夏美の最後
〈所長室〉
「黄色の三番及び、白の二番が死にましたが、息子さんは無事、意識を取り戻しました」
白衣を来た研究員が、所長に報告をする。
「ふむ……まぁ、仕方あるまい」
椅子に座ったまま報告書に目を通す。
そんな時、別の研究員が慌てた様子でドアを開けて入ってきた。
「青の七番と緑の五番が二人を返せと言いながら暴れています! いかがいたしましょう?」
「非協力的なモノは要らん。殺せ」
当然の様に所長は殺害指示を出す。
「分かりました」
そう言って研究員が出て行ったすぐ後に、銃声が鳴り響く。
「ん? かなり近いな」
『うわー!』『た、助けてくれぇ……』『ぐっ……』
銃声の切れ目に悲鳴が聞こえる。
どんどん銃声が近づいて来たかと思うと、ピタッと何も聞こえなくなった。
バンッ!
大きな音を立てて、所長室のドアが開けられる。
「だ、誰だ!」
所長が声をかけると、ドアの向こうからゆっくり、夏美が歩いてくる。
何発も銃弾を受けたのか、服は真っ赤に染まり、足を引きずって床を赤く染めている。
「青の七番!」
部屋に残っていた研究員は尻餅をつき、後ろに下がる。
「誰か! 早くこいつを始末しろ!」
所長が声をあげるが、応じる者は誰も居ない。
「お前が……お前が、にーと瑞樹を殺したのか……?」
夏美が低い声で尋ねる。
「ふん! お前達は所詮俺の所有物だ! 自分の物を自分の好きに使って何が悪い!」
「きさま……」
歯を食いしばって怒りの言葉を飲み込むと、右手で握り拳を作り、横にあげた。
青い光が手を中心に、肩まで広がる。
「お前達は大人しく私に従っていればいいんだよ!」
所長はそう言いながら、拳銃を夏美に向けて撃つ。
パン!
乾いた音が部屋に響く。
弾は夏美の腹を直撃した。
「くっ……」
苦痛に顔を歪めながらも、倒れないようにその場に踏ん張る。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
そして、叫びながら右手を思い切り振りぬく。
その瞬間、氷の槍が、地面から次々と出てくる。
所長の所まで槍が行くと、青い氷が真っ赤に変わった。
それを見届けて、夏美はぱったりと倒れる。
夏美の身体からは、もう出血はしていなかった。




