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75話 スライムでピンチ

 地下32階層も順調に俺達は進んでいった。

 むしろミーシャのレベルがついに上がって、うれしいのか、モンスターを見つけるとばしばし倒していた。


「お前、はしゃぎすぎだぞ。もうちょっと慎重になれよ……」


「ごめんなさい。楽しくて、ついつい浮かれちゃってた」


 32階層にもある程度慣れてきたところで、ミーシャが少し興味深いことを言った。


「ねえ、ずっと前にゴールドスライムを倒した頃、そのあたりのフロアがちょっと室内みたいな壁になってたのを覚えてる? そのあとも何度も通過してるけど」


「ああ、神殿みたいになってるところは20階層を越えたあたりでもあったよな。このへんの階層と比べると規模が小さいけど」


「もしかすると、あれって深いところにあったこういう神殿を模したものだったんじゃないかしら。ほら、これだけ深いところに来るのって大変でしょ。面倒なうえに、モンスターの強さからしても、生半可な準備だとたどり着けないだろうし」


「たしかに、その説はあるかもな」


 日本の神社でも、かつては山の上で祭祀をしていたらしいのが、山でやるのは大変だから、ふもとでやるようになったり、さらに里でやるようになったりということがある。


 そうなると、いつのまにか山を信仰していた神社なのに、メインの神社は平地にあって、山にある神社が奥宮だとか言われたりするようになる。


 きっと、深い神殿に行くのが困難なので、手前で済まそうという発想は全世界共通のもので、この国でもそういうことがあったんじゃないだろうか。


「姉御は難しいことを考えるんですね」


 レナはそういうことを考える発想自体がないらしい。別に冒険者には不要なスキルだからな。


「だから、どうってことはないけどね。でも、もしかしたら、かつての宗教のマジックアイテムでも見つかるかもしれないわ」


「なんか、うかつに見つけると王国のバランスが崩れそうだ」


 ミーシャが頑張るだけで、すぐに崩れちゃうといえば崩れちゃうのだが。


 続いて、俺達は33階層に降りていった。


 ここはまたかなり特徴的な空間だった。

 何が特徴的かというと、やたらと水が湧き出ているのだ。


 通路の横に水路みたいなものがあって、今も現役で水が流れている。


 これって、飲んでも大丈夫なのかな……。


 俺はレナに尋ねてみた。サバイバル知識なら一番詳しいと思ったのだ。


「レナ、この水はいけそうか?」


「毒かどうか調べるキットはあることはあるんですけど、ちょっと時間を食うから、まずはこの階層のモンスターがどういう連中か把握してからにしたいです」


 ということで、俺達はフロアを進んでいくことにした。


 最初に出てきたのはごく普通のスライムだった。


「スライム? なんでこんなところに出てくるんだ?」


 スライムに聞いて答えてくれるわけはないだろうが、なかなか謎だ。


「スライムといっても、いろんな種類がいるだろうから、すべてがザコとは限らないわよ。ゴールドスライムだって、そこそこ強かったから、地下23階層にいたわけだし」


 たしかに俺は危うく窒息して命を落としかけた。


「そうなんだけど、こいつ、色も弱いスライムと同じようだしな」


 とはいえ、モンスターを見つけた以上は戦わないといけない。


 ――と、スライムが跳ねた。


 そう認識した時にはスライムが俺の目の前に来ていた。


「うわっ! 速い!」


 ぶつかられて、俺は壁に打ちつけられた!

 当たってきたぐらいだから、ダメージはたかが知れているが、回避が間に合わなかった……。


「旦那! 大丈夫で――――うわあああっ! なんちゅう速さだ!」


 今度はレナがスライムに足をとられてこけていた。


 盗賊のレナが速度で驚くって、いかにとんでもない動きをしているかがわかる。


「このスライム、なんらかの理由でものすごく高速移動を覚えた種類みたいね! 油断しないで!」


 ミーシャはすでに戦闘態勢に入っている。

 別に油断していたわけではないが、あまりにも敵が速くて先制パンチを受けてしまった。


 しかも、スライムというのは、けっこう群れで行動することが多い種族なのだ。


「後ろからも来てますぜ!」


 レナが叫ぶ。たしかに背後に似たようなのが三体もやってきていた。


「ご主人様、レナ! まず、私は前の奴を先に片付けるわ! だから、後ろは防御していて! すぐに致命傷ってことはないはずだから!」


「そうだな……。まずは防ぐことに専念する!」


 俺はレナのそばに寄る。

 二人がかりになることで隙が生まれるのを減らす作戦だ。


 スライムはじりじりと寄ってくる。


「まさか、スライムに苦しめられるとはな……」


 これ、地上に戻って冒険者に話しても与太話だと笑われそうだな。


 俺は剣を構える。

 レナもナイフを構える。


「レナ、敵が来たら同時に同じ奴を攻撃するぞ。それでこっちのペースにする」


「了解しました! 私もスライムにいいように扱われるのは我慢ならねえからな!」


 さあ、スライムよ、来い! 返り討ちにしてやる!

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