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160話 ダンジョンを下へ下へ

「うわあ……。これは面倒ね……」

 ミーシャもげんなりした顔をした。


「これ、おそらくかつての坑道か何かの跡地なんだろうな……。とすると、ものすごく広大な可能性がある」

「これじゃ、冒険者も嫌がって来ないわよ。もっと有名なダンジョンなら名前も売れるでしょうけど、こんなにマイナーなところじゃ……」


「どうします、姉御と旦那? 私もこういうところはあまり経験がないんですけど……」

 レナの質問にも俺もミーシャも答えられない。


「やり口はないこともないですね」とヴェラドンナが言った。


「ぜひ教えてくれ。このままだと八方ふさがりだ」

「やり口というほどおおげさなものではないんですが、坑道としたら、どんどん下っていく道があるはずなんです。ひたすら下へ、下へ下がっていくことだけ考えれば、ダンジョンの全貌はわからなくてもボスのところには行くんじゃないですか?」


 ヴェラドンナの説によると、ボスは一番底にいるだろうから、下り続ければボスには会えるというものだ。


「でも、ボスが底にいるなんて根拠は何もないよな?」

「はっきり言ってないです。しかし、ここに魔王に仕える幹部がいるという話を地元ギルドも認識してないようですから、浅い階層に何もいないのは確かでしょう。もし、完全に袋小路の坑道なら、何もなかったと壁に目印でもつけておけば、いつかはボスにぶつかります」


 そりゃ、劇的に状況を打開できる夢のようなアイディアなんてないか。


「わかった。その方法で行くか。マッピングもこれだと面倒くさそうだし」

「盗賊の私としては宝箱は逃したくないんですけど、しょうがないですね」

「細かいこと考えるよりはそっちのほうが楽でいいわ」


 レナとミーシャも同意したので、俺たちは洞窟に入った。


 洞窟の中は添え木みたいなものが壁にしてあるし、やはり坑道のような感覚を受ける。

 敵モンスターも出てきたが、これは現行の俺たちのパーティーでは、危なげなく倒せた。ミーシャに至ってはあくびをしていた。


「浅い階層に出てくる割には強いけど、それだけね。こんなのいくら倒してもレベルアップには程遠いわ」


 地下に降りるのは階段だけでなく、縄梯子や、金属を打ち込んでのぼれるようにしたものや、ゆるやかなスロープで下のフロアに通じるようにしているものがあった。


「これ、縄梯子が切れると、戻るのが大変そうね」

「Sランク冒険者だから、それぐらい登れるだろ」


 延々と、俺たちは下に下に進む。

 この方法はたしかにボスだけを倒すのには効率がいいかもしれない。下りの道があればそこだけ行くという展開であれば、移動時間も短くて済む。


「私たちみたいに移動にリスクがないパーティーだけがとれる作戦だけどね。弱い冒険者ならこんなことしたらすぐに死んじゃうわ」

「だな。深くなればなるほど敵も強くなるしな。道に迷う恐れもあるし」


 もし地上からかけ離れたところで絶体絶命になれば、生還は難しい。よほど自信がないととれない手法で下っている。


「上りの別の梯子とかも多いし、やっぱりいろいろつながってるみたいですな」

 レナも急いで進んでいるから雑ではあるがマッピングはしている。

「もしかすると、もっと深いところからスタートできる入り口もあるかもしれませんが、その場所を見つけるのが大変ですね。このまま地道に行きましょう」


「うん。俺、一本道じゃないダンジョンって、昔から苦手だったし」

 前世の記憶だけど、帰り道がわからずに詰まってる時に、親から「ゲームはもうやめなさい」とか言われるんだよな……。


 ヴェラドンナは壁や階段などの様子をやたらと確認していた。

「ただの廃坑道にしては手が加わった痕跡がありますね。やはり、何かいると思われます」


「それはうれしい情報だな。とっとと倒して、とっとと戻ろう」


 そして、だいたい地下十五階層あたりで、俺たちは奇妙なものを発見した。


 奇妙と言っても見たこともない不思議なものってわけじゃない。ありふれた立て札だ。矢印の形に木を切っている。

 そこに王国の言葉とは絶対に違う文字が書いてある。ただ見覚えがないというわけでもない。


「これ、魔族が使ってる言語で間違いないな」

 ミーシャは立て札に顔を近づける。

「でしょうね。魔族の言語に関する本はないようなものだから、私もはっきり読めないんだけど、ここで場所を記さないといけないとしたら、それってある程度決まってくると思わない?」


 ミーシャは何かをつかんだぞという顔をしている。それは俺もおおかた同じだ。


「ボスがこの先にいるってことか」

「考えてみれば、これだけ複雑なら、魔族も混乱するはずなのよ。なんらかの目印は必要だったはずだわ。ここなら、もう人間も来ないと判断したんでしょうね」


 その矢印に向かって進むと。また分岐点に矢印のついた看板が老いてあった。


 ああ、これは絶対に何かあるな。


 俺たちの意気が確実に一割ぐらい上がった。

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