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君の為なら神さえも。  作者: 塩砂糖
第1章『異世界転移編』
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第47話『異世界人』

「リウス、大丈夫? 怪我とかしてない?」


 男たちがギルド職員の手によって拘束されていくのを眺めていると、離れた場所から一部始終を見守っていたユキが戻ってきた。


「俺は何ともないよ」


「良かった。――なんだか、その姿の方がリウスって感じがするね」


「そうか?」


 魔人の姿と人間の姿。どちらも自分の姿であることに変わりはないが、ゲームキャラクターの特徴を引き継いだこの世界では、魔人の姿こそ本来の姿ということになるのだろうか。


 そういえば服はどうなっているのだろうと腰に手を当ててみれば、翼が生えている付け根の部分に沿って服に穴が空いており、上手くフィットするようになっていた。

 この服はアポカリプスから引き継いだものだ。ゲームでは、異なる性別の服以外はどの種族であっても着ることが出来た。ゲームから引き継いだ服は、何らかの方法によって着用者に合わせた形状になるようだ。

 どんな仕組みでそれが実現しているのか考え込みそうになったリウスを現実に引き戻したのは、背後からかけられた声だった。


「失礼。少し時間を貰えるだろうか」


 振り返ると、ついさっきまで大柄な男と戦っていた鎧の男と、その連れであろう弓使いの女がそこにいた。

 弓での戦闘が主体の女のほうはともかく、大柄な男とその取り巻きの一人を相手していた男のほうも、これといった怪我などはしていないようだった。レベルの開きは僅かだったが、実力は鎧の男ののほうがかなり上だったらしい。


「ニーグだ。先程はとても助かった。感謝する」


「セニアよ。彼はぶっきらぼうであまり感謝してるように見えないかもしれないけど、これでも感謝しているの。本当に助かったわ」


「リウスです。俺も迷惑してましたから」


 二人に倣ってリウスも名乗る。続いてユキも二人に名乗った。

 実際はユキに頼まれてのことだったが、ここでわざわざそれを説明する必要もないだろう。

 リウスは感謝を素直に受け取った。


「それにしても、それほどの実力を持っていながら、今日の大精霊討伐には参加していなかったようだが」


「ニーグ、大精霊討伐は強制じゃないもの。参加しなかった人を責めるのは卑怯よ」


「……それもそうだな。命を懸けた者のほうが偉いという道理はない。悪かった」


「謝らないでください。それに、大精霊討伐には参加しなかったのではなくて、参加できなかったんですよ」


 リウスとユキは先日貰ったばかりのギルドカードを取り出した。


「二人とも、冒険者登録をしたばかりなもので」


 尤も、参加資格があったところで、大精霊討伐に参加するかどうかは話が別だが。


「あれで第五等級冒険者とは……。世界は広いものだな」


「実力的にはもっと上でもいいはずだから、今回の件で第三等級ぐらいには上がるんじゃないかしら」


「それ以上は実力だけでは上がれないからな」


 冒険者ギルドの等級において、実力のみで上がれるのは第三等級までだ。

 それ以上は特別な実績や、人格的な面での問題がないと判断された者が、実力に応じて第二等級や第一等級に割り振られる。

 あの大柄な男は実力だけで言えば第一等級に匹敵していたが、人格的に問題ありと判断されて第三等級だったのだろう。

 現状リウス達に特別な実績などなければ、冒険者になってから日も浅い。今回の件で等級が上がるとしても、精々第四等級か、高く評価されても第三等級だろう。


「すみません。少しよろしいですか?」


 そこへ声をかけてきたのは、たった今男たちの拘束を終えたギルド職員だった。


「今回の件でお話を聞かせて頂きたいのですが」


 ギルド職員にとって用があるのはニーグとセニアだけのようだった。

 これ以上この場にいてもすることはないので、部屋に戻ろうとリウスとユキが歩き始めた時。


「リウス様、ユキ様。後ほど、お二人にもお話を聞かせていただくことになるかと思いますので、宜しくお願い致します」


 ミュエにそう告げられてしまった。


「……分かりました」


 流石に無関係ではいられないようだ。



 ◇◇◇◇◇


 リウスとユキがギルド長室へ呼び出されたのは、翌日だった。

 ミュエに連れられ部屋の前まで来ると、ミュエが扉をノックして到着を知らせる。


「入れ」


 中から聞こえてきた声は、昨日ギルドの一階で聴いたギルド長の声と同じだった。


 ミュエの後に続き部屋の中に入る。

 ギルド長室の中は執務室と応接間を兼ね備えたような作りになっており、見慣れない調度品や武具の類がなければ、学校の校長室のようにも見えるかもしれない。


「リウス様とユキ様をお連れしました」


「ご苦労。掛けてくれたまえ」


 促されるまま、机を挟んで向かい合わせに置かれたソファーの片側に座る。ギルド長はリウスの向かい側に腰を落ち着けた。


「初めまして、になるな。アレイン・リンダースだ。

 まずは昨日の乱闘の件だが、鎮圧に力を貸してくれたこと、感謝する。あの場に私がいれば君たちの手を煩わせることもなかったんだが、昨日は所用で外出していてね」


 いつの間に用意しに行っていたのか、ミュエが三人分の飲み物を持って部屋に戻ってきた。香りからして紅茶らしい。

 ミュエが淹れてきた紅茶を一口飲み、ギルド長改めアレインは、話を続ける。


「そうそう。昨日話を聞いたニーグという冒険者から、君たちの冒険者等級見直しの打診があった。ただまあ、その話は後にしよう。

 今日、君たちをここへ呼んだのは、昨日の乱闘の件に関して“ではない”」


「……?」


 思いのほか紅茶が美味しいな、などという感想を頭に浮かべながら話を聞いていたリウスだったが、アレインの言葉をきっかけに思考を切り替える。

 少し、嫌な予感がした。


「あまり君たちの時間を浪費させるのも気が引ける。単刀直入に聞こう」


 そして、その手の予感は往々にして当たるものだ。


「君たちは、異世界人ではないか?」

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