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158話 地理の確認

 ヴェラドンナが開いた一冊には、たしかにドライアドの森も、さらに北の地理も書いてあった。


「そうか、地理書じゃなくて伝記の場所にあったのか!」


「おそらくですが、地理学者のような人ではそんなところにまでたどりつけないんでしょう。命知らずな探検家みたいな人しかたどりつけない。となると、その言葉を信じていいかわからないから、地理学者は採用しなかったのかもしれません」


 たしかに誰かが死後の世界に行ってきたと主張してきても、信じていいかわからないよな。それと似たようなものか。


「この本も全部信じていいかはわかりませんが、まだ利用価値はあるかと思います」


 日本でもまともに北海道に興味を持つようになったのは江戸時代ぐらいからだもんな。王国のはるか北側の世界に何があるかわからないというのは、いたし方ないことかもしれない。


 俺たちは早速、そこに書いてある記述を確認した。


 まず、「海のごとき沼地」が広がっていると書いてある。それを抜ける途中にモンスターに襲われると生きて帰れない。大半の者は沼で落命した――と書いてある、どうやら数人のパーティーで踏査に行ったようだが、その前を読んでないから詳しいことはわからない。


 人数が多いので、ミーシャが読むことになった。

 態度はまったく学者ぽくないが、ミーシャはステータス的に知力700オーバーという化け物だ。古い文献を読むぐらいわけはない。賢いうえでこっちを手玉にとるようなことをしてくるので、余計にタチが悪いと言えなくもないけど。


「『その沼は体を蝕む瘴気のようなものが湧いているようだった。ただ、それで落命するほどではなかったし、長らく患うようなものでもなかった。ただ、そこをモンスターに襲われてはひとたまりもない』、泥の中で敵が攻めてきたようなものかしら」


 日本でも田んぼのあぜ道で動けなくなって死んだ武士とかいたな。自然のトラップみたいなものだ。


「続きを読むわね。『舟があれば楽だったのにとこぼす者もいたが、現実的にそこまで舟を運ぶなど無理な話だった。舟だけならドライアドに作ってもらえたかもしれないが』、へえ、じゃあ、ドライアドに作ってもらいましょうか」


「そうだな。これは有益な情報が手に入った」

 多分体力的な問題もあって運べなかったんだろうけど、俺たちのステータスならできなくはないはずだ。


「『沼地を抜けるまでの間に、幾度となく鳥のようなモンスターと沼に潜むモンスターに攻撃を受けた。夜も含めて丸一日歩き続けて、ようやく沼を抜けた時には残ったの二人はだけだった。迂回路を最初は探したが、数日沼に沿って歩いてもまだ沼が続くので諦めた』、なかなか無茶苦茶な地形ね」


「一説には魔族がかつて、そういった土地を意図的に作ったとも言われています。人間がやってくるのを防ぐためだとか」

 ヴェラドンナも伝説などには詳しい。


「そんな結界みたいなのを張られたら、たしかに人間の軍隊は魔王の城まで行けないもんな」


 書いてある地図を見ても、沼を表す斜線が長く帯のように描かれている。地形としては相当不自然だけど、魔族が人為的に作ったなら不自然なのも当然かもしれない。


「とにかく、一つ目の沼はこんな感じね。これじゃ、地理学者はホラ話だと思って、採用しなくても無理はないかも」


 ミーシャが本のページをめくる。


「次の記述はこういうものね。『沼をすぎてさらに進んでいくと、闇まで続く谷がある。向こう岸はかろうじて見えるが、とてもこれを越える手段は見つからない。鳥の翼でもないと無理だろう』だって。明らかに確認もしてないのに闇まで続くとか書かないでよ。闇まで続いてるかなんてわかんないじゃない」


「まあ、そこは学者じゃないから盛ってるんだろうけど、それは厄介だな」

 おそらく、王国が魔族を倒せない理由もこの土地柄なんだろう。


 ここで探検家は引き返してしまったようで、谷の越え方などはよくわからない。いくらステータスが高くても地上数百メートルの岩盤を下りたり登ったりするのは現実的ではないから、ここをクリアするのは難しそうだ。


「ドラゴンでも仲間にできればいいんだけど、そんなの、無理だろうしな」


 実際に現場に行って、まず確かめるべきかもしれないが、ある程度、攻略法を用意してのぞみたいところではある。一度行くだけでもかなりの手間だからだ。


「ご主人様、大軍を連れていくのは無理だけど、少人数ならなんとでもなるわよ。ちょっと覚えればいいだけ」

 ミーシャはちょっとあきれていた。

「だって、ここは魔法がある世界よ。飛行の魔法の魔導書を買ってくるわ」


「あ、そうか……」

 人間が空を飛ぼうと思えば飛べる世界なのだ。そして、魔王としても一部の魔法使いが来るぐらいなら返り討ちにできるから、それで問題ないのだ。


「じゃあ、ミーシャが飛行を覚えたら、すべて解決か。けっこう単純なものかもな」


「でも、王国にもまだ二つ、魔族の拠点が残ってるはずだし、そちらを片付けるのが先になりそうだけどね。ただ、魔王を倒す目途がつきそうっていうのは事実だわ」


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