第2話 地球の神ヘプタの叫び
「はぁぁぁぁぁ!?」
ガタンと勢いよく立ち上がって、目を大きく見開き、大きな野太い声で叫んだのは地球の神様、ヘプタ。
「何してくれちゃってんのぉ!」
水を飛ばしたペンタを凄い形相で見下ろすヘプタに、そこまで怒りを露にした姿を見たことがなかった神々は固まる。
怒鳴られているペンタなど、その怒りに黒い大きな目から涙が零れるほどだ。
「え、え、何、ちょっと、どこ落ちた?」
ヘプタは自分の世界の球体を手元に寄せる。
「え、マジ? ちょっと、いちばんヤバいとこに落ちてんじゃんっ!」
「あ、あのぉ」
顔色が一瞬青ざめたヘプタに声をかけてきたのは、二つ隣の席に座る金髪美少女のノナ。
「何だよっ」
「ひっ」
あまりの剣幕に声をあげるノナ。
「まぁまぁ、ヘプタ、落ち着け」
「ああ? お前は自分の世界のことじゃないから、言えるんだろうがっ」
「あ、あのっ、ヘプタのところから、うちの世界になんか落ちましたっ!」
ノナが目を閉じながら大きな声をあげた。
「……な、なんだと」
ヘプタの顔が青ざめる。
「い、いったい、何がノナのところに飛んでったんだ」
自分の世界の球体を手に、真剣に探り出すヘプタと、同じようにノナも自分の球体を探り出す。
「ま、まぁ、水滴程度の小ささなら、大きな問題にはならんだろ」
「そうだ。問題はエナのほうだったじゃないか」
他の神々がエナの球体へと意識を向けようとした時。
「あああああああっ!」
再び、ヘプタが絶望の声をあげる。
「まずい、まずい、まずいぞ……」
「ヘプタ、なんだってんだ」
「だから、まずいんだって! なんだって日本に落としてんだよっ」
「ニホン?」
「ああ、私の世界の中でもこの地域は多くの神を信仰する地なんだ。ああ、どうしよう」
『どうしようとは、どういうことです』
「ぎゃあっ!?」
ヘプタの背後には、恐ろしい気配とともににっこりと笑みを浮かべて立っていたのは、白い生地に金色、銀色の糸で刺繍がされた着物をきた美しい日本人女性。
そして、着物を着た者、鎧を着た者、ボロをまとった者、人の姿すらしていない物までが、続々と現れた。
『あれは、どういうことか』
『なぜ、あの場所を消し飛ばした!』
『あの場には、我らが慈しんでいた者が住んでおったのだぞ!』
『そうだ! そうだ!』
『どういうことかっ!』
白い部屋が日本の八百万の神々でいっぱいになってしまった。
「な、なんで、入って来れるんだ……」
ペンタが周りに増えた神々を見て呟く。
この部屋には、各世界の代表となる神のみが入れるようになっているのに、日本の八百万の神々がどんどん増え、ついにはギュウギュウ詰めになってしまった。
ギョロリと一つ目の大頭の神が、ペンタの顔を覗き込む。
『何言ってんだ。こんな部屋、俺たちにかかったらスルッと入れるぞ』
『ぬるっとな』
『ああ、つるつるっとな』
ケラケラと笑う日本の神々に、他の世界の神たちは声にならずにその場に固まる。
そこに、たくさんの神々の中から一際神々しい女神が現れ、他の日本の神々が跪いた。
『〇✕■△(ヘプタの地球での名前)、どういうことじゃ』
「あ、アマテラス殿」
『どういうことじゃ、と聞いておる』
ギロリと睨まれたヘプタ。
その威圧に、そばに座る神々もカチンと固まってしまうほどだ。
「も、申し訳ございません~!」
そう叫ぶと、ヘプタは真っ青な顔で土下座をした。




