墓地
8話一時間毎に投稿です(7話~14話の14話です)
「お兄ちゃん」
真新しい墓石の前で騎士姿の少年は顔を上げた。
「そんな顔をしていると心配させちゃうよ」
側に明るい栗色の髪をした女の子が心配そうに少年を見ていた。溢れ落ちそうな大きな碧の瞳をしている。
「どうして心配するのだ?」
墓石の下に眠るのは同じ騎士見習いとして修行を積んだ仲間。優秀な者だった。ただ平民だったため、貴族の令息たちのいらぬ嫉妬を買い…、訓練という名の暴行を受けた。鍛練場から戻らない彼を探していた少年が見つけた時には手遅れだった。
また少年は助けられなかった。
「うん、おばあちゃんが言っていたの」
まだ幼さの残る女の子は大きく頷いた。
「お墓の前でいつまでも悲しい顔をしていると心配して天にかえれないだって」
女の子の碧の瞳からは大粒の涙が溢れていく。この女の子も誰かの葬儀に来ていたのだろう。黒いワンピースを来ていた。
「だから、ね、最初は悲しくて、悲しくても、いつかは笑ってさよならを言ってあげなきゃいけないって」
小さな嗚咽をあげながらも女の子は一生懸命話しかけてくる。
少年は知らず知らず女の子の頭に手を乗せて慰めるように撫でていた。
「…、そうか…」
「だから、お兄ちゃんもつらくなくなったら…」
少年は跪いて、女の子と目線を合わせると分かったと頷いた。
「うん、私もがんばる」
まだ涙が残る目を三日月に変えて女の子はニコっと笑った。
「クロエ、あんた、また泣いてるの」
赤茶の髪の女の子がやって来て呆れた息を吐く。そして、少年を見るとポッと頬を染め目を輝かせた。
「お兄さんの髪、銀色だー」
新しくやってきた女の子の声はすごくはしゃいでいた。銀色の髪を持つ者は少なく、それは月の加護を受けた者の証とされている。そして、何かに秀でている者が多いとも。
だから、少年は自分の銀髪が嫌いだった。月が大嫌いだから。
「カレン、帰るわよー」
女の人が名前を呼ぶ。
「はーい、待ってて、お母さん!」
赤茶の髪の女の子は慌てたように体の向きを変えた。
「ほら、クロエ、行くわよ」
そう声だけかけて、遠くにいる女の人の元へ待ってと走り出していく。
「お兄ちゃん、私、クロエ。また会えるといいね」
残った女の子は笑ってそう言うと、先に行った女の子を追いかけようとした。
「私はカイル」
「お兄様と同じ名前だ」
女の子は嬉しそうに笑うとじゃあねと手を大きく振って走っていく。その後ろ姿を見送って少年はぽつりと呟いた。
「心配して天に還れない、か」
少年はあの日と同じように澄みきった空を見上げた。




