夢
冷たい風が肌を刺す。
寒い……いや、痛い?
周りは真っ暗で何も見えない。
温かいものが流れ出ていく感覚。
「大丈夫だからな」
男の人の声が聞こえる。
男が僕に手をかざすと、ぽっ、と小さな明かりが生まれた。
黄色い光はやがて大きくなり、僕を包むと、体が軽くなった気がした。
ふっと光が消えると、僕の上に男の人が倒れてきた。
「お……うさん? ……お……さん……て……さん!」
必死に誰かを呼んでいる。
「お……さん……て……さん!」
僕が声をかけても反応はなかった。
〈自室〉
「起きてよ!」
勢いよく布団を飛ばして飛び起きる。
目の前に可愛らしい女の子の顔があった。
「きゃ!」
女の子は驚いて小さな悲鳴をあげると、ばっ、と僕から離れた。
「あ……夢……?」
僕の前に立っているのは、青い髪の女の子。
肩まで伸ばした髪を、後ろで軽くまとめて、ポニーテールにしている。
いつもきりっとしている顔を怒りで歪めて――
「起きるのはお前だ!」
ビシッ。
「いてっ!」
目の前の子を観察することで、ようやく自分が夢を見ていたのだと気づくと、顔を真っ赤にしてふるふると震えている夏美からチョップをもらった。
「全く……急に起き上がったら、び、びっくりするだろ……」
「ご、ごめん」
夏美はこっちを見すらしてくれない。
相当怒ってるのかな?
「あとちょっとでキスしちゃうとこだったんだからな……」
「え? ……よく聞こえなかった。なんて言ったの?」
「な、何でもない! ほら、行くぞ」
ボソボソと何かをつぶやいたあと、僕は強引に腕を引っ張られ、部屋から出た。
何か懐かしい夢を見ていた気がする……何だったんだろう? 思い出せない。
頭がぼんやりとする。
すごく冷たくて暖かい場所にいた気がする。
あそこは、
「どこだろう?」
つい言葉に出してしまった。
すると、夏美がそれを聞き、真剣な顔でこちらを見る。
「ここは、国の研究機関。私達は実験動物……もしかして、忘れたのか?」
「え? 忘れるわけないよ。ちゃんと覚えてる。夢で見た場所の事考えてたの」
慌てて否定すると、夏美は心底ホッとした顔になった。
「よかった。変な薬飲まされて、記憶が消えちゃったかと思ったよ」
「あ……は、はは」
何人か、全ての事を忘れた友達も居るから笑えない。
ここは表向き、親が居ない子供を育てる福祉施設だ。
でも、実際は普通とは違う子供達を集めて、その【力】について研究している施設。
3年前までは研究員達も皆すごく優しくて、無茶な実験はしてこなかった。
しかし、3年前、偉い人が【力】によって殺されてからは僕達への見方や風当たりが変わった。
犯罪者予備軍とされ、殺しても犯罪にならず、実験は過酷なものとなった。
何人もの子供が死んでいる。
「ねぇ……どうしたの? すごい怖い顔してる」
「え? あぁ、どうもしてないよ、ごめん」
考えても現実は変えられない。僕は笑顔を夏美に見せた。