第90話 帝都から離れたい
帝都に行って二日が経った。
その間、私は家の敷地から一歩も出ずに、家のことや、小さな畑の水遣りなどをして過ごした。
家はユーコの結界で守られているおかげもあって、特に問題なく過ごせた。
警護の聖騎士さんたちも、透明になっている我が家の位置をちゃんと把握して、上手いこと交代もできていたようだ。
今日も、外の天気は晴れ。帝国では、この時期は晴天が続くらしい。
窓の外から見えるのは、少し離れたところにある街道。帝都に向かう人々と、北のホゴート王国方面に向かう人々。
天気がいいこともあってか、人通りが多いように見受けられる。
「……やっぱり、田舎に引っ越そうかなぁ」
初めての買い出しで、面倒ごとが勃発しまくったのもあって、帝都に近いことのメリットが感じられなかったというか。
――むしろ、毎回、護衛付きじゃないと出かけられないほうが、しんどい。
聖騎士の格好で警護されることの面倒さのほうを痛感させられた感じだ。
彼らも私たちを守るために警護に立っていてくれてるんだろうけれど、言葉は悪いが、有難迷惑なのだ。
「雅~」
「び~」
人型の姿になったマーコとニーコが、私の腰のあたりに抱きついてきた。
「何、どうした?」
「もうそろそろ、移動しない~?」
「ここ、つまんない」
二人ともが、うんざりした顔で見上げながら言ってくる。
「この辺りじゃ、狩りもできないし」
「雅も好きに買い物に出かけられないだろ?」
「まぁ……ね」
「もう少し田舎のさ、森の近いところとか、よくない?」
「……もしかして、私の独り言、聞いてた?」
抱きついている二人に苦笑いしながら問いかける。
「……聞いてた」
「聞いてたけど、僕も思ってたことだもの」
確かに、帝都の周辺では、マーコたちが大きな猫の姿で狩りをするのは難しい。
そもそも、大きな冒険者ギルドがあるおかげで、冒険者たちはマメに魔物の討伐を行っているし、マーコたちが狩るには弱すぎる魔物くらいしかいないそうだ。
「しばらく魔物を狩れていないから、レベルもステータスも伸びないし」
不満そうに言うマーコ。
『私も、そろそろレベル上げしたいのぉ』
ユーコがぬるりと天井から落ちてきた。
「レベル上げって」
『ん~、貴族どもの使いが何度か探しには来たが、そもそもが見つけられていないし、攻撃も受けないから、ずーっと停滞したまんまなのだ』
「ユーコ、まだレベル上がるの?」
『当然だ。最終的には城くらいを目指したいぞ!』
「いやいや、城って何」
『うむ? そうだのぉ、やはり、白鷺城のような雄大な城をだな』
「いやいやいや、こっちじゃ、違和感ありまくりだから」
『結界を張ってしまえば、違和感も何もないだろう?』
「そ、そう……なのかもしれないけど! そんな大きな城に私たちだけで住むとか、広すぎでしょ。うちくらいの大きさが、一番いいのよ」
『そうかのぉ?』
「そうかなぁ?」
「大きいほうが、僕らも大きいままでいられるのに」
「え」
マーコとニーコが、きゅるんとした目で見上げてきた。
――大きなマーコとニーコ。
うちでも大きくはなれるけれど、それは狭苦しいのを我慢して、という感じ。
大きなマーコとニーコと一緒に伸び伸びとお昼寝できる図を想像して、それ、いい、と思ってしまうのは、私だけではないと思う。




