことは本当に嬉しかった。
心の中で巫女さんに感謝しながら俺は椅子に座った。
267 本当にあった怖い名無し 2008/03/19(水) ID: DJFCcNqx0
巫女さんGJ!!
268 本当にあった怖い名無し 2008/03/19(水) ID: r/F85GC80
巫女さんGJ(*´Д`*)
269 143◆wr4Yp5tLbk 2008/03/19(水) ID: z5QDCdkZ0
祈祷は粛々と進んだ。
屋根からの騒音と生臭い匂いに必死に耐えながら、祈祷が終わるのを必死で待っていた。
すると、儀式が進んでいくにつれ、だんだん楽になっていくのを感じた。
騒音は次第に収まっていって、生臭さも薄くなったように思えた。
重たい空気も幾分か和らいだように感じて、俺は少し安心を取り戻していた。
「祈祷スゲー!」みたいなことを内心感じていた。
儀式はいよいよ最後に近づいたようだった。
神主さんが鈴のついた棒(名前わからん)をシャンシャン振って、何か白木の箱を持って祭壇から戻ってきた後、祈祷が無事に執り行われたと宣言した。
神主さんの顔も若干強張ってたように思うし、俺としては「無事に」とは到底思えなかったが、最後の方は空気も幾分良くなったように思えたし、なにかしらの効果はあったんじゃないかと俺は内心期待した。
それで最後に、祭壇の方にある鈴(赤い紐に小さい鈴がたくさんついてるもの、これも名前が分からない)を鳴らすように言われた。
父親、母親と順にそれをやって、最後に俺がやることになった。
ちょっと緊張しつつ赤くてキレイな綱を手にとった。
一呼吸おいて、ゆっくりと綱を振った。
一回、シャン。
二回、シャン。
三回振った次の瞬間だった。
ドジャン!!
と盛大な音を立てて、鈴の付いた紐が目の前に落っこちた。
271 本当にあった怖い名無し 2008/03/19(水) ID: w8Z4S0qM0
うわぁ・・・
272 本当にあった怖い名無し 2008/03/19(水) ID: DJFCcNqx0
ああ・・・
274 143◆wr4Yp5tLbk 2008/03/19(水) ID: z5QDCdkZ0
その場に居た全員の動きが固まった。
神主さんも唖然とした顔をしていた。
その瞬間、収まったと思っていた屋根の音がまた鳴り響いた。
バン、バン、バン、と。
まるで俺のことをあざ笑っているかのように。
俺はもう驚くとか恐ろしいとかを通り越して呆然としてしまった。
心が麻痺していたのかもしれない。
握った赤い綱を見つめながら、両親が慌てふためいているのをどこかぼんやりとした心境で聞いていた。
276 143◆wr4Yp5tLbk 2008/03/19(水) ID: z5QDCdkZ0
神主さんは困惑したように鈴の付いた紐を拾って、しげしげとながめ始めた。
「根本からちぎれてるな……」
その言葉に誘われるようにしてふらりとそれを覗き込むと、鈴をぶらさげる綱が根本からぶちぶちとちぎれていた。
神主さんはおかしいなぁと首を傾げながら「綱が古かったかな……」と自分を納得させるように呟いていた。
だけど子供心にも、古くなったからちぎれた、というような感じには見えなかった。
腐食した後のようなものは全然なかったし、どちらかというと新品に近いように思われた。
子供の力で引きちぎれるような綱ではなかったのは確かだった。
「申し訳ないですがこちらはこの有様なので、もう一方を鳴らしてください」
と神主は言いながら、もう一本の綱を俺に取らせた(書いてなかったが鈴の付いた綱は二本あった)。
ほとんど放心気味だった俺は、言われるがままに綱を振った。
今度はちぎれることはなかったものの、鈴の音がなんだかこもっているような響きがした。
前の奴はシャンシャンと鳴っていたのだが、次に取った方はジャンジャンみたいな響きというか。
ちょっとうまく言えないんだが、あまり清らかな響きでなかったのは確かだ。
279 143◆wr4Yp5tLbk 2008/03/19(水) ID: z5QDCdkZ0
どうにも不穏な空気が漂ったが、一応締めとしてお屠蘇を口につけることになった。
だが、小さい酒坏に注がれたお神酒を見て、神主さんがぎょっとしたような顔をした。
「なんか、ちょっと色が……」
俺はその頃お酒のことなんてわからなかったが、注がれたお神酒はちょっと黄色みを帯びていて……なんというか不味そうだと思った。
実際、父親もそのお神酒を見下ろしながら顔をしかめていたし、大人になった今となっては明らかにおかしい色をしていたと思う。
神主さんはほとほと心労極まった顔をして「……ちょっとお待ち下さいね」と言って俺たちを残して本殿を出ていった。
俺たち家族は黙って椅子に座り込んだ。
そのころになると天井の方の騒音は鳴りを潜めていたんだが、そのかわりパキッ、パキッという家鳴りのような音がいろんなところから鳴っていた。
俺は悟っていた。「アイツ」を払うことはできなかったんだと。
281 143◆wr4Yp5tLbk 2008/03/19(水) ID: z5QDCdkZ0
俺たち家族は意気消沈しながら無言で神主を待ったのだが、神主が帰ってくるまでかなり時間がかかった。
どれだけ待ったかはわからないけど、体感では30分くらいは待たされた気がする。
しばらくしてからようやく神主さんが現れて、「こちらのお神酒を飲んでください」と新しいお神酒を出してきた。
今度のはちゃんと澄んだ色のお神酒だった。
俺はもちろん小学生だったので飲まずに唇を濡らしただけだった。
その後、俺たちは何故か帰されることなく、再び椅子に座るよう促された。
椅子に座った俺たちを前にして神主さんが硬い表情で話し始めた。
曰く。
先程の鈴の綱は新品とまでは言わないが、やはり古いものとかではなかったことがわかり、ちぎれた断面にも腐食の後はなかった。
また、お神酒もお清めを行ったものであり、事前に見たときもあのように黄色く変色していることはなかった。
得体の知れないものに憑かれてるというのは正直信じていなかったが、少なくとも尋常じゃ無いことが起こってるのは確かなようだ、と。
「申し訳ありませんが、この神社で対応できるような問題では無いものと思われます」
神主はそう言った。
俺は心底がっかりした。絶望というのはああいう心境のことを指すのかも知れない。
しかし、神主の次の言葉に、俺はかすかな希望を見出すことになった。
結局黒目の化け物を祓うことはできなかった143◆wr4Yp5tLbk。
しかし、神主の意外な申し出により、事態は急展開していく――。