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153話 王都に戻ってきた

 俺たちはドライアドの祭りに参加した後、数日逗留そこに逗留した。


 理由はドライアドたちに戦い方を伝えるためだ。

 またモンスターの攻撃をこの土地が受けることがあるかもしれない。


 その時、自分たちである程度、持ちこたえることができれば、援軍を王国側から募ることだってできる。仮に降伏するにしても全面降伏よりはマシな条件で妥結することができる。


 ドライアドたちの中には霜の魔法などを使ったり、木の根っこをぐにゃぐにゃ動かしたりする者もいた。

 地面から躍り出た木の根っこが強く打ちつける。速度を上げれば、かなりの破壊力に成るだろう。


「なんだ、これなら十分に戦えるじゃない。モンスターとだってやりあえるわよ」

 ミーシャもドライアドたちの活躍を見ていて、なかなかいい評価を加えていた。

 一人ひとりの魔法の威力は知れていても、これがずらっと並べばそれなりの脅威になる。


 しかも、ドライアドはほとんどの者が魔法を習得していた。これだけ魔法の使用者が多いなら、やりようもいくらでもある。


 長老も軍事訓練の様子を見物していて、目からうろこが落ちたような顔をしていた。


「我々は長らく敵と戦うことがなく、暮らしておりました。そのせいでモンスターたちが攻めてきた時にどうするべきかわからず、屈しておったのです。ですが――我々は決して無力ではなかったのかもしれませんな」


「無力なんてものじゃないですよ。何十人や数百人が魔法を使ってきたら、一流の冒険者だって恐れをなします。しっかり鍛えてくださいね」


 俺とミーシャが戦闘の指導をしている一方で、レナとヴェラドンナは森の外側に空堀を作る作業をしていた。


 モンスターの大軍による蹂躙を防ぐことができれば、守れる期間も大幅に長くなる。すべて完成するのは、俺たちが去った後だろうけど、事前の縄張りをはっきり決めていれば、後は掘るだけだから問題ないはずだ。


 こうしてドライアドの土地に技術を教えて、俺たちは南の王国へ戻ることにした。

 なお、ミーシャはコートのようなものを重ねて着て、もこもこふくれていた。


「これだけ着込めば、厳寒の土地も大丈夫ね……。歩くだけで疲れるけど……」

 そう言ってるミーシャはまだ寒そうだった。


「ステータスはチートでも寒さには弱いんだな」

「どうせなら、『寒さ耐性』みたいな設定を持って、転生したかったわ……」

 ミーシャがわがままを言う横でレナとヴェラドンナが元気に歩いていた。ミーシャと同じ土地を歩いていると思えないほど軽装だ。行進するみたいに腕を振っている。


「この気候もこれだけいれば慣れてきますぜ、旦那」

「やっぱ、オオカミって寒さに強いのかな……」



 俺たちが次に目指すのは、ガートレッド王国の王都メイレーだ。

 さすがに王都がモンスターの攻撃を受けているから奪還するだなんてことはない。魔族の戦略や拠点の場所なども詳しくわかったので、ここらで一度、国に報告しておこうと思ったのだ。


 国王アブタールになんでもかんでも事後報告にすると不信感を与えかねないしな。


 俺たちが裏切るだけで王国はかなり危機的な状況になるはずだ。王国に仕える気があることは定期的に伝えていたほうが安全だ。もっとも、王国からの刺客が来ても確実にこっちが勝てるだろうけど。


 それと、もう一つ大事な目的があった。

 魔王城に向かうまでの地理情報がたいして入っていない。これに関する資料があるとしたら、王都の図書館だと思うのだ。かつて踏み入った冒険家の手記ぐらいは収蔵してあると信じたい。


 俺たちはひたすら南下していったので必然的にミーシャの服装がだんだんと薄着になり、しかも機嫌もよくなっていった。


「やっぱり、あったかいのが一番ね。寒すぎちゃ人も住めないわ」

 まあ、地球でも寒い地域よりはあったかい地域のほうが人が多く住んでるケースが多かった気はするな。


 凍結などの対処とかインフラに莫大な金がかかるとか、いろいろ理由はあるんだろう。この世界だと、暖をとるのも難しいだろうから、余計に一般人は生活しづらいと思う。


 久しぶりに王都に戻ってみると、あらためてこの街のにぎやかさに気づかされた。

 国で一番人口が多いはずだから、当たり前だけど。


 それと、俺たちの顔を知っている人間も多い。視線もやたらと浴びるし、声もかけられる。


「おー! Sランク冒険者のみんなが帰ってきたぞ!」

「今度はどこ行ってたんです? もう冒険するところなんてないでしょ?」

「ほんとにみんな、かわいいな……。ケイジさんがうらやましいや」

「今日は安くしとくよー!」


 ミーシャは調子よくかかってくる声に一つずつ答えていた。

「ずっと、北の北、ドライアドの土地まで行ってきてたの!」


 そんなの伝説の存在じゃないのかなんて声までする。王都に住んでいれば目にすることもない種族だもんな。


「ここが私たちのホームと言って、間違いありませんね」

 ヴェラドンナも心なしか声がはずんでいる。


「久々ですし、屋敷で料理を作りたいです」

「わかった。じゃあ今日は屋敷に帰って、明日、城には行こう」


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