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君の為なら神さえも。  作者: 塩砂糖
第1章『異世界転移編』
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第40話『冒険者の仕事』

 ギルドを通じて冒険者――ちなみに、依頼達成報酬を主な収入源としている冒険者を専業冒険者という。世間一般的に冒険者と名乗っている者のほとんどは専業冒険者だ――に仕事を依頼することは誰でもできる。どんな依頼であれ、それに見合う報酬を用意できるのであれば、基本的には何を依頼してもギルドはそれを仲介してくれる。


 持ち込まれた仕事を仲介する際、ギルドは独自にそれぞれの依頼を難易度別に仕分けする。仕分けられた依頼には冒険者等級(とうきゅう)と同じ等級が難易度別に与えられ、その依頼が第何等級依頼なのかによって依頼受注が可能な冒険者が決まる。

 具体的には、自分の冒険者等級と同等以下の依頼のみを受けることが出来る。例えば、最低等級である第五等級冒険者は第五等級依頼しか受注出来ない。逆に、最高等級である特等級冒険者は全ての等級依頼を受注可能というわけだ。

 勿論、高等級冒険者が依頼を独占しないよう、自分の等級以下の依頼を受けた場合は、通常より多めに仲介料がかかるなどのペナルティーも存在する。


 ともあれ、現在第五等級冒険者であるリウスとユキが受注可能な依頼は、同等級である第五等級依頼のみだ。

 実のところ、冒険者ギルドに登録していない場合でも、第五等級依頼は受注可能だ。さらには、第五等級よりも上の冒険者、つまり第四等級以上の冒険者であっても、第五等級の依頼に限り報酬減額は適用されない。要は、それだけ報酬額の少ない簡単な依頼しか第五等級依頼には存在しないのだ。

 例えば、犬の散歩、力仕事の補充要員、植物採集、落とし物探しなど、特別なスキルを必要としない依頼ばかりだ。中には、1時間話し相手になってほしい、なんていう依頼もあったりする。

 町の何でも屋さんといったような依頼がほとんどで、少しでも危険性のある魔物討伐や魔獣討伐などの依頼は、一つ上の第四等級依頼からしか存在しない。

 つまりそれは、専業冒険者と名乗れるのは第四等級以上からという意味であり、同時に、将来性のある第五等級冒険者をつまらないことで死なせないための、冒険者ギルド側の配慮でもあった。


 リウスとユキは、第五等級依頼が張り出されている掲示板を眺めていた。

 そして、とても悩んでいた。

 しかしそれは、魅力的な依頼が複数あるからでも、どの依頼も達成が難しいからでも、書いてある文字が読めないからでもない。


 あまりにも全ての依頼がパッとしないため、決めかねていたのだ。

 前述した通り、第五等級の依頼はどれもお使いやお手伝いのようなものばかり。

 もし、仕事の選り好みなど出来ないほどに切羽詰まっていたのなら、どんな内容の依頼であれ、自分に出来そうなものであれば片っ端から受注したことだろう。

 しかし、現在リウスたちはお金に困っているわけではない。

 将来的にお金に困りそうだから仕事をしようとしているのであって、お使いがしたいわけではない。もっとも、こんな依頼でも立派に冒険者の仕事だ、と言われてしまえば、そうなんだろうな、と答える以外にないのだが、それにしたってあまりにあんまり過ぎた。

 無論、第五等級依頼でお金を稼ごうなんて、リウスもユキも考えてはいない。

 しかし、一回の食事代――それも一人分――で報酬全額が消えてしまうような依頼を受けても仕方がない。

 かといって掲示板をいくら眺めていたって貼り出された紙の内容――主に報酬額の部分――が勝手に書き換わることもない。

 リウスは迷いながらも、比較的マシな依頼を指差した。


「これとか、どうだ?」


 リウスが指差すのは、薬草採集依頼。採取してきた薬草の量によって報酬額が変動するタイプだ。これなら、ほかの依頼よりはまだ稼げる目があると踏んでの選択だった。


「うーん。そうだね。それでいいんじゃないかな。わんちゃんのお散歩も少し気になるけど……」


 気になるのか。

 ユキが動物好きであろうことはユキ自身の見た目からも分かるが。しかし、犬の散歩の報酬は、それこそ子供のお小遣い程度だ。というか、本当に子供のお小遣い稼ぎに使われているんじゃないだろうか。この依頼。


「気になるなら、別行動にするか? 薬草採集なんて、人手が必要なものには思えないし」


 勿論、リウスに薬草採集の経験などないが、目的の草を見つけて引っこ抜くだけの作業は一人でも十分だ。

 だからこれは、リウスの――珍しくも――善意から出た言葉。特別な意図は何もない、ただの言葉。しかしユキは、リウスのただの言葉を慌てて否定した。


「えっ。いやっ、うん、それは……大丈夫。私も行くよ。一緒が、いい……」


「そうか」


 リウスは追求しない。言葉の意味を考えない。文字通り、聞いた通りの意味としてユキの言葉を理解する。


 掲示板にピンで留められた紙に手を伸ばし、軽く下に引っ張る。留めてあった部分が少し破れたが問題ないはずだ。見た限り、みんなこうして依頼書を掲示板から取って受付へ持っていくのだから。



【第五等級依頼】

依頼名:薬草採集

依頼者:冒険者ギルド

【説明】

回復薬の材料となる薬草の採集を依頼します。

報酬は採集していただいた薬草の重さで決定します。

また、薬草か否かの鑑定は冒険者ギルドが請け負います。薬草以外の植物が採集品の中に含まれていた場合でも、お支払いする報酬額は薬草の買取金額のみとさせていただきます。提出された採集品はお返しできませんので、予めご了承ください。



「冒険者ギルドが依頼を出してるんだね」


「こうすることで、低い等級の冒険者にも仕事が回ってくるようにしているんだろう。こういう仕事は、依頼者がいないと成立しないからな」


 そして、ここで買い取られた薬草は回復薬に加工され、道具屋を通じて冒険者や一般人に売られるのだろう。そうしてお金を循環させているわけだ。


「上手いこと考えるもんだな」

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